【仏教×認知症】 あなたの可能性を広げる認知症の捉え方を。<前編>

2025年、今から7年後に日本の1割以上が認知症または、認知症予備群になる社会が来ると言われています。国民の9人に1人。65歳以上でいうと、3人に1人が認知症あるいはその予備群になるという可能性が出ているようです。
 
10代の方は、自分の父親や母親、祖父が祖母の様子が今までと違う……
50代以上の方は、もし自分が認知症となって、迷惑をかけたら……
 
それぞれがそれぞれの立場で、戸惑い、不安を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか?2025年の大きな課題に向けて、一人ひとりが認知症に向き合うことが大切な時代になってきたのかもしれません。
本日は、京都のお寺で実施された講座&茶話会「認知症に備える」〜お寺で考える安心な老後〜という認知症イベントをレポートします。
 
今回は、「認知症に備える~お寺で考える安心な老後~」というテーマで、精神科医・介護福祉士・僧侶がそれぞれ3人の立場で認知症や生き方について話し、その後茶話会も開催され、認知症に対する素朴な疑問に答えました。その様子を前編・後編に分けてお届けします。
 
 

世界で進む認知症。認知症のあれこれ

 
精神科医、おれんじ畑代表の東徹先生が、医学的な視点から、認知症についてお話をしてくださいました。認知症の啓発活動と認知症介護者の育成の活動を展開中な東先生。なんとなく、遠いものと思っている認知症ですが、珍しいものではなくなってきているようです。
 

・認知症とは、脳の中にある小さな神経細胞が減少した結果、認知機能の低下をきたす状態のことを言う。
 
・4大認知症
①アルツハイマー型認知症
②レビー小体型認知症 
③脳血管性認知症
④前頭側頭型認知症

 
東徹さん(以下 東):割合としては、アルツハイマー型が半分を占めており、4大認知症以外もあるそうです。
認知症の症状は中核症状と周辺症状(BPSD)の大きく2つに分かれます。中核症状は認知症の方なら誰にでもあらわれて進行し、人によってスピードも違います。周辺症状は人によってさまざまで、一時的で、激しいこともあります。この2つがあると認識していることが重要です。
自身も周りも理解・対応することで、生活しやすくなり、うまく接することができます。理解することは備えると同じなんです。
 

東徹さん

 
■徘徊とは?
東:辞書の意味では、「あてもなくさまようこと」とされています。しかし、認知症の方の徘徊は、当てはあるが、途中で忘れてしまう、道がわからなくなる感覚。ご本人としては、当てがないわけではないんです。それを知っていると、その人の気持ちがわかってくるかもしれません。対応するときに役に立ったりします。だから、徘徊ではないんです、あえていうなら、迷子ですかね。
 
■予防、認知症を防ぐには?
東:予防法はほとんどありません。脳トレとかもありますが。食事に関しては、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、フラボノイド、ポリフェノール、魚、茶などが良いとも言われています。しかし、因果関係はわかっていないので、ご留意ください。
 
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東先生は最後に「予防法は、健康な暮らし!これしかないですね」と明るく話されていました。認知症のこととなると、どうしても暗いイメージが多いのですが、先生から感じられる雰囲気は、認知症を当たり前にあるものだ、とずっしりと構えられているようにも感じました。
 
それが参加者の皆様への安心に繋がったのか、会場は明るく、緊張もない柔和な雰囲気となっていました。
 
 

認知症の概念が転換。介護士増本先生のお話とワークショップ

 

左:東徹さん、右:増本敬子さん

 
おれんじ畑スタッフ・介護福祉士の増本敬子先生のお話とグループワークです。
 
増本敬子さん(以下 増本):私は暑いのが苦手です。みなさん、暑いときにはどうされますか?暑いときになんとか、涼しくしようとするのが脳の働き。暑くなって、熱中症になったら死んでしまいます。認知症になると、この暑い中でマフラー巻いて何時間も歩くようになる人もいます。
 
認知症になったら、近所の目があると思って、近所の人に言えなくなる。
認知症になったら、生きている価値なく生きていると思ってしまう。
そう思うと、私たち自身が安心して生きていけなくなりますよね。
認知症になっても幸せだと感じられたら、私たちの未来も幸せです。決して、人のためではない。自分のためだと思って日々活動しています。
 
■認知症の方の世界を想像してみる
 

・認知症は脳の状態でパッと見てもわからないので、なかなか助けてもらえない。
・失語症は、話せるが会話が成り立たない。全く喋ることができない状況。
・失行は、例えば服が着られなくなったりする。
・異食症は、トイレットペーパーなど食べられないものを食べたりする。トイレットペーパーは柔らかくて、白いもの=美味しそうに見える。

 
増本:私たちが認知症の方の行動が理解できずに、怒ってしまったりものを取り上げてしまうことは、私たちの世界からしか見ていないことになります。認知症の方が見えている世界は私たちの世界とは違う。そう認識すると、食べてはいけないものを食べていたらすぐに取り上げるのではなく、もっとこちらに美味しいものありますよ、と誘導したりすることもできます。
 

・進行すると、自分が認知症であると自覚することがなくなる。
→「困ったことがあるなら手助けしましょうか?」と言うと、「なにも困ってません」と言われる。けど、実際は洗濯物が山積みだったり、ゴミが散乱していたりする。
・認知機能は低下するけど、感情は残る。嫌われたら損!
→どうせお世話しないといけないんだったら、嫌いになるよりいい感情を持ってもらった方がうまくいくことが多い。馴染みの関係づくりがスムーズな介護につながる。
・病の種類や、進み具合によってもさまざま。
・取り巻く人によってひどい症状にする場合もある。
・関わりの中、取り巻く環境で症状が変わることがある。これが他の病気とは違うところ。

 
■対応のポイント
「相手の立場になって物事を考える」
増本:徘徊の場合、認知症の方にとってはわけもわからず歩いているのではなく、仕事に行こう、彼女に会いに行こう、子どもを迎えに行こう、と思って歩いていることが多いです。おじいちゃん、最近毎朝7時に歩き出す、とか、そういえば7時に出勤していたとか背景が見えると、家に帰ってきたとき「お疲れさま」と言ってあげられるかもしれませんね。
 
「その人を知る」
増本:生活の中で、その人の趣味などを知る。音楽が好き、だけど童謡は嫌いな人に童謡を歌ったら嫌がられる。その方に何を言ったら、心動かれるかを知る。その人の生活や性格、病気の種類を知る。その人にとってのキーワードを持っておく。
 
「レッテルを貼らない」
増本:認知症=何もできない人 と見ない。一度そのように見てしまうと、そうとしか見えなくなります。
 
「対等なお付き合い。本人の主体性を尊重する」
増本:これは実はケアする側の落とし穴。ちゃん付けしてしまったり頭を撫でたりしてしまうことがある。
「さっちゃん」と扱われると「さっちゃん」になるし、「さちよさん」と呼ばれると「さちよさん」となります。にこにこしている方はにこにこする強み、強がりな人は強がりの強みを持っているように。その人の強みが好きな強みであろうが、嫌な強みであろうが、その人を認めて付き合う。人が人らしく生きていく。いくら可愛くても、90年の歴史をもった人生の先輩として接する。
 
「サポートは黒子のように!」
増本:介護する側はついお節介をしてしまう場合があります。あんまり構い過ぎないことも大切です。
 
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グループワークの実施

 

・グループに分かれ、1分間で自分の特徴を3つ書く。
例)私は優しいです、慈悲深いです、偏見を持ちません
・3分間で、認知症になったら嫌なことを話し合う。
・悪い対応の掛け合いをロールプレイする。

 
先生のご経験に基づいて具体例をたくさんあげてくださり、とてもわかりやすく、参加者の皆さんも実際にうんうん、とうなずきながら話を聞かれていました。
認知症という、繊細な課題に対して、遠回しな言葉でお話しされず、増本先生のしっかりとした経験に基づいて話してくださることが、認知症の家族を持った私には何よりも安心し、お話を聞くことができ、励まされたような気持ちになりました。
 
ある種、当たり前のことを言われているようにも聞こえましたが、当たり前のことをいかに日常で自分が実行できていないかも、痛感した時間ともなり、情けない思いもありました。相手が認知症の方に限らず、増本先生がおっしゃるようなコミュニケーション、人のあり方ができればいいなと思わずにいられませんでした。
 
また、実際に認知症でのトラブルを優しく取り上げながら、話してくださることで、今まで認知症を抱えてこられた方や、これから認知症への不安を持たれる方もきっと、今までとは少し違った認知症への見方ができたのではないかと感じるような時間だったように思います。
 
イベントの後半は、次回記事でのご報告です。お楽しみに!
【仏教×認知症】認知症との向き合いかたは日々のコミュニケーションからはじまる<後編>
 
 

サムネイル画像:photoAC

   

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掲載日: 2018.08.06