新聞社勤務、お遍路、海外留学……数々のご縁に導かれた「自然農」という生き方│山田黙鐔さんインタビュー<前編>

 

異国の地で、生きる力を身につける

 
――カナダに留学されたとのことですが、なぜカナダに行こうと決められたのでしょうか?
 
山田:お遍路の序盤で話しかけられたのがカナダ人だったんです。他にも会話した外国人はいましたが、そのカナダ人とは数日間一緒に歩いたりもしたんですよ。また、留学先の選択肢の中にカナダがあったので、ちょうどいいと思って決めました。
正直、お遍路の最中は「英語が話せなくて悔しい」としか思ってなかったのですが、後からじわじわと「話せないといけないな」と思うようになってきましたね。
 
――そこからカナダに留学されたんですね。
 
山田:この留学が、決定的な人生の転機だと思っています。
まず最初にバンクーバーの語学学校に6か月間行くことになったんですが、この学校は日本人がとても多くて、英語を使わなくても問題ない環境だったんですよ。それが嫌でした。せっかく英語を勉強しに来ているのに、日本人と日本語で話しても仕方ないし、なかなかカナダ人とも知り合えないし。
 
語学学校では、日本人の次に多かった韓国人とばかり話していましたね。その交流を通して気づかされたのが、私の韓国人に対する偏見でした。話してみると彼らはすごく熱い人たちで、持っていた偏見が一気に尊敬に変わりました。その後も行く先々で韓国人に助けられましたね。
 
――そうだったんですね。その後カナダ人には会えたのですか?
 
山田:語学学校を卒業してすぐに、私はバンクーバーを出て田舎の方に引っ越したんですよ。そこでようやくカナダ人の友人ができ、一緒に住まわせてもらっていたんです。そのカナダ人はDIY*1が得意で、空き家をリノベーション*2して貸し出すことで生計を立てている人で……純粋にすごいなと思いました。
 
――印象に残っていることはありますか?
 
山田:薪ストーブってあるじゃないですか。私はその薪ストーブに火を点けるのにとても苦労してしまって。30分以上かけてようやく点けることができたんですが、うまくできなかったことがすごく悔しくて、ショックだったんです。
 
「ああ、自分には生きる力がないなあ」と思ったんですよね。新聞社で働いているときに自分で火を点けたりしたこともなかったし。
 
日本に帰ってからもずっとそのことが頭にあって、あるとき行動に移すことにしました。あのカナダ人みたいに家を建てるのは難しいかもしれないけど、食べ物を作ることなら始められそうだと思ったんです。そこから農業に興味を持ちました。
 
*1 DIY:プロではない一般の人が、家や家具などを修復したりすること。
*2 リノベーション:建物を修復、改装し、性能を以前のものより新しくすること。

 
 

カナダで見た「生きる力」。その実践の中で出会った仏教

 
――山田さんがそのカナダ人に対して「すごい」と思われたのは、生きる力への尊敬だったんですね。農業に興味を持たれてから、どのような行動を起こされたのでしょうか?
 
山田:知り合いに相談したら、福井県で自然農*3をやっている方がいることを教えてもらいました。そして2006年に福井県に行くことになったんです。
 
*3 「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」を原則とした農法
 
――そこから山田さんの農業生活が始まったんですね。
 

山田:その後、農業をするために北海道に行ったり、海外(イギリス、イタリア、アフリカ・コンゴ民主共和国)に滞在したりもしました。そして、福井県に帰ってきた2014年のこと。たまたま訪れた集落でお寺の方に声をかけられました。「永代経っていう法要があるけど来ない?」と言われて。
 
そのお寺は、限界集落みたいなところにあるにもかかわらず、けっこう人も集まっていて。こう言ったら失礼かもしれないですが、法要なのに寸劇や漫才、コーラスをやっていて、すごく面白かったんです。法要ってこんなことをやってもいいんだと驚きました。
 
さらにその法要ではご住職がご法話もされていたのですが、私が持っていた「法話」のイメージとはずいぶんかけ離れたものだったんです。
 
――どのような内容だったんでしょうか?
 
山田:そのご住職は福島県の子どもたちを受け入れてサマーキャンプをされていて、そのときの話を写真も見せながらしてくださったんです。そのお話をされる姿が、私にはとても自信に満ち溢れたものに見えました。同時に「私もこういうことがしたい」と思ったんです。
 
――そのご法話が、僧侶という生き方に興味を持たれるきっかけになったんですね。
 
 

<編集後記>

 
新聞社、お遍路、留学など様々な経験をされてきた山田さん。今に至るまで、「生」に意味を見出すことが山田さんの原動力として、生活の基盤になっている印象を受けました。
次回は、山田さんがなぜ僧侶の道を歩まれたのか、さらに農業をする中での気づきについてお聞きします。
(「中編」は8月15日(日)更新予定)

   

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掲載日: 2021.08.06