ありのままの生活を送りたい人へ。「いただき繕」でこころとからだをつくる。│山田黙鐔さんインタビュー<後編>

ありのままの生活を送りたい人へ。「いただき繕」でこころとからだをつくる。
山田黙鐔さんインタビュー<後編>

 
生きる意味を求めて、「自然」と「仏教」にたどり着いた山田黙鐔(やまだ・もくだん)さん。
今回はそんな山田さんへのインタビュー最終回。
山田さんが営まれている「いただき繕 福井越廼(ふくい こしの)」の魅力や、農家と僧侶という2つの観点を持った山田さんの考え方についてお聞きします。
 

 

 

古民家で自然豊かな食材を提供する「いただき繕」とは?

 
――山田さんが福井県越廼で営まれている「いただき繕 福井越廼」
(https://itadakizen-fukui.com)では、ヴィーガン料理*1を提供されているとのことですが、これはどのような経緯で始められたのでしょうか?

 

*1 ヴィーガン料理:植物性食品のみを使った料理のこと

 
山田黙鐔さん(以下、山田):「食べ物をいただくことで、自分の身体と心が繕われる」という理念が具現化したのが、いただき繕の始まりです。いただき繕は最初、イギリスでレストランとして始まったのですが、一方で病院でもあって、学校でもあって、他にもさまざまな役割を持っている……そんな場所として成り立っていることを知りました。私もそれに共感する一人として「いただき繕 福井越廼」をオープンすることになりました。
 
――「いただき繕 福井越廼」の内容を詳しく教えてください。
 
山田:福井県の旧越廼村(現在は合併により福井市)でオーガニック食材の輸入加工販売、古民家農家民宿、自然農体験、ヴィーガン料理の提供、古民家や空き家の再生、などをしています。
最初は、ヴィーガン料理をお弁当にして売ることから始めました。しかし、この近辺に住む人の反応はいまいちでしたね。大口の注文が入っても届ける場所が遠方で配達コストがかかり、結局利益が出ないこともよくありました。
 
その頃、「いただき繕」の考えに共感する人たちが日本各地に現れ、札幌や東京にお店ができるようになりました。私はそういったお店などの食材の仕入れを担うことになり、主に塩の輸入を始めるようになりました。そこからご紹介がご紹介を呼び、ご縁の向くまま全国を回ったりして、今では売り上げの大部分がオーガニック食材の卸売りです。
 
また、農家民宿としてもオープンしています。古民家のすばらしさを、私たちだけで独占するのはもったいない!みんなに是非知ってもらいたい!と思い、農家民宿の営業許可を取って、ぼちぼちと営業しているという感じです。そこでもヴィーガン料理を提供しています。
 

 

「こころとからだをつくろう」いただき繕が持つ魅力

 
――「いただき繕」の魅力はどういったところでしょうか?
 
山田:「こころとからだをつくろう」というのがうちで提供している料理のコンセプトです。あまり刺激のない、癒されるような料理を提供し、食べていただいた方に「こころとからだが元気になったよ」と言ってもらえるようなものをお出ししたいなと思っています。
ありがたいことに、そういったご意見を実際にいただきますし、都会から来た方はよく眠れると言ってくださったりもします。他にも、野菜そのものの味がわかったというご意見もいただきます。うちに来てくれた小さい子がにんじんを生でかじっていたこともあり、そういった様子を見ると嬉しくなりますね。
 
――野菜を生で!たしかに好き嫌いにかかわらず、作っているところを間近で見たものであれば、食べてみたいという気持ちになりそうですよね。「いただき繕 福井越廼」では長期滞在者も募集されているとのことですが、長期滞在するとどういったことができるのでしょうか?
 
山田:ここに来ることで得られるメリットは人それぞれですが、私たちの暮らしているような、ありのままの生活ができます。掃除をして、農作業をして、ご飯を食べて……食材の加工を手伝ってもらったり、家の改装を手伝ったりしてもらうことで、都会ではなかなかできない体験をしてもらえると思います。
また、WWOOFという制度もあります。食事と宿泊場所を提供する代わりに畑仕事などを手伝ってもらう、お金のやり取りのない制度です。私たちの民宿はWWOOFに登録しているので、夏にはこの制度を使ってたくさんの人がいらして、過ごしがいのある生活をしていただいています。虫は多いですが(笑)。
 
――長期滞在中には、自分で一から育てた野菜を収穫して食べるところまで体験できるのでしょうか?
 
山田:野菜を育てるのに適した夏場ならできるかもしれません。さすがに1、2週間程の滞在だと厳しいですが、1か月程度滞在してもらえればできるでしょうか。季節によるところも多いですが、その時々で得られるものはあると思います。
 

 
――山田さんのご活動における、今後のご展望はありますか?
 
山田:私は「超ローカル」と「超グローバル」を目指しています。つまり、お寺のコミュニティや農業のコミュニティのような範囲の「狭いご縁」を、インターネットなどを使って世界中に見つけたいですね。
どこで、誰が、どうやって作っているかを知るというのも一つのご縁だと思っています。自分が作ったものも食べたくなるけど、知っている人が作ったものも食べたいと思うかもしれないじゃないですか。あと、そうやって知ることで、無駄に捨てたりすることもなくなるかもしれない。作った人のことを思い浮かべると大事にしようと思いますよね。もし大事にできない結果になったとしても、申し訳なく感じると思います。
 
このご縁の中で「知ること」、そこから更に「考えること」を意識する人が増えればいいなと思います。例えばペットボトルのお茶を買うにしても、ペットボトルを捨てたときにどのような問題が起こってくるかを何も知らずに買うのと、知っていて少しでも気がかりに思いながら買うのとでは全然違うんじゃないでしょうか。
 
――問題意識もその問題を知らなければ生まれない……。そのために、同じ活動をしている人や似た考え方の人とのご縁を通して問題意識の共有をしながら高め合っていくことが大切なのかもしれません。
 

ありのままの生活を。農家、そして仏教を通して気付いたこと

 
記事作成:他力本願.net
掲載日: 2021.08.24