ありのままの生活を送りたい人へ。「いただき繕」でこころとからだをつくる。│山田黙鐔さんインタビュー<後編>

 

ありのままの生活を。農家、そして仏教を通して気付いたこと

 

 
――山田さんにとって「自然」とは何でしょうか?
 
山田:「ありのまま」ですかね。草木のいとなみというか、生きざま。それにちょっとでも近づけたら「自然体」と言えるのかもしれません。人間はもともと「自然体」のはずなのに不自然になりがちだから、土や野菜に触れることでちょっとでも自然に近づきたいと思いながら生活しています。
 
――僧侶というお立場で農業をされているからこそのお言葉なのかなと受け取りました。
 
山田:お経の内容について勉強しても、意味が分からないことがあって。でも、意味は分からないけど記憶に残っている言葉が、体験を通して「ああ、こういうことだったんだ」と実感する瞬間があるんです。私の場合それが農業だったんですよね。
 
私は「時間と空間を超える瞬間」を大事にしているんです。夢中で何かをしていたら気が付いたら昼だった!とか、感動した風景に出会うとか、そういう瞬間。お経には、そういう時空を超える世界観が説かれていると思うんですが、例えばお浄土は非常に美しい場所だと書かれていても、自分が本当に美しいと思うものに出会って感動したことがないと、「美しい」がどういうことかわからないですよね。そういった実感に出会えたときにこそ生きている実感が得られるというか。これは自然の中で気付くことが多いように感じます。
 
――感動したときって、考えることをしなくてもいい世界というか、わけもわからず涙が出てきたり、時間を忘れたり、何かと一体となっているような感じがしますよね。
 
山田:そうなんですよ。それが2500年も前から説かれてきたことだと思うと安心しますよね。これは、僧侶になってから感じ始めた世界かもしれません。
 
――そういった体験を、現代ではしづらくなっているのかもしれませんね。
 
山田:農業をやっていると、やはり「生かされている」という実感があります。新聞社に勤めていたとき、もしかしたらそれよりもっと前から、そういう体験を望んでいたのかもしれません。自然は人間に必要なものだと思いますし、その一つの手段としてぜひ自然農を体験しに来てほしいですね。
 
――山田さん、本日はありがとうございました!
 

<編集後記>

現代の日本では、「生かされている」という実感が持ちづらいのかもしれません。
しかし、山田さんのように農業を通して「いのち」を感じたり、食事のときにふと生活習慣について考えてみたり、はたまた絵画を見て感動することで「生かされている」と感じる可能性もあります。身近なそういった体験を大事にしていきたいです。
 
 

山田黙鐔さんプロフィール

 

 

山田黙鐔(やまだ・もくだん)
1979年3月16日生まれ 愛知県・名古屋市出身。
東京の大学卒業後、新聞社に就職。在職中、「何のために生きているのか」という思いが捨てきれず、3年目にして退社。四国お遍路・カナダ留学を経て、「生きる力」を身に着けたいという思いで農に興味を持つ。帰国後、福井にて自然農に出会う。その後、北海道美深、イタリア、イギリス、スコットランド、アフリカ・コンゴ民主共和国などで開墾作業・自然農栽培などに携わる。
帰国後、2014年より超限界集落の八ツ俣町の古民家にて、主としてヴィーガン料理の提供と無添加・無農薬の自然な食料加工品を販売する「いただき繕 福井越廼」を開業。さらに、古民家の魅力を発信するべく、農家民宿も開業する。
2015年、隣集落にある浄土真宗のお寺に参拝し、その時の法話を聞いたことがきっかけで仏道を志すことになり、2016年6月に得度。2017年9月、後継者がおらず、寺院解散の危機であったお寺(善性寺・越前町宿)の住職に就任。(「いただき繕 福井越廼」ホームページより引用)
   

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掲載日: 2021.08.24

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