ヘリコプターで大空を舞う僧侶の話|西守騎世将さんインタビュー<前編>

 

西守騎世将さん(画像提供:西守さん)

 
全国に30万人以上いらっしゃる、お坊さん。当然といえば当然ですが、さまざまな方がおられます。他力本願ネットでも、これまでに管理栄養士やタレント、商社マンなどさまざまなご経歴を持つ僧侶にインタビューしてまいりました。
 
この度、インタビューさせていただいた熊本県善教寺 住職の西守 騎世将(にしもり・きよまさ)さんは、ヘリコプターのパイロットでもあります。
お寺の住職がなぜヘリコプターのパイロットをされているのでしょうか?興味深いそのご経歴をお伺いしました。
 

建設業からパイロットへ……西守騎世将さんのこれまで

 
ーー今日はよろしくお願いします。まずは簡単に、自己紹介をお願いします。
 
西守 騎世将さん(以下:西守):西守 騎世将と申します。現在は熊本県善教寺の住職と並行して、航空機操縦士養成学校の代表及び、パイロットの飛行教官として勤務しています。
 
父親が建設業を営む大工で、幼少期からその跡継ぎとして育てられていました。学校が休みの日はひたすら現場作業を手伝う日々でした。
高校卒業後はそのまま家業に就職し、営業に従事していました。その後、24歳のときに不動産業を営む会社を立ち上げ、独立しました。
その6年後に航空事業部を作り、航空機の操縦士の養成を中心に、ヘリコプターを用いた事業を始めました。現在は不動産事業からは撤退し、航空事業に絞っています。
 

間近で飛び立つヘリコプターに魅了されて

 

ヘリコプターから名古屋駅上空を望む(画像提供:西守さん)

 
――大変興味深いご経歴です。そもそも、パイロットになったのは、どういったきっかけがあったのでしょうか?
 
西守:単純に、不動産業だけでは面白みがなかったんですよね。そもそも、不動産業は本当に目指していた道かといえばそうでもなく、親に敷かれたレールを走っていただけというか、嫌々やっていたんです。
 
で、せっかく独立したのだからやりたいことをやろうと思い、何気なく立ち寄った書店で航空専門雑誌を見つけました。中を覗いてみるとパイロットの募集広告が掲載されていたんですよね。これは面白そうだなと。しかも、「未経験でもOK」と書かれていたので、募集要項を読んだところ、すぐにその道を諦めることになりました。
 
ーーそれはどうしてでしょうか?
 
西守:大卒以上しか募集してなかったんですよ。私は高卒なので、これは自分の道ではないなと。諦めて他のページを読んでいると、航空会社に就職して会社の経費で訓練をするのではなく、自費で操縦ライセンスを取得するという道に出会ったんです。
具体的には、訓練費用が日本よりも安く、期間も短いアメリカで飛行訓練を行い、ライセンスを取得して、帰国後に日本のライセンスに書き換えるという方法です。これならできると思い、早速行動に移しました。
 
――自費で取得する場合、費用や期間はどれくらいかかるのでしょうか?
 
西守:費用はざっと200万円くらいです。期間については、スクールでは2週間で取得できると言われていましたが、実際は3か月ぐらいかかると、アメリカ現地で知りました。でも、仕事の合間の限られた期間だったので、訓練漬けの日々でなんとか3週間で免許を取りましたね。
 
――ヘリコプターのライセンスを取得されて、その後はどういったご活動を行われたのでしょうか?
 
西守:帰国後はすぐに中古のヘリコプターを購入して、最初は趣味で飛んでいました。近くの田んぼを借りてヘリポートに仕立て、そこから離発着をしていると、物珍しさで人が集まったんですよね。
そして、ヘリコプターに興味を持つ人や、パイロットになりたいという人が増えてきたので、再度渡米して、今度はインストラクターのライセンスを取得しました。その後、帰国して航空事業部を新設し、パイロットの養成を行う、フライトスクール事業を始めたんです。
 
――趣味ではなく事業としてフライトスクールを設立されたのはどうしてでしょうか?
 
西守:当時は不誠実なフライトスクールが多く、問題だと思っていたからです。実際、私がお世話になったスクールも訓練期間の見積もりが甘かったですよね。そこで、誠実な運営をモットーに、なるべく安い費用で訓練できるスクールを設立しました。当時は高くて300万円くらい必要だったところ、140万円くらいで取得できるようにしました。おかげさまで、多くの方々に評価していただき、これまでに700人くらい輩出しています。
 
――ヘリコプターの良さや魅力を教えて下さい。
 
西守:まず、ヘリコプターの特徴として滑走路が不要で、ある程度の平地があればどこでも離着陸ができますよね。つまり、工夫次第ではより人々にとって身近な場所まで機体を近づけることができるんです。
当初は飛行機のライセンスを取得しようと思っていたのですが、ヘリコプターにしたのは、間近で飛び立つヘリコプターの迫力に魅了されたからなんですよね。
そして、視界が飛行機に比べてとても広いんです。感覚としては、観覧車に乗っているようなイメージでしょうか。また、ヘリコプターは揺れるというイメージを持たれる方も多いのですが、羽がしなって揺れを吸収してくれるので、いわゆる「セスナ機」よりも揺れが少なく、快適に空を飛ぶことができます。
 
快適に空を飛ぶといっても、実際にパイロットとして空を飛んでいるときは常に計器を監視しながら、万が一のことを想定しつづけるので、景色を楽しむ余裕はほとんどありません。
裏を返せば、ヘリコプターのことで頭がいっぱいになり、日常を忘れることができます。それもまた、空を飛ぶ魅力ですね。
 

ヘリコプターのパイロットだったからできた災害支援

   

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掲載日: 2022.04.21

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