「死ぬ勇気がなかった」野宿者という生き方 第4回
自殺することを思いとどまった理由は?
イ:タカハシさんが、自殺することを思い止まった理由はあったんですか?
タ:怖かった。死にたい思いより、死に対する怖さが勝ったんやな。死んだら、終わりやからな。
イ:というと、死にたい思いがなくなったわけではなかったんですね。
タ:そうやな。しんどい状況は何一つ変わってへんしな。
イ:状況が変わったわけじゃなくて、思いが変わったんですね。
タ:ワシは、死ねば、その時点で無になるんだと思ってる。やっぱり生きていてこそ、人間。だから、別に無理して死なんでも、自然にいのち終わるときがくる。どんな人間でも、人間は生まれたときに、死は決まってるんやからな。そのときが来れば、死んでしまう。だから、いのち続くまでは、生きようと決心したんや。
イ:ギリギリの決断だったんですね。
タ:自殺を断念したとき、自分でもビックリするくらい泣きじゃくった。
イ:どういう涙だったんですか?
タ:未だに分からん。まぁ、「死なんで良かった」という安堵感があったのかもしれん。あのときは、ほんまに泣いたわ。恥ずかしいほど、泣いた。今思うのは、どんなしんどいことがあっても、絶対死んだらあかん。死んだら終わりやからな。それにしても、世の中は不公平や。
イ:何がですか?
タ:死にたい人は死ねへん。生きたい人は死んでしまう。世の中、死にたい思いを抱えてる人はいっぱいいるからな。
イ:確かに、そうですね。野宿生活をされている方で、自殺される人は多いんですか?
タ:あんまり聞かんな。そりゃ、こういう生活しとったら、自分で死を選ぶような人は少ないやろうな。ここまで落ちたんやから。
イ:どういうことですか?
タ:ここまで落ちても、生きていけるってことや。落ちるとこまで落ちたんやから、この下はないやろう。人間、どんな環境になろうとも、生きていこうと思えば、どうにかなる。しんどいことも多いけどな。
イ:人生の荒波を渡り歩いたタカハシさんだからこそ、強烈に説得力があります。
タ:島倉千代子は、人生それぞれ。大石内蔵助は、人それぞれ。ほんま、そうやと思うわ。
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野宿者という生き方 第5回「失敗せな、発展はない」
(この記事は2016年9月12日に公開したものです)