京都SKYセンター<後編> シニア世代の悩みとは?ベテラン相談員が考える、心豊かに生きるコツ

高齢者の悩みに答える相談員

シニア世代の悩みとは?ベテラン相談員が考える、心豊かに生きるコツ

 
「S(すこやか)」、「K(かいてき)」、「Y(ゆたかな)」の3つをキーワードに、京都の地域活性、高齢者活動を応援されている、公益財団法人京都SKYセンター。そこでは、シニアの方々が心豊かに過ごせるよう、情報誌の発行からサークル活動の支援まで、幅広い活動を展開されています。
 

京都SKYセンターのサークル活動はこちらをご覧ください(前編記事)
京都SKYセンター<前編> シニアサークルの活動を通して考える、心豊かな老後の生き方とは?

 
その中の一つである「高齢者情報相談センター」では、高齢者やその家族からの生活・福祉についての相談ごとや、一般法律・財産管理といった専門的な相談ごとを受けられています。
 
後編となる今回では、日々様々な悩みごとに寄り添う、京都SKY高齢者情報相談センターの相談員の方にお話を伺いました。相談内容から見えてくる、高齢者が抱える悩みとはどういったものなのでしょうか?また、シニア世代が心豊かに生きるためには、どういったことが必要なのでしょうか?「悩み」を通して心豊かな生き方を考えます。
 

 

  

高齢者情報相談センターとは?

 

ーー高齢者情報相談センターではどういった活動をされているのでしょうか?
 
相談員:一般相談では、高齢者にかかわる相談全般、家族のことや悩みごと、在宅福祉サービス・施設福祉サービスの利用に関する相談など、高齢者自身または高齢者と一緒に暮らしている家族の方からの相談をお受けしています。また、専門相談では、弁護士による法律相談や財産管理等の相談をお受けしています。
 
ーー 年間にどれくらいの相談が寄せられるのでしょうか?
 
相談員:2019年度の相談件数は579件でした。そのうち86%が女性、60%が70歳以上です。
 
ーー579件のうち、どういった相談が多く寄せられましたか?
 
相談員:具体的な解決を求めて相談を寄せられることも多くありますが、それよりは、とにかく誰かと話したいという方が多いように感じています。なので、話の内容は相談だけではなく、自分自身の過去の華やかなストーリーの自慢をされることもありますね。
 
ーー自慢をされる方もいらっしゃるのですね。
 
相談員:そうですね。近所付き合いの中で自慢をしてしまうと煙たがられることも多いですよね。それが電話ですと、話し相手の顔が見えない分、安心して自分自身の話をできるのだと思います。もちろんですが、こうした内容以外にも様々な相談が寄せられます。
 
ーーほかにはどういった内容があるのでしょうか?
 
相談員:例えば、高齢者の方が家庭内に息子世代や孫世代の身内は居るけども、疎遠というケースです。家庭内でおじいちゃんやおばあちゃんが煙たがられている状態ですね。
決して単身というわけではなく、子どもさんがいらしても、なかなか上手くコミュニケーションが取れていない状態もあるんです。
 
ーー孤独は独居だけではないんですね。
 
相談員:そうですね。同居であってもうまくいっていない関係といいますか、孤立ではないけど孤独な状態といいますか。一緒に暮らしていても孤独という状態です。
 
ーー家族がいても、分かり合えない。それは大変難しい状態ですね。
 
相談員:私は相談員のほかにも、地域での活動に関わっていますが、近年はうつと思われる方が増えたように感じます。友達をつくれない人が多い、だけどおしゃべりはしたい。女性の方に多く見られる傾向かなとも思います。
SKYでは「年を取るごとに輝きを増す人生を」という指針のもと、シニア大学といった取り組みを展開しておりますが、そうした活動に参加されるような方と、我々相談員のところに来るような方との間には、ものすごい違いがあるように思います。
 
ーーどういった違いでしょうか?
 
相談員:すごく元気な人とそうではない人の違いです。高齢者の生活様式は、老いを自覚しながらも前向きに活動する方(円熟型)、過去の人生を失敗とみなして、不満と後悔を自分のせいにする方(内罰的)、過去の失敗を他人のせいにする方(外罰的)の3つに大きく分けられます。そのなかでも、内罰的な方と外罰的な方は、私たちに相談をされる方が多いですね。
 
ーー答えが定まっていない悩みもたくさん寄せられるのですね。では、具体的な悩みはどういったものが寄せられていますか?
 
相談員:例えば「高齢の親を抱えて困っている」や、「お世話になっているケアマネージャーさんに不満がある」といった内容をお受けします。
 
ーーそうした内容の場合はどういった対応をされるのでしょうか?
 
相談員:我々でお答えできることはもちろんお答えしておりますが、地域包括相談センターといった、より専門的な対応を行える機関へおつなぎしています。
 
ーー解決を求めているのか、それともただ話を聞いて欲しいのか、話の見極めが必要になって来るんですね。
 
相談員:確かに、具体的な相談なのか、ただ話を聞いて欲しいのか、そうした見極めが求められますね。アドバイスをしても応じられなかったり、何度も同じ内容を相談して来られたり……。こうした場合は寄り添い、傾聴へと切り替えています。
 

 

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相談員たちの努力、そして気づきとは?

 

ーー相談員として気をつけていること、心がけていることはありますか?
 
相談員:相手とのチューニング、話のトーンに合わせるように気をつけています。特に声のトーンは大事ですね。相談者さんの性格や話し方に合わせて寄り添っていくことを心がけています。
 
電話を掛けてこられた時に、何か情報がほしいのか、それとも話を聞いてほしいのか、そのあたりを見極めています。
しかるべき組織につないでも、次のステップへと進められない方もいらっしゃるので、そういう場合は寄り添っていくように心がけています。悩みが解決されるわけではありませんが、それでも良いのではないかと思います。
 
ーー解決よりも「聴く」ことを優先されているわけですね。
 
相談員:そうですね。具体的な解決を求めているのか、ただ愚痴や悩みを聴いてほしいのか……内容はともかく、唯一話せるところが我々しかないという状態なんです。
 
ーーいわば、最後の砦といったところでしょうか?
 
相談員:現状では最後の砦となっていますね。他機関では対処しきれない事案がこちらへ回される場合も多いです。官庁や警察からも依頼されることだってあります。ここ(相談センター)へ行けば話を聞いてもらえるんじゃないかといった具合に。認知症や精神疾患をお持ちの方が電話を掛けてこられることもあります。
 
ーー認知症や精神疾患の方へは、何か特別な対応をされるのでしょうか?
 
相談員:認知症の時はとにかく否定しないことを心がけています。そして、精神疾患の場合も、具体的な治療のことを話すのではなく、できるだけお気持ちを汲み取るようにしています。
 
また、認知症になられた方の家族にも気配りが必要ですね。身内の方が認知症になるとあたふたすると思うんです。そうした時に、身内の方には「認知症は病気と思ってください」と声をかけるようにしています。こうしたアドバイスをすることで、認知症を患われた身内にきつい言葉を言われても、病気と思ったら気が楽になったと納得されることもありました。
 

ーー相談の中で、重たい内容の話で気持ちがしんどくなってしまったことや、後悔はあるのでしょうか?そして、それらに対する発散やケアはされていますか?
 
相談員:精神的にしんどくなることはあまりないですが、電話を切った後にもっとこうしたアドバイスをすれば良かった、こうした声かけをすれば良かったと後悔といいますか、引きずることはありますね。
発散やケアについては、相談員同士が業務後の雑談で発散していますので、抱え込んでプライベートまで持ち帰ることはあまりないですね。
 
ーーほかに、心がけていることはありますか?
 
相談員:定期的に研修を行っているのですが、その中で高齢者施設を中心に見学を行っています。こうすることで、具体的な相談を寄せられた時に確かな情報を提供できますよね。
新しくできた施設も必ず現地に行って見学するようにしています。自分たちが見ておかないと自信を持ってアドバイスはできませんよね。高齢者施設だけでなく、お墓や納骨堂の見学も行っています。
 
ーー相談員をしていて、得られた気づきや学びはありましたか?

※3名の相談員の方に回答いただきました。

 
相談員A:私はこちらで勤務するまで、そもそも地域包括支援センターの存在すら知りませんでした。
以前、父を亡くしたのですが、そうした時に何から始めればよいか全く分からなかったので、こうした機関に頼ることができて、とてもありがたかったです。
 
相談員B:私も数年前に夫をなくしたのですが、エンディングノートにお金を預けている銀行、お世話になりたいお寺といったことが全て書かれていたのでものすごく助かりました。エンディングノートの威力を思い知りましたね。いかに大事かを思い知らされました。
 
相談員C:私も母を看取った経験がありますが、相談員の経験を通して、認知症が発症した時に「あ、来たか」と受け止められるようになっていました。実際には思っていたほど深刻な症状ではありませんでしたが、この経験がなければあたふたしていたと思います。その意味では、非常に役に立ちましたね。
 

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掲載日: 2021.05.21

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