お寺を避難所として活用するには?行政から避難所として指定されているお寺に聞いてみた|長崎県教宗寺

お寺を避難所として活用する際に、気をつけることは?

 

避難所となる庫裏の様子(写真提供:小岱さん)

 
ーーお寺ではどういった事前準備をされていますか?
 
小岱:長崎市からの供給で緊急電話回線を準備しています。電話回線が正常に通じるかどうか、布団の備蓄が過不足なく揃っているかといった調査に毎年来られています。他には、おむつの交換や授乳のためのスペースがあるか、ペットの避難スペースがあるかどうかといったことも調査されます。
 
ーーペットの避難スペースも準備されているのですね。
 
小岱:今日では犬や猫などのペットは家族の一員とされていますが、避難所によってはペットと一緒に避難できない場合があるんです。避難したくてもペットが居て避難できないことが問題となり、長崎県議会でも議題に上げられていました。
 
ーー避難所として開放する際、どういった工夫をされていますか?
 
小岱:やはり、飲料水があると安心なので、先日の台風避難では、停電になっても大丈夫なように、予めペットボトルを凍らせて、冷凍庫に入れておくなどの準備を行いました。
ペットポドルを凍らせておくと何かを冷やすこともできるし、溶かせば飲料にもなるので、備蓄としては効果的ですね。他にも、水をお風呂の浴槽に貯めたりと、自主的にできることを行いました。
 
また、災害時の情報収集にスマートフォンは欠かせないと思うので、発電機や予備バッテリーを用意しておくと停電時でも充電ができるので安心ですね。これらは地元の企業さんが無料で貸してくださいました。
 
行政から開放指示があった場合は市の職員さんにもお手伝いいただいていますが、それだけではなく、避難者が何を求めているかを考えた上で、こちらが自主的にできることを考えて準備しています。また、避難を呼びかける際には、事前に天気予報を確認して、安全に避難できるタイミングで呼びかけています。
 

地元企業からの物資(写真提供:小岱さん)

 
ーーお寺を避難所として開放する際に、気をつけるべきポイントはありますか?
 
小岱:まず、お寺が災害時に危険な場所になっていないことは大前提ですので、予め行政が発行しているハザードマップで、お寺を避難所に活用して安全かどうかを確認する必要があります。
実際に避難所として開放する際は、特に防犯に気をつけたほうが良いですね。本堂と庫裏が直接つながっている場合、窃盗被害の心配があります。なので、避難所として開放する際は住職が貴重品を管理している部屋で寝泊まりするようにしています。
また、全国では避難所での犯罪も発生しているので、住職や坊守などお寺に居る人が被害者にならないためにも、寝る際は部屋に鍵をかけるといった対策が必要ではないかと思います。
 
ーーありがとうございました。
 

編集後記

 
近年多発する自然災害。災害が発生すると、多くの方が避難をされることでしょう。そんな方々の受け入れ先としてお寺が注目されているといいます。(*1)
 
今回は、実際に行政から避難所として正式に指定され、活用実績のあるお寺の方にお話を伺い、備蓄の定期点検や防犯対策等、事前に行うべきことを教えていただきました。
気持ちが安らぐ畳の空間があり、なにより「仏さま」がいらっしゃるお寺。不安が募る中で、少しでも安心できるための支えとなるのかもしれません。
小岱さん、ありがとうございました。
 

(*1)
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/51351/rsc05_01_071.pdf
稲場圭信,自治体と宗教施設との災害協定に関する調査報告,宗教と社会貢献. 5(1)
P.71-P.86,2015-04
   

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掲載日: 2021.12.08

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