★PICK UP「かえるのがっこう」『こども+自由』の可能性
山口県長門市にある海と山に囲まれた「油谷島(ゆやじま)」で2014年7月から、小さな自然学校「かえるのがっこう」を主催している堀之内健さん。
「かえるのがっこう」設立の理由には、堀之内さんの紆余曲折の人生が大きく関わっていました。そこから見えてきた「自由」の本当の素晴らしさ・大切さを、「生きる力を育む」ということをキーワードに話してくださり、現代の教育・子育てのヒントとなる言葉をたくさん聞かせていただきました。
こどもがこどもに教えていく大切さ
堀之内:僕らがこども世代の頃には、近所の異年齢の10人くらいの小集団ってありませんでした?例えば、小学1年生くらいから5年生くらいまでの一緒に遊ぶグループ。一緒に鬼ごっこしたりとか、野球したりとか、たまにはイタズラしたりとか(笑)。そんなことをする仲良しグループっていうのがどこにでもあったと思うのです。僕は酸いも甘いもそこで教えてもらいました。親や先生から教わったというより、そういうグループの友達から教わったのです。
でも、今、そういうグループってほとんどの地区でなくなっているのではないでしょうか。家にいてもゲームやテレビ、いろんなものがあるし、DSをひらけば、みんなインターネットで繋がるから、わざわざ外で他の子と遊ばなくていい。ゲームが中心だから、気に入らないことがあれば、リセットすれば元通り。でも、人間関係は、リセットなんてできないですよね。
こども同士といえど、自分が遊びたいことを実現するためには、目の前の相手に何かしらの形で「〇〇で遊ぼう」と伝えないと遊べないですよね。気にくわないことがあったからって、リセットなんてできないし、コミュニケーションをとって、ちゃんと伝えることが必要ですよね。時にはケンカしたっていいと思います。
かえるのがっこうでも、こういうグループみたいなものをつくれたら良いなと思っていまして。何回か参加したリピーターの子が、新しく来てくれた子に、「これはこうやってやるんだよ。」とか、「ここは蛇がいるから気をつけろよ」とか、「あそこには蜂がいて刺されたら大変だから刺激するなよ」とか、「海ではこうやって泳いだら泳ぎやすいぞ」とか「このポイントがめっちゃ釣れるよ」とか。
大人が伝えるのではなく、こどもからこどもに伝えて学んでいく。こどもらで勝手に伝承していく。そういう場を作りたくて。だから、フリースクールでやりたいこともそういうことで。ここでの暮らし方、自由や自然の楽しみ方を伝えて、その子がまた次の子に伝えていく。
そういうのがいいなと思っています。
自由がこどもの可能性を広げていく
堀之内:面白いのが海で「泳げ」なんて言っていないのに、泳げなかったこどもが突然泳げるようになったりするんですよ。それは、多分、自分と1つ、2つしか違わない友達が、目の前で泳いでいるのを見て、自分も泳げる気がしてくるのだと思います。こどもにとって、こういう経験ってとっても大きな自信になると思うんです。「私だってできるんだ!」って。そして、次に繋がっていくと思います。例えば、その子が工作も苦手だとしても、「泳げるようになったから、これもできるかもしれない」と、次の何かに取り組む大きな後押しになると思います。
自信をつけることって、他人ができることではなくて、自分が何かに気がついて、自分で挑戦して、成功して、初めて得られるもので、この経験は他の何にも変えられないと思います。自由を与えれば与えるほど、こども自身がそういう場面に直面することも多くあると思うし、きっとそれが、その子が生きていく上で大きな力になっていくのだと思います。
僕は、背中で語れる人になりたいと常々思っていまして、本当は多くをあまり語りたくないんです。とか言って、今このインタビューでだいぶと語っていますが(笑)。だって、誰かの背中を見て学ぶことって、自分が勝手に感じて学ぶことだから、自分の中にすーっと入ってくるじゃないですか。さっきの泳げないのが泳げる様になった例もそうですが。
自分に置き換えてみてもそうですけど、どれだけ自分が尊敬している人でも教わったことって、ほぼ覚えていないですよね。でも、自分なりに気づいて考えて「こうかもしれない!」と思って、動いた結果、実際にそうだった時のあの感覚って一生忘れない。僕自身も笑顔の大切さに気づいた瞬間はきっと忘れないです。そういう気づきの連続で僕自身ができているのだと思います。
だから、僕と同じ人生を歩んで欲しいのではなくて、感じるままに動いて得た自分なりの気づきで、自分の道を切り開いて言って欲しいですね。そしたら、世の中で何が流行ってようが振り回されることはないと思うし、どこに居たって、周りの意見に流されず、それこそ自由に自分らしく生きていけると思います。だから、誰かの背中から勝手に感じて学ぶことって、何よりの学びだと思います。