慈しみの心で向かい合いなさい【釈尊のことば】
慈しみの心で向かい合いなさい【釈尊のことば】
(本願寺新報 2015年(平成27年)10月1日(木)号より)
「もし隣国が攻め込んできたら、どうやって国を守るのか?」と、真面目くさって議論をしているのを聞いていると、人間ってなんて愚かなんだろうと、悲しくなります。隣国の人だって、やはり同じように「もし隣国が攻めてきたら…」と考えるでしょう。そして互いに腕力を強化し、仲間同士で徒党を組んでにらみ合う。
そもそも世界の争いの根本には、こういう国同士、民族同士の相互不信があるのでしょう。釈尊は、すべての存在は一瞬も止まることなく変化していく(諸行無常)、だからそんな存在のなかに「私」などという堅固(けんご)な実体はない(諸法無我・しょほうむが)と説かれました。とすると、「私」というのは、私たちの勝手な妄想(はからい)にすぎない。
で、国とか民族も同じようなものでしょう? それなのに、妄想された「私」に執着するように、「我が国」「私 たち民族」に執着する。こうして人間って、いつも閉鎖的に、排他的になっていきます。
この偈(げ)で、釈尊は私たちに対し「あなた方は、互いに恨む心や敵意を捨てて、ともに慈しみの心で向かい合いなさい」と呼びかけてるように聞こえます。
先日、ある俳優さんが「戦争を防ぐ最高の抑止力は、互いに友人であることですね」という趣旨で発言していました。で、この偈の「慈しみ」という言葉の原語は「友人」という意味なのです。つまり、釈尊の言葉は、抽象的なことではなく、互いに友人であれと呼びかけているようにも聞こえてきます。
私たちは、国とか民族という枠組みにとらわれることなく、平和を考えていきたいですね。
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