【まちづくりレポ】相反することも大切な意見。まちづくりの本質に気がついていく(後半)

 

図1

 

滋賀県近江八幡市でも最も少子高齢化が進む沖島でのまちづくりの様子をお伝えします。

他の地域でもまちづくりを長年されており、275研究所の所長でもある菱川貞義さんをコーディネートの元に、「沖島七夕イベント〜七夕短冊に願いをこめて〜」をテーマに、沖島の住民の方、すでに沖島を離れてしまった方、これから沖島を盛り上げたいと思う学生、新聞記者など約50名の参加者が集まり、トークセッションが7月7日の七夕の日にお寺で開催されました。この記事では、そんな当日の様子の後半をお届けします。

 

【まちづくりレポ】まちづくりへの第一歩。300人の島で進むべき道を探す(前半

 

 

 

——相反する意見も出てました!どちらも沖島にとっては欠かせない

 

「外の方の意見で、沖島がレトロ、懐かしい、と良い意見が多くて嬉しい気持ちもあるんですが、島民としては干上がっていく水たまりにいる魚の気持ちです。水がなくなって、どうしていいかわからないーー!ともがいている感じです。干上がった水溜りから大きな湖に行きたい!自分たちのできることを少しずつ変えていきたい」

 

 

「沖島の魅力をお客さんに聞いてみると、遠くからみる沖島の風景、100メートルという生活の通路。しかし、写真に撮ると、綺麗というわけではないですね。それと、島には花がないと思います。桜の時はあるけど。

例えば案としてですが、漁業の網が置いてあるところ、右側のところに花が咲いてもいいなぁと、写真映えします。この話も外の者だから言えることかもしれませんね。綺麗な写真を取れるような場所だと皆さん喜ばれますね。

言いにくいことなんですが、多少不便があっても、沖島ってこんなに素晴しいんだ、と思えるような、写真スポットを作って欲しいですね。

 

そして、沖島の一番大切なことは琵琶湖。ここ数年ずっと、琵琶湖の水質はよくなっていないですね。これは沖島に限ったことではなく、琵琶湖全体が悪くなっていますね。琵琶湖は深くなっていて、生きています。福井県の方に向かって大きくなっているようです。

生きてる人間が、生きてる琵琶湖を、生きてる人間のために、と思いっています。沖島は沖島として琵琶湖を大事にして欲しい。それが一番求められていると思います。橋をかけるとかいう意見もありますが……」

 

沖島にボランティアに来られる方はこんな風にお話くださいました。

フォトスポットの導入の視点は、instagram、twitterなどSNS発信を考慮する上では確かに、特に重要となってくるポイントでもあると思いました。

 

 

 

 

 

IMG_0742「外の方から綺麗な島にしてほしいという意見もありましたね。私が感じているのは、この島はすでに美しい島だと。お花は飲み終えた後のペットボトルにペッ!と刺してある。それが沖島の花なんです。花畑みたいに整備はされてませんけどね。それを、観光客の人にどうやって伝えていいかわからないとも悩んでいます。『暮らしの島』をぼんやりと感じながら来て欲しい。それが沖島の魅力と思います。

 

だからこそ、人が魅力的、私が魅力に感じたのは、島の景色というよりも、人の魅力ですかね。だから、『生活する島』そこをわかって欲しいとも思っています。

特に島民の人が今日のこのお寺の本堂に来てくださった。島民の人が主役なんだと思って欲しい。暗い話も多いですが、明るいことがある。もっと自信を持って欲しい。いつも私をいろんな人が守ってくれる、いろんな人がいろんな意見をぶつけ合って、良い島にして欲しい。それがどうしても言いたかったんです!」と涙ながらに、沖島への想いを語る久保さんの話に本堂に集まった皆様から拍手が湧きあがり、本堂の熱気が上がったように思えました。

それほどに、久保さんがこの沖島で感じた優しさや温かさは、写真にはおさまりきらないような熱い想いがあったように思います。

 

 

 

IMG_0722コーディネーターの菱川さんは、こんなお話をしてくださいました。

 

「相反するものがありますね。けど、お互いがそこそこ満足できるものを探すことも大切です。そうすると、上田先生がおっしゃるようなものができるのではないかと思います。(上田先生は“ブジネス”という面白いことを考えておられました)

 

実は僕は5年、東京に住んでいました。その時はお金が100%で、お金への依存が高かったですね。例えば、日頃の防犯は警備サービスに契約しておかないと……となるんですけど、大雨や自然災害の時にはセコムは役に立たないんですね。

それに東京は、お金は儲かるけど仕事が仕事ではない。『はた(傍)を楽にする』働くではない。

 

 

もしも東京で働いていて、今僕が倒れて、仕事しなくなっても、誰も困らない。虚無的だと思いませんか?

それに、東京でアンケートを取ると、東京に住んでいるような人は沖島のようなゆったりとしたところに暮らしたいと思っているんです」

 

 

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——では、若い方の思いはどうでしょうか??

 

沖島を外から手助けする学生さんたちはこんなことを思っていたようです。

 

「島民の244名だけでは、新たなことに挑戦し続けていくのは難しいこともある。そういった点で、学生を使っていただけたらと思う」

 

「僕は建築を勉強している。漁業会館の横に休憩所を設計しようと思っている。今年の夏を目標に作ろうと思っているので楽しみにしていてください」

 

沖島に住む方のお孫さんもいらしていました。「沖島にかかわれることがあれば、と思い。今から関わっていきたい。今から4年、島のためにできることがあれば関わっていきたい」

「授業で沖島の話を聞いて、一度友達も連れてきて、とても喜んでいた。魅力をもっと伝えたい」

 

 

まだまだ、トークセッションの熱はおさまりません!他の島民の方やボランティアの方も意見を続々と出されていきます!

 

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——漁業・琵琶湖の環境・沖島の整備について

 

沖島の水道整備に関わる一企業、HIYOSHIの梶田さんはこんなことを考えておられました。

「『漁師さんの笑顔がずっと続きますように』という短冊を見かけました。先ほど、漁業関係者の数が減っていると話を聞きました。昔は2千人くらいいたと聞きましたが、3年前には千人を切っているようです。このままだと、琵琶湖が琵琶湖でなくなる気がしています。というのも、外来種を漁師さんがとってくれているが、このままいくと漁師はいなくなる。そうなると、琵琶湖を整備する人がいなくなってします。資源の琵琶湖から、全く何もならない琵琶湖となる。

 この島に住みたいとも思っているので、島の中で仕事を作って欲しいんです。動いてくれた人が稼げる形がいいですね。島の環境を整えるための沖島基金が作れないかとも思います。医療であるとか、建物の修理に使えないかなぁと思っている。もちろん、島の人の意向を中心にやっていきたいです」

 

 

また島民の方からはこんな面白いアイディアも!

「突拍子もないけれど、太陽光発電とかを使って、電気の無料化をしているところもあると聞きました。

昭和の初期なら、自給自足の生活だった。そういうことを考えると、電気を自分でおこしたりすることができるのでは?近江八幡市や国のモデルになるような、自分たちの暮らしを自分たちでできるような暮らしを目指したい。お金のいらん生活ができたら、なんぼでも人が寄ってくるのでは?と島民の茶谷さんは言われました。

 

高齢化が進む島での老人ホームの必要性……

「沖島の人から数年前に老人のグループホームを作って欲しいと声が上がり、役所に相談に行ったら、グループホームの空きがたくさんあるから、島内ではなく、こちらに来てください。と言われました。市の職員さんの考えはそういうところになってしまう。沖島にその時に作っていたら、雇用もできたんじゃないのか??と思ってしまうんですよね」

 

「実は家族で旅行に行きたいけれど、おばあちゃんがいるから行けないって話があったように、中島さんが言われるように空き家を使って預かるような仕組みがあれば……と思います」

 

 

コーディネーターの菱川さん

「そうですね。福祉も自給自足にすることがいりますね。自給自足を達成しながら、余力で外貨を稼ぐ。難しい難しいと言いながら、小さなことからしていくと実現可能な気がします」

 

 

島民の奥村さん

「真剣に『自給の島』っていうのがテーマだと思った。漁、福祉、生ゴミ、いのししの問題を解決することと、複合施設の建設も視野に入れながら、みんなの声を届けて欲しい」

 

 

 

漁師の西居さんは、漁業の切実な課題の解決を根本からどうにかされたいように思いました。

 

「漁業の後継者がない、これが一番の問題。昭和30年代は琵琶湖が狭いと思うくらい、漁業をする人がいたんです。今は探さないといけないくらい、いない。今後、琵琶湖産の魚が供給できなくなる。町から後継者として来てくれるかもしれないけど、すぐに稼ぎにならない。

漁業はすぐにできるものではない。何年か修行を積んでいかないとできない。そういう中で後継者がいない。沖島の人口が減っていく。経済的に生活出来る基盤がなかったら入れませんよね。

 

漁業が出来る経済、生活基盤ができるようなものが必要、観光や建物が必要、と言われるけど、箱物ばっかりを作っていてもあかん!何かいい知恵がないかと、最大の心配事でもあり、期待をしているところである

 

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近江八幡に住まわれていた方はこんなご意見も

「昔は港のところでシジミがいっぱい取れた。沖島の漁師が量が減ったと言われますが、対岸の近江八幡や琵琶湖ぐるりの地域のところにも影響があると思います。琵琶湖は滋賀県のもの。他の地域とも連携していく必要があると思います。今は瀬田川の出る出口は汚いですね。沖島だけでなくて、みんなで考えてく問題だなぁと思いました。琵琶湖の水が大事。それを崩さずに、まちづくりをしていかないといけない」

 

 

 

 

——まちづくりに欠かせない存在!「よそ者」だからこその大切な視点!

 

「移住者としてきました。漁師さんのお話で漁師さんがいなくなると琵琶湖の水質が守れない。今後何年間かで琵琶湖の水で生活できない、と聞いています。

 

実はこの3月から来て、コミュニティーセンターの前の公園にスズメバチの巣があって、怖かったんです。なので、トラップを仕掛けて、たくさん蜂を取りました。その結果何が起きたかというと……蜂がいなくなって安心と思っていたんですが、その後から、桜の木がまっ茶色になったんです。なぜかというと、毛虫が増えたんです。実は毛虫を食べてきてくれていたスズメバチを私が取っちゃったんです。そのあと、みんなが毛虫を退治するために殺虫剤を撒く文化/習慣ができてしまった。

 

島民になったといえども、よそ者の私が一人入ったことで、島の文化が変わってしまう。それは本当に申し訳ないことだ。よその人はどうしてもそうした小さなことや、知らないルールが沢山あるので、そのことを島の人がとめてくださったり、話してくださればと思います。内の人から声を上げてきて欲しいです。それが出るといいなぁと思います。中の人と外の人の知恵が合わさることが大切に思っています」と、話してくださったのは地域おこし協力隊やまかどさんでした。

 

 

島民の奥村さんがこんな意見もくださいました

「後ろでずっときかせていただいたんですけど、島を継続させていこうという思いがあります。生活基盤と経済を動かしていかんといかんですね。漁師をやっておられる方の生のご意見を吸い上げて、それをどう解決していくかをやっていきたい」

 

菱川さんはそれを受けて、

「行動指針の2つ目にもある。笑顔の漁師を増やしたい。これを底辺にしながら、雇用のことなどを考えていきたいと思います。それ以外の今日のお話はまちづくりの基礎になるかと思います」

 

 

熱い議論が続き、様々な意見が出る中、第2部が終了しました!

お寺での第2部が終わっても、飾られた短冊を見たり、個人個人が意見をまだまだ交換したり、熱が冷めやらぬ中の会の終わりとなりました。第3部は、コミュニティーセンターでの懇親会!仕事の都合で1、2部に来られなかった方も、参加されました!

今まで、意見交換会ができなかったこともあり、いろんな立場の方が意見が言えた貴重な時間ではなかったでしょうか?

 

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最後に菱川さんはこんなことも……

「僕は多くのまちづくりを見てきました。まちづくりの成功例として、特産品に頼って、外貨を稼ぎ、雇用をつくる、という手法があります。成功しているところもあるけど、田舎らしいコミュニティーや田舎らしさはズタスタになっている場合が多いですね。

一方で、世界には100%自給している村や離島もあります。100%自給、80%自給、50%自給とそこそこ頼るのがいいんじゃないでしょうか。どれが沖島にあっているかは皆さんと見つけていきたいですね。

今日は特に、漁師の方が生き生きと話されていたように思いました

 

 

菱川さんは、以前より「沖島憲章」というものを、住民の方と作っていきたいと話しておられました。

昨年より、実施した島民の方へのインタビューを元に、案の段階ですが、沖島憲章としてまとめてくださいました。願證寺の坊守さんが言われるように、今まではどこに向かっているのかもわからないまま、がむしゃらに沖島のことを考え、まちづくりに取り組まれてきました。「沖島憲章」のように、一人ひとりが目指す目標を持っていると、まちづくりや施設の建設、雇用のことなど、何を最優先にしていけば良いか、わかる気がします。

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世界・日本各地で様々なまちづくりが行われていると思います。

あなたの町は、将来どんな町にしたいでしょうか?

この町に住む子どもたちに何を残していくのでしょうか?

様々な角度から、いろんな立場の人から意見を聞いて、大切なものを見つけながら、そしてその大切なものを見失わないように一つ一つの村・町・各地方のまちづくりが進んで行ってほしいな、と本イベントに参加して感じました。

 

 

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掲載日: 2018.08.10

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