「仏さまの前で勉強しています」地域の学生の大切な居場所| GOKOUプロジェクトー長崎県教宗寺
「長崎市にもっと『居場所』があれば良いね」地域の若者から生まれたお寺の空間
GOKOUの運営会議の様子(写真提供:小岱さん)
ーーGOKOUはどういったきっかけではじめられたのですか?
小岱:門徒会館は教宗寺の本堂からすぐ近くのところにあるのですが、平日はあまり活用していない状態でした。なので、その空いた日を活用したいと思い、GOKOUという活動をはじめました。ちなみにこの活動は「ながさき若者会議」という長崎市主導のプロジェクトの一環として取り組んでいます。
ーー「ながさき若者会議」とはどういったものですか?
小岱:「ながさき若者会議」とは、長崎市が重点的に取り組んでいるもので、チャレンジする若者を応援するプロジェクトです。私もそのメンバーで、16歳から34歳までの若者が約50人在籍しています。
実は、長崎市は人口流出がすごく激しくて、近年、2年連続で人口流出数が全国ワーストを記録しました。(*1)
この人口流出を止めるためには、若者から選ばれる街にならなければいけません。若者が楽しめる街、チャレンジできる街を目指して、このプロジェクトが立ち上がったんです。
ーーその街づくりの一環として「居場所」が求められたのでしょうか。
小岱:そうですね。メンバーで話し合っているときに「長崎市をどんな街にしたい?」という問いが出ました。その答えとして、どんな状況でも受け入れてもらえるような「居場所」がある街、と提案する若者がたくさんいました。
ーーそれで、小岱さんがお寺を「居場所」として活用することを提案されたのですね?
小岱:以前、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って全国の学校が休校になった時に、お寺を活用して子どもさんの一時預かりを行ったことがありました。その経験を「ながさき若者会議」で話したら、お寺を使って居場所づくりの活動ができないかという提案がなされたんです。私も若者の居場所をつくる必要性を感じていましたし、お寺だとテナント料が発生しないぶん費用を抑えて運営できるというメリットもあったので、お寺を居場所としてもらう活動を始めることになりました。
GOKOUに設置されている本棚(写真提供:小岱さん)
ーーなぜ、若者を対象に居場所づくりというアイデアを考えられたのでしょうか?
小岱:ながさき若者会議ではさまざまな企画が提案されたのですが、その中でも居場所がほしいという意見は多数ありました。つまり、それだけ若者の居場所が足りていないということなんですよね。
大人になったら職場と家以外にも、カフェやコワーキングスペースに行くことで、自分でサードプレイスを用意できますよね。
でも学生さんの居場所は基本的に家か学校の二択で、学校でうまく過ごせなかったら居場所が家しかなくなってしまうんです。でも、不登校になったら家にも居づらくなってしまうことも多くあります。すると、居場所がどこにもなくなってしまうんですよね。
どこか居場所を探そうにも、長崎市では家から駅やバス停が遠くて、どこかへ行くとなると親に車で送ってもらわないといけないことが多いんですよね。つまり、学校以外の場所に行く時、学生一人ではどうしようもないんです。
ーーながさき若者会議のメンバーにもそうした経験をされた方が多いのですか?
小岱:ながさき若者会議のメンバーにも、幼少期はいわゆる鍵っ子で、一人で親が帰ってくるまで寂しく待っていた経験があったり、両親との関係があまり良くなくて、家に帰りたくないと思っていた人がいました。
それで、家でもなく学校でもない、「なんか安心できる」場所があったらもっと長崎に住みたくなるし、帰って来たくなるんじゃないかと。そういった思いから居場所づくりの企画がスタートしました。
ーー居場所づくりを企画する中で難しいと感じたことはありましたか?
小岱:難しいと感じたのは、居場所の定義でしょうか。メンバーと何回も話し合ってきましたが、やはり個人によって居場所の定義は違いますよね。ただ場所があるだけで居場所だと感じる人もいるし、誰かに話すことができて初めてそこが居場所だと思う人もいます。その空間がすべての人にとっての居場所になるわけではないので、どういった場所にするべきか悩みましたね。
ーー小岱さんにとって、居場所とは何だと思いますか?
小岱:私は、やはり心身ともに安心できる所が居場所だと思っています。そこへ行くと誰かと関わることが出来て、「私って一人じゃないんだ」と安心できる場所が理想的ではないでしょうか。