準備のために死を語る│マザーリーフ 終活コミュニティ<前編>
いずれ訪れる死に向けて準備をする。
必要なことだとわかっていても、なかなか実感が湧きづらいテーマではないでしょうか。
今回インタビューさせていただいたのは葬儀会社ライフネット東京で終活コミュニティ「マザーリーフ」の代表をつとめられている小平知賀子(こだいら ちかこ)さんです。
葬儀会社と終活コミュニティ。「死」を身近に感じられてきた小平さんに、死の準備や死を語る場の大切さをお話しいただきました。
――はじめに自己紹介からお願いいたします。
小平知賀子さん(以下:小平):私は20代の頃、父を突然死で亡くしており、そのときから葬儀に対する疑問やいろんな問題を感じていました。葬儀業界はハード面が優先され、ソフト面が弱いな、と。
その思いから、人材ビジネス業界で働いていたとき、葬儀に関わる人材を教育する事業部を立ち上げ、その後葬儀会社も立ち上げました。(現在、葬儀会社と葬儀人材会社は別会社となっています。)
――「葬儀業界のソフト面が弱い」とはどういう意味でしょうか?
小平:私が疑問を持った当時の葬儀は、ベルトコンベアみたいに進行するような葬儀でした。スケジュール通り動くだけ。「これをするのが当たり前」で通されるので、なぜ当たり前なのかがわからなかったんです。細かいことを考える余裕もなかったので、いつの間にか葬儀が終わっているという印象でした。
――祭壇の用意やスケジューリングといったハード面の対応はされても、施主さんの思いなどソフト面に気が配られなかったということでしょうか。
では、小平さんにとって、どのような人材が葬儀会社には必要だと思われますか?
小平:葬儀の場の人材は「常に黒子であれ」と思っています。ご遺族が各々の想いで送れることを大事にするために、葬儀本来の意味、大切な故人さまとの区切りができるようなお別れの時間をサポートする、周りへの気遣いで疲れることなく、その場で泣いたり感情を出したりできるような葬儀の実現をサポートできる人ですね。
――確かに感情を出せない葬儀は寂しいですよね。今は昔に比べると感情を出せる葬儀は実現されていると思いますが、変化した点はどういったところでしょうか。
小平:ご遺族側がある意味で賢くなったんだと思います。事前見積もりもされますし、こういう送り方をしたいと具体的に伝えていただけるようになりました。疑問があれば聞かれるようにもなりましたね。
――確かに今は、なるべく要望に沿う姿勢が求められているかもしれませんね。以前に比べると葬儀の形態も多様になってきました。
小平:ただその多様化により葬儀の簡素化が可能になったことで、逆にご遺族側が故人を送る気持ちが薄れてきている側面もあります。
――直葬やゼロ葬といった形態は、少し寂しい印象はあるかもしれません。
そういった葬儀業界への疑問を抱かれていたこともあり、新たな葬儀会社を起業されたんですね。
小平:はい。そして葬儀会社として仕事を始めてから、あるできごとが起こりました。そのできごとによって、「考えられるうちに死をきちんと学ばなければ、思うように最期を迎えられない」と痛感したんです。
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