「いのちだいじに」野菜が育んでくれる仏教のこころ│山田黙鐔さんインタビュー<中編>
塩ってこんなに大切だったんだ。塩が教えてくれる我が身のいま
――ご縁といえば、山田さんが営む「いただき繕 福井越廼(ふくい こしの)」で売られている塩には、「塩は縁つなぎ」というキャッチコピーがありますよね。これはどういう意味ですか?
山田:塩は海水から作られますが、海は生命が誕生した場所、生命の源と言われることもあります。生命の源ということはご縁の源でもあるということ。さらに昔から塩は、お金に代わるものとして扱われてきました。それは人と人との縁と言ってもいいかもしれません。このように人間は塩によっていろんないのちとつながっています。これらのことから「塩は縁つなぎ」というキャッチコピーにしました。
――塩にこだわりを持たれているんですね。
山田:人にとって欠かせないものですからね。水と塩がないと人間は生きていけないんですよね。料理も塩がないと味気がなくなりますし。それって、人間の基本なんじゃないかなと思っています。
――そういえば、山田さんは塩で頭を洗っていると伺いました。シャンプーとの違いはありますか?
山田:劇的に何かが変わるわけではないですが、塩は毛穴を開かせるので、食べたものやストレスなどで生活が少しでも変わると、顕著に脂として出るようになりますね。カレーライスを食べたときに「カレー臭」が頭から出てきたり(笑)。なので、塩で洗うと生活習慣を気にするようになりますね。
――自分の暮らしが毛穴から出てくる、ということでしょうか……。
山田:自分の体がどう反応するかがわかるので、顕著に出れば出るほど自分を顧みることができます。うちで売っている塩はもちろん料理にも使えますが、そういう使い方もできます。ぜひやってみてください。
<編集後記>
「野菜も人間と同じいのちだ」
この言葉は、野菜を育て、仏教の教えを聞くことで実感できる言葉なのかもしれません。
新聞社に勤めていたときの話をする山田さんからは苦しそうな表情が垣間見えましたが、自然農というひとつの生きる意味を見出し、野菜について語る山田さんの表情はいきいきとされていました。
次回は最終回。「いただき繕 福井越廼」について詳しくお聞きするとともに、僧侶として考える「自然」についてお話をうかがいました。