仏縁をつなぎ、忘れてしまった心を取り戻す|平岡 学さん(株式会社ナーム代表取締役社長)インタビュー<後編>
前編に引き続き、葬儀・仏事などお寺に関する無料相談所を営む株式会社ナームの平岡学社長にお話をうかがいます。
お寺離れの時代に、全国1500カ寺と人々をつなぐ|平岡 学さん(株式会社ナーム代表取締役社長)インタビュー<前編>
葬儀のクレームと真剣に向き合う僧侶たち
勉強会の様子 提供:株式会社ナーム
ーー僧侶が集う勉強会も開催されているそうですね。
平岡:ナームと提携しているお寺さんの有志が集まって、超宗派の勉強会が行われています。全国各地で開催され、大阪では18回も開催されました。勉強会の内容は、マナーやお客さまのクレーム対応(タバコのマナー、身なり・足袋が汚い、挨拶ができない、法名の字が汚い、読経が短い等)です。これらを直していこうという危機感を、勉強会にご参加の皆様がお持ちです。
また、勉強会では、いまの葬儀のトレンドや流れについても学びます。葬儀社さんを招き、葬儀社さんから見たお寺さんの印象や役割をお聞きします。また、超宗派の集まりなので、各宗派の仏事には違いがあり、異なる宗派同士の情報交換は有意義なようです。
ーー近年、葬儀にどのような変化を感じますか?
平岡:葬儀のあり方は急激に変化しています。一気に火葬式が増え、当たり前のものになりました。一昔前は火葬式なんてとんでもないという風潮でしたが、いまは火葬式も立派な葬儀の一種だと認識する方が多くなりました。
ただ、大きく振り子が振れた分、必ず揺り戻しがあると私は思います。たとえるなら東海道線から新幹線こだま、ひかり、のぞみと、どんどん便利でスピードがアップしてきましたが、その分風景を見ながらいろいろなことを考える時間もなくなりました。利便性を追求し過ぎた世の中で、人の心がついていっていないように感じます。忘れてしまった心を取り戻していくことが必要だと思います。
ですから、たとえ簡素化したとしても葬儀は大切にしていただきたいと思います。家族だけでも故人に対して、きちんと供養することが大事です。いまの自分があるのは先祖のおかげですから。ないがしろにすると、結局自分に降りかかってきて後悔をすると思います。お金をかけなくても、自分たちにできることをされることをおすすめします。
ーー僧侶の役割はなんでしょうか?
平岡:心の拠り所だと思います。最近は事業経営に熱心なお寺さんもいらっしゃいますが、お寺を名乗る以上は、心の拠り所であってほしいと思うのです。多くの現代人にとって、観光寺がお寺のイメージだと思います。地域のお寺を訪ねるのはハードルが高いですし、葬儀の場で僧侶を初めて見た、という方も少なくありません。
接点は限られていますから、葬儀の場で心に響かせるお話や振る舞いができることが必須だと思います。難しい話を披露しても響きません。まずは寄り添うところから関わっていただけたら喜ばれると思います。それと、お金が無い方の依頼も請け負っていただけると有り難いですね。