お寺を避難所として活用するには?行政から避難所として指定されているお寺に聞いてみた|長崎県教宗寺
仏さまがいらっしゃる避難所
玄関での表示(写真提供:小岱さん)
ーー教宗寺では、災害発生時に避難所としてお寺を開放していると聞きました。これには、どういったきっかけがあったのでしょうか?
小岱 海さん(以下:小岱):今から39年前の1982年に、「長崎大水害」(*1)という災害があり、教宗寺の近隣地域で甚大な被害が出ました。死者・行方不明者は299人で、教宗寺の門徒も亡くなりました。
お寺の近くにある川が氾濫したのですが、その時に多くの方がお寺へ避難して来られたんです。日頃から慣れ親しんでいた場所で、安心できる場所だったということもあるのでしょう。そうした実績があり、現在は長崎市の避難所として正式に登録されています。
ーー長崎市の指定避難所にされているのですね。
小岱:そうですね。私たちもお寺を避難所として活用していただくことで、地域の方が安心できるのであればお断りする理由もないので、指定を受けさせていただいています。
ーー行政とはどのような連携をされているのでしょうか?
小岱:お寺が避難所として開放される時には、長崎市のホームページでも発信されます。また、行政の方もお寺に来られて避難者の受け入れをされていますね。
ただ、避難所には優先順位があり、最初は地域の公民館、続けて学校の体育館が開くようになっているので、お寺が避難所として開放されるのは最後の段階になります。
とはいえ、お寺に避難をしたい方はいらっしゃるので、行政の指示を待たずとも自主的に開放することもあります。その際はSNS等を通じて情報発信も行っています。
Facebookでの情報発信の様子(写真提供:小岱さん)
ーー実際に避難所として開放しているときのお寺はどんな様子なのでしょうか?
小岱:2020年9月に発生した台風では、7人ほど避難しに来られました。まず避難所になっている庫裏のお内仏に合掌礼拝して、そこからそれぞれの場所を確保されていました。仏さまがいらっしゃると安心するとおっしゃっていましたね。
ーー避難する際も手を合わせる……。その行動をするのは、避難所の中でもお寺だけかもしれませんね。お寺を避難所として活用することの良さはなんだと思いますか?
小岱:畳なのがすごく良かったみたいで、自宅で過ごしているみたいと話す避難者の方もおられました。体育館や公民館は床が硬いので、そこはお寺に避難する大きなメリットかもしれませんね。また、公民館には心細くてひとりで行きづらいけど、お寺なら行ける、という方もいらっしゃるようです。
ーー小岱さんは「人を知ると場所が近くなる」とおっしゃっていましたが、こうした万が一のときに、日頃からのご縁が大きな支えとなるのかもしれませんね。