「評価を気にしなくていい。安心できる居場所はお寺だった」せいざん株式会社池邊文香氏インタビュー<後編>
お寺は、誰かの評価を気にしなくても良い場所
ーー多くの方に手を合わせていただくために、お寺にできることは何でしょうか?
池邊 文香さん(以下:池邊)いま、地域の共同体が崩れ、お寺が減少しつつあります。家単位ではなく、個人の価値観でお寺とつながる、お寺が選ばれる時代です。ちゃんと寄り添えるお寺はこれからも残っていくのではないでしょうか。人々の悩みに寄り添う潜在能力が高いお寺はたくさんあります。
多くの方は家や学校・職場で優秀かどうかという評価にさらされて生きています。いま盛んにダイバーシティがうたわれるのは、現状としてまだまだ多様性が受け入れられていないからです。切り捨てられたらおしまい、という恐怖感の中で、拳を握りしめて生きている人は少なくないと思います。そのような社会の中で、お寺では評価を気にすることなく、仏さまの前で平等に存在できます。すべてのいのちは尊い、と感じることができる場所です。人と人とのいのちのつながりが再構築される場所としての価値がありますが、まだまだそのような開き方をしていないお寺もあるため、もったいないと思います。
ーーお寺を開き、多くの方に立ち寄っていただくためには、どうしたらよいでしょうか?
池邊:一番重要なのは、ご住職の人間性だと思います。本気で人の苦しみや、社会の苦しみに寄り添う姿勢があるかどうかが問われています。真剣であれば、お釈迦さまのお心は社会に広がっていくと思います。人生、さまざまな苦しいことがあるけれど、仏さまと出遇えるよろこびがある。
心から手が合わさる瞬間があるということを伝えていただければと思います。そして、お寺には慈愛と慈悲があります、と紙に書くのではなく、門を開いて行動していただければ影響は大きいと思います。大それた社会貢献ではなくても、地域になじむ活動がきっとあるはずです。続けることで信頼を得て、地域の方が困ったらお寺に相談に行く、という状況になれば素晴らしいと思います。
大蓮寺でのイベントにて