★PICK UP「チェコでお葬式をして、オランダで法事をしました」お寺の少ないヨーロッパで奮闘した僧侶の話│江田智昭さんインタビュー<前編>

宗教離れは進んでいる?ドイツと日本の同じところ、違うところ

 

ドイツ惠光寺お盆法要の写真(写真提供:江田智昭さん)

 
――ヨーロッパでは、どのような方が仏教や浄土真宗を求めてお寺に来られるのでしょうか?
 
江田:ヨーロッパ人でお寺や仏教に興味がある人って、一般的にキリスト教に対して距離を置きたい人が多いんです。キリスト教に何か疑問を抱かれて、一度他の宗教にも触れてみようと試みられる方が多いように思います。ですが、実際に浄土真宗にふれると、どこかでキリスト教と似ている印象を抱かれるようで、結局は浄土真宗以外の仏教を学ばれる、という方が多かったですね。
 
――日本でも仏教に疑問を持つ人が居るように、ヨーロッパにおいてもキリスト教に疑問を持つ人がいるんですね。
 
江田:ドイツにある『デア・シュピーゲル』という雑誌で、以前「あなたは毎週、もしくは日曜日に教会に行きますか?」という調査があったんです。その調査結果を見ると、1960年から2012年までの間で教会に行く人が半減したことがわかりました。
 
私の周りのドイツ人たちに教会に行かない理由を聞いたところ、行くといろいろと手伝わされるからとか、人付き合いが嫌だから、という意見がありました。日本でも「お寺離れ」が叫ばれていますが、ドイツでも似たような理由で「教会離れ」が深刻なんですね。
 
――ドイツと日本において、どちらも宗教離れが進んでいるということですが、宗教意識の差などは感じられましたか?
 
江田:ドイツではキリスト教の団体が病院や老人ホームを運営していることが多く、その施設では、多くのキリスト教の信者がボランティアで患者のケアなどを行っています。そこは日本仏教と違うところですね。
日本では、誰かの「死」が仏教との接点となることが多いと思うんですが、ドイツでのキリスト教は「死」に加え「老」、「病」も接点としてうまくおさえていると思います。ですから教会への帰属意識や信仰する人は減ってきていても、老いや病、死への悩みなら宗教が担当だ、というように信頼は下がっていないという感覚があります。
日本でも臨床宗教師という形で病院で活動する人々も増えてきていますが、まだまだ少ないですよね。そこが大きな違いかなと思います。
 
――確かに、日本での仏教はお葬式が中心的な接点で、その他の接点や関わりが薄くなってしまっている印象がありますね。
 
江田:私も日本の老人ホームで傾聴のボランティアをしていたことがあるんですが、そのとき感じたのが人間の「死」に対する感じ方は多様だということなんですよね。自身の「死」に恐怖を感じる人も多くいれば、独りで生き残る方が怖いという人も結構います。
 
さらに、そんな不安から、「早く死にたい」とまで思う人もすごく多いんです。100歳まで生きてしまったらどうしよう、とか。そういう恐怖に対して私たちはどのように対応していくかを考えなければいけません。
 
――高齢者の「死」に対する恐怖感や孤独感へのよりそいなど、僧侶もより意識していかないといけないのかもしれませんね。
 

 
 

   

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掲載日: 2022.11.24

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