「お寺さんって格好良いんやで」仏教を学べる直七法衣店が抱く思いとは|直七法衣店インタビュー<前編>
「お寺さんって実は格好良いんやで」アウトプットを通して得られる気付き
ーーこうした「直七大学」や「5分で袈裟」といった活動を通して、どのような気付きがありましたか?
直七:アウトプットすることで、改めて「良さ」に気付くことでしょうか。プロって、業界の中にいると、その良さに気付きにくくなってしまうんです。例えば、法衣であれば金襴(きんらん・室町時代に中国から伝来した、金箔や金糸などで柄を織り出した伝統的な織物の総称)の良さって、業界の内部にいるとなかなか気付きにくい。でも外部から評価されると、改めてその良さに気付くんですね。
良さを再確認するだけではなくて、例えば、正信偈の意味ひとつでも、僧侶ではない人に質問してもらえたら、僧侶は「あ、そこに疑問を感じているんだ」と気付いてもらうきっかけになりますよね。お互いに学び合う時間があると、それだけ気付きを得られる機会も増えますし、そうした時間を外部に公開できたら、より多くの人が興味を持ってくれるきっかけになると思います。
ーー多くの人に興味を持ってもらう、これは宗教にとって本当に大切なことですね。
直七:宗教を知らない方からすれば、信仰するかどうか以前に、そもそも宗教と接するきっかけがないんですよね。信仰する宗教は自由に選択すればいいと思うんですよ。でも、そもそも接点がないから選択するところまでいかない。「宗教ってなんなん?」という問いに対して、僧侶は詳しく語れますが、少し難しいこともありますよね。そこに、僕がひと工夫をして、多くの人が触れやすい形でアウトプットする。
一般の方にはそれぞれの宗教を選びやすくすると同時に、僧侶の方々に対しては他の宗派や宗教の事情をお伝えできればと思っています。あくまでも否定せず、互いに尊重できれば良いですね。
ーー斬新な取り組みを次々に行われていますが、その根底にはどういった思いがあるのでしょうか?
直七:出張で全国のお寺を回っていると、すごく魅力的な僧侶に出会うんですよね。お朝事を毎日丁寧に行っていて、門徒(檀家)さんの話を親身に聞かれていて……。でも、そうしたお寺でも情報発信力がなかったり、周辺の地域が過疎だったりすると、お寺の維持存続は難しいだろうと、どうしても僕は感じてしまうんです。それをなんとかしたい。なんとかお寺の良さを伝えたいなと思って。「お坊さんやお寺さんって、格好良いんやで」っていうのを伝えていきたいです。
その思いから「直七大学」や「読める!お経」といった活動を行っていますが、実はあまり新しいことをしている自覚はなくて、自然にやっていたら実は新しかったという感じなんです。
僕が「こうかな」と思っていることを一度実行してみて、そこに共感してくださった方と一緒にやっていけたらいいなと思っています。
<編集後記>
「直七大学」、「読める!お経」そして「5分で袈裟」。いずれの活動も、僧侶が学べ、直七さん自身が学べ、そして世間の人びとも学ぶことができます。これぞ「三方良し」を実現した活動であり、法衣店の立場を活かした情報発信のあり方かもしれません。そして、その活動には、寺院や僧侶を応援したいという直七法衣店さんの熱意が隠されていました。
「自分には何も出来ない」コンプレックスを持っていた直七さんが気付いたこととは|直七法衣店インタビュー<後編>