大地震を経験した寺院が取り組んだこととは|北海道法城寺 舛田那由他さん×黒田真吾さんインタビュー<前編>
地震大国日本。日本で暮らす上で、地震とは切っても切れない関係にあると言って良いでしょう。そこで、他力本願ネットでは2021年より、「『地震』って何だ?地震大国の日本で暮らすということ」と題し、防災学習の専門家である黒田真吾(くろだ・しんご)さんと学びを深めました。
シリーズを通して阪神・淡路大震災や東日本大震災など、平成以降で最大震度7を観測した各地震について学び、いずれの地震においても日頃から地震のことを想定し、備えておくことの重要性を教えていただきました。
では、大きな地震に向けて、お寺はどういった備えをしておけば良いのでしょうか?今回は、シリーズのまとめ回として、北海道胆振東部地震で被災し、お寺や地域の復興活動に尽力された法城寺の舛田 那由他さんをゲストに迎え、黒田さんと共にお寺の防災についていっしょに考えます。前編では、舛田さんがご経験された北海道胆振東部地震の被害と、その後の支援活動についてお伺いします。
北海道法城寺(画像提供:舛田さん)
法城寺住職 舛田那由他さん(写真右)(画像提供:舛田さん)
黒田真吾さん(画像提供:黒田さん)
「地震」って何だ?地震大国の日本で暮らすということ【北海道胆振東部地震編】
■北海道胆振東部地震を振り返る
――舛田那由他さんは、北海道法城寺の住職を務められています。お寺の所在がむかわ町ということで、北海道胆振東部地震の震源地からも非常に近い場所にあります。舛田さん、今日はよろしくお願いします。まずは、地震発生当時の様子を振り返っていただけませんか?
舛田 那由他さん(以下:舛田):境内では多くのお墓が倒れ、鐘楼堂(しょうろうどう)も全壊しました。本堂は倒壊こそ免れたものの、内陣はぼろぼろで、外陣のカベも剥がれ落ちました。納骨堂でも、ご本尊が倒れ、納骨壇のお花や仏具が散乱してしまいました。
大きく損傷した本堂内陣(画像提供:舛田さん)
倒壊した鐘楼堂(画像提供:舛田さん)
仏具等が散乱した納骨堂(画像提供:舛田さん)
黒田 真吾さん(以下:黒田):大変だったのですね。墓石が倒れるということは、それだけ揺れが大きかった証拠ですね。実際、気象庁が示す目安では震度5強で「多くの墓石が倒れる」とされています。むかわ町ではそれよりも遥かに大きな震度6強だったので、揺れによる被害は凄まじいものだったと思います。
ちょこっと豆知識
現在、震度は計測震度計で自動的に観測されていますが、かつては地震の揺れと、人の感じ方や周りの物の動きや被害との関係から決めることになっていました。(*1)
――そんな法城寺さんでは地震発生後、どういったご活動をされたのでしょうか?
舛田:地震発生の翌日に知り合いの僧侶が発電機を持ってきてくれました。早速、発電機を活用して携帯電話の充電スポットを開設しました。ご存知の通り、北海道では大規模な停電が発生しました。なので、スマートフォンの充電を求めて、たくさんの方が利用されましたね。
また、学校が臨時休校になったので、空いた時間にゲームがしたい子どもたちにも役立ったようです。お寺が充電スポットになれば人が集まり、自然と会話が生まれますよね。
黒田:ご自身も大変な状況でいらしたのに、驚くほど早く支援活動を始められたのですね。家族と連絡を取ったり、自治体の情報を得たり、災害時にもスマホは欠かせないものになっていますが、日頃から肌身離さず持っているものがちゃんと使える状態にあるということに安心された人が多かったかもしれません。小さいようでとても大きな支援だと思います。