「つながりが切れやすい時代だからこそ、“敬う心”を」せいざん株式会社池邊文香氏インタビュー<前編>
せいざん株式会社の寺院支援活動の例
孤立しやすい社会の中で、敬う心を次の世代へ
ーーまず、せいざん株式会社さんの事業目的を教えてください。
池邊文香さん(以下:池邊):私たちは葬儀やお墓の仕事に関わる中で、「敬う心」の大切さを広めていきたいと考えています。シンプルに言うと「おかげさまの心」ですね。あなたがいたから私がいる、というようにつながりを感じ、人や自然、仏さまを想うことは日本の大切な文化だと思います。
インターネットやSNS等が普及し、人と人がつながりやすい時代になりましたが、同時にそうしたつながりは切れやすく、孤立しがちな側面もあります。自己責任という考え方が幅をきかせ、冷たい時代になってしまいました。望まない孤立は、人の心を蝕むものだと思います。他人のことはどうでもいい、いまこの一瞬が気持ちよければよい、という考えではなく、つながりを大切にすることがますます重要になっています。安定したつながりを感じることができれば、余計なことを考えずに一生懸命生きられるのではないでしょうか。
インターネットの世界の中でSNSの「いいね!」の評価を気にして疲れたときは、評価にさらされる心配がないお寺で心を落ち着けて手を合わせる時間も大事だと思うのです。この孤立しやすい社会の中で、お寺にはいつでも仏さまや、ご先祖さまがいらっしゃいます。
私たちは「敬う心」を次世代にしっかりのこすことを見据えて関わっています。
寺院向けセミナーにて
せいざん株式会社が寺院に紹介しても手数料は請求しない
ーー「敬う心」について、もう少し詳しくお聞かせください。
池邊:あなたがいるからわたしがいる、というおかげさまの心で、人や自然や仏さまを敬い、手を合わせます。これは先人から受け継がれてきた素晴らしい文化であり、よくできた仕組みだと思います。
かつては戦乱や疫病、飢饉があって、簡単に人のいのちが失われていました。子どもも無事に育つのが難しい、生き続けることが困難だった時代です。身近な方を亡くすことも多かったでしょう。私は大学時代に戦争の取材をしていましたが、「自分だけが生き残ってしまった」と申し訳なさそうに語っておられた方もいました。そうした方は、いなくなった人のことを思って手を合わせなければ、申し訳なくて死んだ人たちに顔向けできない。手を合わせてこれから頑張って生きるよ、と決意した、というお話を聞いたことがあります。心から申し訳ない、ありがたいと感じたときに手を合わせるのは自然なことだとおっしゃいました。