【まちづくりレポ】そもそもなんでまちづくりをするの?1から考え、まちをつくる。
日本唯一の淡水湖に浮かぶ有人島「沖島」。
人口減少・少子高齢化が進む滋賀県・沖島において、まちづくりが進んでいます。
沖島では3年程前から、まちづくり会議が行われています。
他力本願.net、むらまち課では、定期的に「お寺」と「1000年続くまちづくり」をキーワードにまちづくりを進めています。お寺という昔から、長く、その土地に存在してきた場所やコミュニティを生かし、お寺の伽藍のように、そして仏教の教えのように永く、心豊かに暮らせるまちづくりを目指しています。
今回のまちづくり会議では、「そもそも話の会」と称して、
そもそも、まちづくりってなに……?
そもそも、豊かさってなに……?
そもそも、どうやってするの……?
といったテーマで、より良いまちづくりへの第一歩となる会議を沖島の願證寺で開催しました。
お寺の坊守さん・冨田さん・小川さんは島の外から沖島へ嫁いできて、今年で20周年。
当時から沖島の未来を考えていたが、外から来た身として、当時はなかなか意見が言えない雰囲気があったようです。
しかし、今は沖島に恩返ししたい、何かしたいという気持ちがとても強く、「自分たちで自分たちの未来をつくっていく」という決意を持っています。
沖島女性
「私たちの世代ははざまの世代で上からの意見と、下からの意見を聞く立場だったので、沖島が一つになるのは難しいと感じていました。今も、みんなが一つになるように……と、日々葛藤しています。」
願證寺・坊守さん
「お寺の力を上手く使っていくことができるんじゃないかな。お寺も島民も同じだけど、お寺は少し雰囲気が違うので、島民が普段言いにくいことが、素直に言える場所になると思います。外部の方がたくさん来ていただいて打ち合わせをするのは、初めての試みなので、今日は沢山の意見を聞けたらいいなと思います。」
そして、島民と、島の外部の人々が一緒になって、沖島のまちづくりの話し合いが始まりました―――
整形外科の先生
「私はヨットが好きなんですが、前はヨットの沖島レースがあったんですよ。今は、沖島には船を止める場所が少なくて、止めにくいですね。漁船が多いので。ヨットを止める場所があれば、ヨット仲間が沢山島に来ることができますよ。」
滋賀県立大学生であり、移住者の久保瑞久さん
「私は滋賀県の大学に通いながら、市が移住者用にリフォームした島の家に住んでいます。沖島と学生のこれからを考えてみると、離島振興の方向性が決まっていなくて、長く若者が入れる仕組みが作れたらいいなと思っています。
沖島に若い人がいる状況、その土台づくりを何としてでも作りたいと思っています。」
滋賀銀行からの参加者:しがバブという滋賀県でSDGsを考える企画をされている
「銀行に地域を盛り上げるような『しがハブ』という企画が生まれました。私がその部署担当で、沖島についても一緒に考えていきたいです。今回で2回目の来島です。外部の立場としても、沖島でお金が回っていく仕組みを作っていきたいです。」
―――二宮尊徳のまちづくりに学ぶ!―――
菱川さん
「それでは今日は、まず私から、二宮尊徳さんの話をしようかなと思います。偉い人の話を100%信じきるのではなくて、まちづくりに関して何か引っかかることがあれば良いなと思います」
二宮尊徳は書物をたくさん読んでいるイメージがありますが、
書を捨てよ!読むな!と言ったそうです。
とことん現場主義で、600以上のまちづくりを成功させました。ほぼ自給自足の村を作って、まちづくりを成り立たせたようです。
二宮尊徳さんの学びとして、教科書には載っていないこのような言葉があります。
「宜きほどに従い、宜きほどに逆らう。」
現場主義で悟ったことは、自然は人に善も悪も与えるということです。
自然は“ほどほどに”と定義したそうです。
自然を手入れすることによって、住みやすくなる……里山と同じですね。」
沖島女性
「松茸山もそうですよ。昔は松茸が5〜6キロ取れたねぇ。」
菱川さん
「山に誰かが手入れをしていたから、取れたのだと思います。
持続可能な開発とはそういうものですね。」
沖島女性
「今は掃除ができていないわ。山の主がいはらへん。掃除しないとあかんねぇ。」
菱川さん
「山を区切って、焼いたり、手入れをすると、生物の多様性が増えたという研究が今されているんですよ。」
島外から参加の女性:笹尾さん
「あ!昔、お父さんにワラビ採りに行かんかって言われたことがありました。その時は公園で遊びたかったから、いやいやに行っていたけど、
「山火事があったとこやから、ワラビがよう生える」
って言われたことを、今思い出しました。
菱川さん
「実は、焼畑すると酸性とアルカリ性が中和されて、野菜も作りやすくなるんです。昔はそんなことは知らなかったけど、よくやっていましたよね。」
―――今日は皆さん話が弾んでいるようです。以前は打ち合わせで皆さんがいらしても、話さないことが多くありました。特に、沖島の女性の方々がとても盛り上がって話を交わしていました―――
―――“働く”=“豊かになる”? ? ? ―――
菱川さん
「人間は働かないと豊かになれないと、よく言われます。沖島の皆さんも昔はよく学校に行かないで働いていました。高校も行かせてもらえず、働いていました。でも、それはそれで楽しそうだったんです。働くことで町が発展していきました。
もう一つ、逆説的にいうと、働いていても楽しそうじゃない現代社会のシステムは歪んでいるように思われます。
高齢者になると、働くことがないように思われますが、90歳近いおじいちゃんが石臼挽きながら、豆の選別を楽しそうにしてくれることだってあります。
仕事が沖島にないから、出ていった人たちがいます。本当は仕事があるんですけど……。
こういう思想がもっと広がれば、もっと良いまちづくりができるはずです。
つまり、自然に任せたままではないということです。
自分で動いていると、これで良いんだと気づいていくんです。」
願証寺・坊守さん
「沖島の漁師さんたちが山の位置から、風の名前を決めていました。自然を熟知して自然と付き合いながら、自然とほどほど付き合っていました。」
―――水車 対 原発―――
菱川さん
「水車 対 原発 という話があります。
水車は川の流れに従っています。その流れの力を利用し、逆らって回転します。半分従って、半分逆らっているんです。
だけど、原発は完全に自然に逆らっていますよね。
昔の船大工の人は、沈むことを考えて船を作っていたそうです。
つまり、機械に全て任せっきりじゃない、ということです。私たちの生活は、コンクリートだけじゃ幸せになれないんです。
今話しましたように、皆さんが二宮尊徳のようになれば、まちづくりは出来ると思います。」
願証寺・坊守さん
「何も難しいことではなくて、昔からしてもらっていることをするんですね。例えば、料理とかも昔から、自分の家庭のためだけでなくて、島のみんなのためにも作ってくれていたりしました」
島民女性
「島の人は自分の損得を考えずに、食べて食べて!って感じで、みんなのことを思って作る心を持っていますね。」
願証寺・坊守さん
「この前も、大根炊いてんけど、ぎょうさんやからもらってくれるかー?と言ってくれましたよ。難しいことやないけど、そんなことなんかなぁ。」
菱川さん
「人間関係の経済力。おすそ分けの経済力。醤油が切れた時に、スーパー行って買わなくても隣の人に借りたら儲かったことになるんです。」
沖島女性
「“夫婦船”で出て行ったら、お互いが支えていく。大量に取れるように。そういう関係性が何年後まで続くのか……。
漁をしてくれはる人は、漁の仕事を引っ張っていってほしいです。それが後継者の使命だと思うんです。自分たちの孫たちが島から出て行ってしまって、野暮なお願いだとは思いますけど、それが一番の願いです。」
―――現代に生きる知恵で、自給自足の生活を可能に!―――
Uターン男性
「今の沖島には、お金を使わないと得られないような喜びとか、趣味とかしかないですよね。お金を使わず、人との関わりがもっと増えたら、島の生活は楽しくなると思います。そういう生活に自然が関わってくるんじゃないですかね。」
沖島女性
「漁をしてくれはったら、お金もかからない生活ができますよ、自給自足で。」
菱川さん
「七夕のイベントの時にも、「自給自足の生活ができたら」と言っている人がいましたよね。」
沖島での七夕イベントの記事
【まちづくりレポ】まちづくりへの第一歩。300人の島で進むべき道を探す(前半)
【まちづくりレポ】相反することも大切な意見。まちづくりの本質に気がついていく(後半)
沖島女性
「あぜ豆なんかは勝手に生えてくるねぇ。肥料も薬もいらんよ。」
菱川さん
「自家採種ですね。最近は、醸造味噌というものを作っているのは手前味噌(自家製の味噌)しかないんですよ。会社で作っている味噌は薬で発酵させて作っているんです。沖島で味噌屋さん始めてみるのも手の一つですね。」
沖島女性
「お茶っぱで作る方法もあったね。島のおばあさんがやっていたけど、忘れてしまったなぁ。」
富田さん
「えぇ〜!やってみようかなぁ。教えて欲しい……。」
――沖島の皆さんが、作物の作り方の話でワイワイと盛り上がってきました――
菱川さん
「小さいプロジェクトをコツコツと進めていくのがいいと思います。」
島外から参加の女性:笹尾さん
「今日沖島に来て良かったー!普段なら、家にいてお酒を飲んでいるだけなんですけど、そんなことをするより、ここで色々話を聞けて良かったです!」
沖島女性
「昔は藁でご飯炊いていたねぇ。お嫁に来た時は藁でお米を炊く方法を習わなあかんかったんです。私らは朝早くに起きて、水を汲んで……。朝は女の仕事でしたよ。お風呂の水も汲んでいました。朝学校行くまでに、5回は水汲みを頑張らなあかんかったです。」
菱川さん
「昔に戻れっていうわけではなくて、自然な感じで身についていくのが良いですね。現代の中でも自然に身につけないといけないことが沢山あります。そのためには、自分との関係や相手との関係を見直すことから始めるんです。そうすると、町が「なんとかなる」っていう明るい雰囲気になっていきますね。」
願証寺・坊守さん
「皆さん方を講師として来ていただいて、沖島で味噌作りとかをしていきましょう。」
菱川さん
「みなさんと一緒に山を登るだけで、いろんなことが起こるんじゃないかなぁ?」
沖島女性
「今の時期くらいの夏は紫色の桃がありますよ。あとは栗ね。自然に生えているんですよ。でも、一年中、イノシシが野菜を全部荒らしていくんです。」
菱川さん
「「夜通し語る会」っていうのを、キャンプファイヤーしながらやったこともありますよ。
キャンプファイヤーを何回かすると、イノシシもそのうち来なくなるんです。」
島外から参加の女性:笹尾さん
「こういう勉強が学校でもやっていたら、もっと楽しかったのになぁ。このおせんべいも、ほんまに美味しい!」
島外の女性
「そういえば、“もんて”ってどういう意味なんですか?」
願証寺・坊守さん
「「戻って来てー」という方言なんですけど、私たちはもっと大きな意味で、「遊びに来てー」っていう意味で使っていますね。」
島外から参加の女性:笹尾さん
「えぇー。めっちゃいいですね!方言ってとても素敵です。」
―――話が盛り上がってきたところで、そもそも話の会も終わりの時間になりました――
願証寺・坊守さん
「今日は有意義な話ができましたね。それでは、今日来てくださった方から会費を有り難くいただき、地域通貨の“もんて”をお渡ししたいと思っています。。会費で余ったお金は、こういう集まりの会や、沖島のまちづくりのために使わせてもらいます」
〈関連情報〉
もんて(海なし県の離島、沖島ファンクラブ)
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