お寺のホームページはどうあるべき?参拝者数350倍の実績を持つ寺院専門コンサルタントに聞いた|株式会社ELternalインタビュー
インターネットの普及から20年あまり。今日では、ホームページを設けるお寺も増えてきました。しかし、どんなホームページが理想的なのかは、なかなか分からないもの。
そこで、今回は神社仏閣の運営を総合的にサポートする株式会社ELternal(エルターナル)の代表取締役社長CEO 小久保隆泰(こくぼ・りゅうたい)さんと、執行役員の山﨑 亮秀(やまざき・りょうしゅう)さんに、お寺のホームページに関するアレコレを聞いてみました。
「日本に、感動を。」寺社仏閣専門の支援会社を立ち上げたきっかけとは。
インタビューに応じる小久保さん(画像提供:株式会社ELternal)
ーー小久保さん、今日はよろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。
小久保隆泰さん(以下:小久保):小久保隆泰と申します。1982年生まれ、40歳です。
実家は埼玉県熊谷市にある真言宗豊山派 埼玉厄除け開運大師 龍泉寺(りゅうせんじ)という寺院で、20歳のときに住職である父が亡くなり、その時から代表役員として寺院をお預かりしています。
「株式会社ELternal」は、私が早稲田大学 大学院在学中に創立した会社で、「日本に、感動を。」というミッションのもと、全国に15万件ある神社仏閣の課題解決をサポートしています。「お寺に関わる」ということで社員の約半数は僧侶であるところが弊社の大きな特徴です。
ーーどういったきっかけがあり、会社を設立されたのでしょうか?
小久保:マーケティング手法を駆使して龍泉寺の経営の立て直しを成功させた経験があり、それを全国の神社仏閣でも活かしたいと思ったことがきっかけです。
私が運営を引き継いだ当時は檀家数が200件で、寺院の収入だけでは生活ができず、父親は学校の教員をしながらお寺を維持しているような状態でした。
龍泉寺の成功事例は他の寺院からも注目され、ノウハウを教えてほしいという声を多数いただくようになりました。
また、全国的に寺院の存続が困難だという事実を知りました。全寺院のうち、約40%が廃寺の可能性という厳しい現実は、お寺の代表役員を務めていた私にとって無視できない課題で、それも会社を立ち上げた理由ですね。
ーー龍泉寺さんの経営を大きく立て直されたとのことですが、具体的にどういう成果を残されたのでしょうか?
小久保:入寺後、まずは墓地の契約数を増やすことにしました。祖父が1983年に造成した墓地が1000区画ありましたが、2003年当時、20年経ってもわずか20区画しか売れていない状況でした。
残りの980区画を売るために、お墓を取り巻く現状を分析。宗旨に縛られず、明るい雰囲気で、なおかつ小規模なお墓が求められていることを知り、それを反映させた結果、5年で完売となり、現在では墓地の数は4000基にまで増え、檀家数も大幅に増加しました。
その後、2018年からは寺院を活用して地元に観光客・参拝客を呼び込む地方創生プロジェクト「埼玉厄除け開運大師プロジェクト」を立ち上げ、4年間で初詣参拝者を350倍(1000人→35万人)に増やすことができたんです。
現在はその経験を活かして、ホームページはもちろんのこと、宗派を超えて寺院運営のサポート行っています。
大切なのは、情報を「あえて」絞ること
インタビューに応じる小久保さん(写真左)と山﨑さん(写真右)(画像提供:株式会社ELternal)
ーーそもそも、お寺のホームページはなぜ必要なのでしょうか?
小久保:理由は非常に単純で、現代では情報を調べるときにインターネットで検索することが圧倒的に多く、ホームページがないと世間の人々にお寺の情報を知っていただけないからです。
ーーお寺のホームページではどういったことを発信すると良いのでしょうか?
小久保:各寺院の状況によって大きく左右されるとは思いますが、ひとまずホームページを用意したい、ということであれば、お寺の住所やアクセス方法、歴史を掲載するだけでも成立します。
一方、参拝者を増やしたい、お墓の契約を増やしたいといった具体的な目標があれば事情が変わってきます。
日本には約7万7千もの寺院があります。つまり、競合する寺院も必然的に多くなります。その中でこのお寺に行こうと思っていただくためには、理由が必要ですよね。そのために必要なのは、お寺の強みや魅力の発信ではないでしょうか。
――お寺の強みや魅力を見つけるには、どうすればよいのでしょうか?
小久保:徹底的に分析することだと思います。そのお寺にはどういう魅力があって、どういう理由で参拝に来られているのかを分析し、発信する内容を決めると良いのではないでしょうか。
お墓、宝物、歴史的建造物、教え、歴史……色々あると思いますが、闇雲に発信するのではなく、発信するポイントを決めて、そこに集中するのが重要です。
ーーつまり、「選択と集中」が鍵ということですね。選択と集中で大切なポイントはどういったところでしょうか?
小久保:マーケティングには3Cという考え方があります。カスタマー(顧客:Customer)、カンパニー(自社:Company)、コンペティター(競合:Competitor)、ですね。
選択と集中を考える時、絞ったサービスの市場規模はどうか(カスタマー)、そのサービスを自社(所属寺)で実行できるかどうか(カンパニー)が重要です。加えて、もう一つ大事なのがコンペティター(競合)という要素です。つまり、同じような情報が掲載されている寺院のページがあるかどうかですね。お寺に限らず、後発で参入して成功するのは非常に難しいです。
よって、一定のニーズがあり、同じような情報が掲載されていなければ、そこに絞って情報を発信すると良いですね。