カーボンフットプリントと私たちのライフスタイル|地球環境戦略研究機関インタビュー②<前編>

■「できなかった」は個人の責任?

 

 
渡部厚志さん(以下、渡部):昨年、京都と横浜で市民の皆さんとワークショップや家庭実験を行いました。カーボンフットプリントを減少する65の行動の選択肢をワークショップで提示し、次に2週間ほど各家庭でいくつかの行動を実践していただきました。選択肢の中でも「まとめ買いをして移動を減らす」「バスなどの公共交通機関で移動する」「電気をLEDに変える」といった行動は比較的多くの人が実施しました。このように、すぐにできることから始めていただくのは非常に良いと思います。
 
一方で、移動では、「公共交通機関がとても不便」「人が多すぎて使えない」、食では「環境に良い食材がどこで買えるのかわからない」「時間がなくて難しい」「肉食を減らすのは家族のことを考えると難しい」といった感想もありました。「やってはみたものの難しかった」「やろうと思ったけれど難しいので断念した」という場合もあるのです。
 
「できなかったこと」には、周囲の環境や状況が整っていないためにできなかった場合もあります。個人の責任として抱えるのではなく、近所をはじめとしたいろんな方と共有して声を上げれば、一人で努力する「先」に行けるのではないかと思います。
 
――なるほど。個人ではなく、むしろ地域や社会の構造そのものに原因があり、私たちがカーボンフットプリントの少ない生活を無理なく送るためには、そうした問題を共有して、皆で考えていく必要がある、ということですね。
 

■カーボンフットプリントを減らしつつ、地元の魅力を見つけて、育てる

 
――『1.5℃ライフスタイル ― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢 ―』は、私たちのレジャーなどにふれている点も特徴的です。
 
小嶋:モノではなく、コトの消費でも、カーボンフットプリントは排出され、過ごし方によって大きな差が出ます。たとえば海外旅行だと、飛行機移動のカーボンフットプリントが非常に大きいです。「海外に行くな」「飛行機に乗るな」と言っているわけではありません。
 
ただ、カーボンフットプリントの観点では、利用頻度に気を付けつつ、海外や遠方だけにこだわらず、同じ予算や日程で、国内や近場でのんびりするといった選択肢を持っても良いのでは、という話です。自分にとっては特別感が少ない近場でも、誰かにとっては憧れの観光地かもしれません。地元の観光資源を皆で育てて活用していくことは、自動車や飛行機での長距離移動を減らすことによるカーボンフットプリント削減に加えて、住み続けられる魅力ある街づくりの観点でも大きな意味があります。
 
自国や地元の魅力を発見して育てる活動に取り組むことで、社会の豊かさや個人の幸福を多面的に深めるきっかけになるかもしれません。カーボンフットプリント削減を我慢として捉えるのではなく、より皆が幸せに過ごせる社会を作る機会として意識することは重要だと思います。
 
――確かに。地域の産業や観光資源に注目し、楽しく過ごすことができるならば、移動に時間とエネルギーをかけずに、時間をより長く有意義に使うこともできますね。
 

余裕のない生活がカーボンフットプリントを増やしている?

   

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掲載日: 2021.09.23