個人主義の時代。後ろ姿で伝える利他の心。│株式会社はせがわ代表取締役社長新貝三四郎さんインタビュー<後編>
(写真提供:株式会社はせがわ)
前回に引き続き、株式会社はせがわ代表取締役社長新貝三四郎さんにお話を伺っていきます。
後編では、お仏壇の継承について、お寺や僧侶の役割について聞かせていただきました。
お仏壇のニーズがV字回復したのはなぜか?│株式会社はせがわ代表取締役社長新貝三四郎さんインタビュー<前編>
――お仏壇を継承することが難しい時代になりました。
新貝三四郎さん(以下:新貝):かつては、お仏壇は継承することが前提でしたが、今後はそう簡単にはいかないでしょう。同様にお墓についても、自分の代のみであって、子や孫に伝えようという感覚が乏しくなっています。残された人に迷惑をかけたくないという思いが強いようです。お仏壇やお墓の承継について不安を抱く方もいらっしゃいます。
弊社はお仏壇を販売するまでのお付き合いですが、今後は販売した後の生活までサポートしていきたいと考えています。昔は、たとえばお盆に何をすれば良いのか、おじいちゃん、おばあちゃんや親戚、近所の人が教えてくれたものですが、いまは自分で調べるしかありません。弊社はお仏壇を販売した責任として、ご購入後のサポートでお役に立てるのではないかと思います。
(写真提供:株式会社はせがわ)
――次世代にお仏壇を伝えていくには、どうすればよいでしょうか?
新貝:私には26歳の息子がいますが、言葉よりも、親として後ろ姿を見せることが大事だと思います。けっして完璧ではない自分がお仏壇に手を合わせる、その姿を見て何かを感じてもらうしかないですね。いまの若い人が先祖への感謝がないとか、仏教の教えに興味がないかというと、決してそんなことはないと思います。弊社の新入社員を見ていても、特別な志を持っています。ありがとう、「お蔭さま」、いただきます、といった日本人が大事にしてきたアイデンティティを大切にする心は、若い方も潜在的には持っていると実感しています。
戦後、日本が大変な状況のなかで成長してこられたのは、根底に「お蔭さま」の心があったからだと思います。ところがそのことを忘れて個人主義・合理主義に走りすぎた結果、成長が滞った一面もあるのではないでしょうか。他者を敬う思想を社会が評価しません。一見合理的な、見えるものだけを評価する世界に埋没し、孤独を感じる方も増えています。いまこそ、目に見えないものや、他者を敬う心が必要ではないでしょうか。
弊社の店舗に来られるお客様は、我欲を満たすためではなくて、今は亡き人に最後に何かして差し上げたいという利他の気持ちでお見えになると認識しています。お仏壇が無くても生きていくことはできるかもしれませんが、手を合わせ、故人と対話する空間は、生きる支えになりますし、利他の心を育むと信じています。