お寺の防災はどうあるべき?|北海道法城寺 舛田那由他さん×黒田真吾さんインタビュー<後編>
お寺の防災で大切なものとは
(画像提供:舛田さん)
――つまり、お寺の防災においては人とのつながりが一番大切ということでしょうか?
舛田:そうだと思います。防災は人間関係が一番大事で、それこそが「受援力」に繋がっていきます。耐震工事や保険の加入といったハード面の対策も重要ですが、一定の費用がかかるので門信徒の方々との合意が必要です。
今回、合意がスムーズに行われたのも、被災地支援の活動やその報告会等を通して、人のつながりや地震防災への理解が醸成されていたからかもしれません。その意味で、お寺を防災・減災の拠点にするためには住職の日々の過ごし方が問われてくるのだと思います。
黒田:特に備えについては、どうしてもハード面の話をしがちです。防災に一生懸命取り組むあまり、本来大切なものを見失ってしまう経験を私自身もしたことがありますし、合意形成の難しさに悩んでいる方が周りにとても多いので、舛田さんのお話が染み入ってきます。
余談ですが、新潟県中越地震で被災した小千谷(おぢや)市で、互いに挨拶を交わすことこそ究極の防災だよと子どもたちに教える方がいらっしゃったのを思い出しました。何かあったときに「いつも挨拶してくれるあの子(あの人)は大丈夫だろうか?」と、自然と思い合えるんだそうです。
舛田:子どもたちへの挨拶が防災に繋がる、というのは新たな視点でした。私はこのようにして、いろんな集まりで北海道胆振東部地震の被災者として啓発活動を行っていますが、今後はそういった身近で大切なこともお伝えできればと思います。
(画像提供:舛田さん)
――人のつながりを生み出すために、お寺はどういった活動を行えば良いと思いますか?
舛田:お寺がいかに「ハブ」になれるかが鍵になってくると思っています。ハブというのは、地域のつながりの中心にいるということですね。お寺が地域のいろんな人と連絡がとれる状態にしておくことで、安否確認や支援物資の供給をスムーズに行うことができます。
現代は人が繋がりにくい時代と言われていますが、だからこそお寺が知恵と工夫で繋がりを促進していく必要があります。法城寺では「コーヒーセミナー」や「お寺カフェ」のほか、さまざまな催しを行っていますが、それらは人のつながりを醸成することを目的の一つとしています。今後も、門信徒に限らず、いろんな人が日頃から集まって交流できる場所であることを意識して活動を続けられればと思います。
――ありがとうございました。
まとめ
鐘楼堂再建後の法城寺(画像提供:舛田さん)
今回は、法城寺の舛田さんに北海道胆振東部地震のご経験をお話いただき、それを踏まえて黒田さんと共にお寺の防災のあり方について考えました。
耐震工事や保険の加入といった、より踏み込んだハード面の対策を行うことで、より災害に強いお寺が実現するものの、丁寧な合意形成が必要であり、それは日頃から血の通ったコミュニケーションの賜物だということを学びました。
お寺がハブになることで、有事の際の安否確認がスムーズに行える他、支援物資の供給も行いやすくなります。お寺で行われる催しは防災の側面でも意義を見出していけるのではないでしょうか。舛田さん、黒田さん、ありがとうございました。
参考資料
(*1):新潟県中越地震から18年 4つの教訓をいまに伝える(NHK 明日をまもるナビ)
https://www.nhk.or.jp/ashitanavi/article/10027.html
(*2):一時滞在施設スマートフォン等充電環境整備補助事業(東京都防災ホームページ)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kitaku_portal/1000048/1006430/1008480/index.html