持続可能な環境を実現するまちづくり④ 寺院を中心としたまちづくり<後編>

 

■ 寺院・仏教が支える持続可能ないのちのつながり

 

 
経営学者であったP・F・ドラッカー(1909~2005)がその著書『非営利組織の経営』の中で日本での寺院のあり方を評して「最古の非営利組織(NPO)は日本にある」と語っているように、古くから寺院は公益性を発揮してきました。永い歴史を持つ寺院は自治体や企業よりも遥かに長期的な視野を有しているので、地球環境問題や貧困問題への対応など「持続可能」な社会や地域のあり方を、より本質的に考えることができるのではないでしょうか。
 
また、自己中心性とそれに伴う犯意なき搾取が加速し、世界が破滅へと向かっているいま、自分と他者の「いのちのつながり」を想い、欲を慎む仏教の思想が求められているように思います。
 
私たちは、昔の生活様式や地域共同体に戻るのではなく、今における持続可能な社会へと向けて、それぞれが、それぞれの地域の中で、足りている地域のあり様を考え、新しい共同体作りあげていく必要があります。そこでは、寺院もまた、地域のあり方に沿った役割を発揮していくことが求められています。持続可能なまちづくりへの道のりを閉ざそうとする、私たちの自己中心性。それを振り払うときには、寺院の持つ仏教の力が大きな助けとなるでしょう。寺院にはそれだけ大きな可能性が秘められているのだと期待しています。
 

菱川貞義(ひしかわ・さだよし)
講談社こども美術学園講師、印刷会社、デザインプロダクションを経て、1989年に広告会社(株)大広に入社。デザイン、コピー、プロモーション、プランニングの仕事をしながら、地球環境プロジェクトチームとして滋賀県・NTT共同プロジェクトに参画し、「市民参加型情報ネットワーク」の社会実験「びわこ市民研究所」を運営。
2006年から環境に負荷をかけない自然農を実践。
2008年には「275研究所」を社内ベンチャー組織として立ち上げ所長に就任。2012年に農村再生をミッションとするNPO法人いのちの里京都村を設立。
2014年からは浄土真宗本願寺派総合研究所の他力本願.net のプロジェクトに参加、委託研究員として「1000年続く地域づくり」をテーマに、まちづくり、セミナー、ワークショップ等を行う。

 

   

Author

 

他力本願ネット

人生100年時代の仏教ウェブメディア

「他力本願ネット」は浄土真宗本願寺派(西本願寺)が運営するウェブメティアです。 私たちの生活の悩みや関心と仏教の知恵の接点となり、豊かな生き方のヒントが見つかる場所を目指しています。

≫もっと詳しく

≫トップページへ

≫公式Facebook

掲載日: 2021.08.27

アーカイブ