自分にできる精一杯を。藤田徹信さんが歩んだお佛華の道│藤田徹信さんインタビュー<後編>

 
藤田:しかし、ご法座をお迎えする過程としてこのような時間は私にはすごく大事なものです。それは徹夜が必要ということではなく、「きっと昔の方々もこんな風に手間暇をかけて、ご法座や各家々のお仏事をお迎えになっておられただろうな」と思いを馳せる時間を大切にしているということです。
 
ご法座やお佛華を、費用面でも作業面でも簡単にしようと思えばいくらでもできますが、価値あるものには時間を費やしたほうが良いというのが私の性分のようです。私はできることが少ないので、できることまで怠ると、そのこと自体の価値を下げてしまうような気がするんです。簡素化は何か大事なものまでそぎ落としてしまうのではないでしょうか。
もちろん物事を円滑に進めるために簡素化すべき部分もあるのですが、できるだけのことをやり続けてきたからこそ、歴史が続いてきたように、これからも丁寧にお佛華を生け続けていきたいですね。
 
――コストカットや作業の簡素化によって、受け継がれてきた歴史が失われるのは寂しいように思います。そのような思いでお仏花を生けられているんですね。それでは最後に今後のご展望を教えてください。
 
藤田:まずはその時その時のできることを精一杯やらせていただきたいと思います。
それから記録としてご法座ごとのお佛華に少し文章を添えて写真集にしてみたいという思いもあります。まだ現実的な話ではないのですが、これから実現に向けて動いていきたいと思っています。また、私のお寺で行っているお仏壇のお佛華講習も継続していきたいですね。
その他、備後佛華之会の一員として、また個人としてもお声掛けいただいたお寺のお佛華を立てたり、講師依頼をお受けすることも可能な限り続けていきたいと思っています。
 
――ありがとうございました。
 

編集後記

 
私たちは、一度楽を知ると手間のかかるほうにはなかなか戻れません。
この度インタビューさせていただいた藤田さんからは、便利な世の中だからこそ、手間暇をかけるという価値について教えていただきました。
ご自身のことを不器用だとおっしゃる藤田さんでしたが、お仏花の説明をしてくださる表情からは、歴史を受け継いでいこうという使命感を受け取ったように思います。
藤田さん、ありがとうございました。
 

プロフィール

 

 

藤田徹信(ふじた・てっしん)
 
浄土真宗本願寺派 備後教区 御調西組 
広島県三原市久井町光德寺住職
備後佛華之会会員

 

   

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掲載日: 2022.11.15

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