「仏さまの前で勉強しています」地域の学生の大切な居場所| GOKOUプロジェクトー長崎県教宗寺
「仏さまの前で勉強しています」GOKOUが地域の学生に与えたもの
GOKOUで自習中の様子(写真提供:小岱さん)
ーーGOKOUの活動を通して、どんな成果がありましたか?
小岱:「居場所」という意味では、誰かに利用していただいているだけでも成果ではないかと思っています。
現在、GOKOUは私を含めて6人で運営しているのですが、そのうちの1人がかつて不登校の状態だったんです。その子は進学校に通っていたので、常に良い成績を求められていましたが、体調をくずしてしまい学校に行けなくなり、1年生の時点で進級が危ういところでした。ですが、GOKOUで勉強を続けて、最後の試験に見事合格して、進級することができました。その子も「GOKOUのおかげです」と言っていましたね。
また、他の学生さんともGOKOUでの雑談や悩み相談を通して、関係を作ることが出来ました。多くの学生さんにとって、GOKOUが居場所としての役割を果たせているのではないかと思います。
――GOKOUがきっかけとなって、お寺とのご縁はありましたか?
小岱:最近は一緒に活動している運営メンバーや利用者さんから、お寺の行事に行ってみたい、手伝ってみたいといったお声もいただくようになりました。他にも「お寺が身近になった」、「お寺って気軽に行って良いんだ」といった感想も頂きました。
――嬉しいお言葉ですね。
小岱:GOKOUがお寺にあることで、行きにくさにつながらないか心配していたので、こうした感想を頂いたときは嬉しかったですね。
それと、お仏壇を怖がられないか心配で、門徒会館をGOKOUとして活用するときは、お仏壇の扉を閉めた状態にしていました。ですが、学生さんたちはそうした恐怖感は抱いてないようで、むしろ自分たちでお仏壇の扉を開けて使っているようです。これはちょっと意外でした。
ーーそれは大変興味深いですね。どうしてわざわざお仏壇を開かれるのでしょうか?
小岱:学生さん曰く、見守られている感じがして、居心地が良いらしいです。ときには、お仏壇の前に椅子を置いて、話しかけることもあるんだとか。
また、テスト勉強で英単語や漢字の暗記をするときもお仏壇の前で勉強するそうで、それがすごく集中できると言っていました。
ーーお仏壇の前で勉強とは。勉強が捗る、新たな方法かもしれませんね。
地域の子どもたちと交流(写真提供:小岱さん)
ーー最後に、今後の展望を教えて下さい。
小岱:今後はこの活動をもっと広めたい気持ちもあります。ですが、人気になればそれだけ居場所の定義がさまざまになり、嫌な思いをする人が出てこないか、という心配もあります。なので、現状はいつも利用していただいている高校生たちの口コミを通じて広めていただいています。
一方で先日、事前の利用登録なしで利用できる「GOKOUオープンデー」を実施しました。すると、子育て支援をしている方や地域のお母さん、不登校支援をしている塾の関係者が来られ、すごく興味を持ってくださいました。今後は、地域の方々との連携も考えたいと思っています。
また、不登校支援については私も勉強させていただいています。現在は学習指導要領が見直されて、登校していなくても要件を満たせば出席扱いされるようになってきました。GOKOUの活動が、学業に励む学生さんはもちろん、学校に行きたくても行けない学生さんの大切な居場所になれればと思っています。
編集後記
長崎に住む若者世代のアイデアから生まれたGOKOU。そこは、地域の方々の大切な「居場所」であるとともに、多くの方のご縁が集まる場所なのかもしれません。
誰かとの繋がり、そして何より仏さまとの繋がりを感じられるからこそ、多くの人が安心できるのではないでしょうか?
GOKOUは今日も、多くの学生たちや地域の方々を見守っています。
GOKOUについて
GOKOUとして活用されている教宗寺門徒会館の内観(写真提供:小岱さん)
住所:長崎県長崎市矢上町41-7 教宗寺門徒会館
利用時間:8時半〜22時 ※利用時間は変更になる場合あり