「殺処分ゼロ」は課題の通過点。動物福祉活動を通して見えてきた現実とは|Pawer.代表 大西さんへインタビュー

一念寺で定期的に開催されている保護動物の譲渡会「いぬとねこ」。かわいい猫ちゃんたちに囲まれながらも、改めて日本における犬や猫の殺処分の現状を思い知らされるイベントでした。
イベントレポートに引き続き、後編記事ではイベントの主催者である動物福祉団体 Pawer. 代表 大西結衣(おおにし ゆい)さんにインタビューを行いました。
 
この取り組みを始められたきっかけや背景、気づきとは?
そして、動物福祉活動を通して見えてきた犬や猫を取り巻く現実とは?
 

インタビューに応じる大西結衣さん

 
ーーPawer.さんを立ち上げられたきっかけはどういうものでしょうか?
 
大西 結衣さん(以下、大西):留学時代、アメリカの犬の収容施設でボランティアをしていました。
その時に、国外から日本の状況を見て、日本ではまだまだ動物やいのちに対する意識が低いと感じたのがきっかけです。
こんなにボランティアさんも多くて、意識も高いアメリカですら殺処分が起こっている。では日本はどうなんだろう?と。
アメリカに比べると、日本は犬や猫自体の数が少ないので、殺処分数も少なく感じるかもしれません。でも現実は日本人の多くが殺処分などの現状に対して「見たくない」し「知りたくない」と思っているんです。そして知らないがゆえに、犬や猫を迎えるとき、見慣れたペットショップへ行くという選択肢が一番に出て来るのではないかと思うんです。
私たちが生きる社会の見えないところで、行き場を失い殺処分される犬や猫たちの現状を、まずは知ってもらいたい。そして、いのちを大切にしてくれる人を育てたいと思って始めました。殺処分を減らすことは、目的ではなく通過点だと思っています。
 
ーー 一念寺さんや谷治住職とはどういったご縁なのでしょうか?
 
大西:私の親友が一念寺さんの近くにある念珠店の息子で、活動の一環でこういうイベントをしたいと相談した時に、一念寺の谷治住職を紹介してもらいました。その後、企画のご相談にあがったら「じゃあやってみようか」となりまして。
最初は譲渡会ではなく、犬や猫の写真展として始めました。保護というとどうしても偏ってしまうと思ったので、より幅広く、動物に興味のある方がふらっと来て下さって、「実は保護動物なのか」ということを知って欲しいと思いました。
 
ーーお寺で行う保護動物の譲渡会、大西さんはどういった部分に良さを感じられましたか?
 
大西:やっぱり、私たち日本人にとってお寺は文化の一つで、安心感というか、すごく居心地が良い場所なのではないかと思います。会議室で行われる譲渡会と違って、靴を脱いで畳の上に座って、落ち着いた空間で犬や猫に会えるのは、お寺で譲渡会を行う良さですよね。
 

ーー譲渡会を含めて、Pawer.さんのご活動の中で印象に残ったことはありますか?
 
大西:活動の中で救えなかった犬や猫たちがとても心残りです。私は活動の一環で、保健所もよく取材しました。そこでは、犬や猫たちが殺処分されるんですよね。
明日殺処分されてしまう犬や猫たちを前に、やるせなさを感じました。「救えなくてごめんね」と何度も謝りましたね。
譲渡会では、実際に殺処分された犬や猫たちの写真も展示していますが、写真を撮って、生きていた証を伝えていくことが、私が出来るせめてもの活動なんじゃないかと思っています。
 
ーー改めて、殺処分の現実をもっとひろく伝えていく必要性を感じました。
 
大西:そうですね。ただ、暗い話ばかりではないんです。これも活動の一環で、学校や子供食堂などで幼稚園児から大学生を対象に「いのちの授業」を開催しているのですが、授業の後、保護犬や猫に興味を持ち、自分で動物愛護センターへ見学に行ったり、獣医師やセンター職員になりたいと言って調べて自由研究で発表したり……、大学生に至っては英語も話せない状態で、海外のアニマルシェルターへボランティア活動をしに行った学生さんもいました。
 
1000人に1人でも芽が出れば嬉しい、そんな想いで種植え(活動)をしていましたが、思わぬところでぐんぐん成長したり、花が咲いたり。そんな「一人の人」の中で意識が変わる瞬間を見た時は、とても嬉しく、誇らしく思いましたね。
 
保護動物の話になると、つい殺処分など暗い現状を話してしまいがちですが、嬉しいことや明るいこともあるという事も、読者の方に伝われば幸いです。
 
ーー最後に、読者の方へメッセージを頂ければと思います!
 
大西:これから新たに犬や猫を迎えられる方もいらっしゃると思います。そんなときに、迎える手段はたくさんあって、ペットショップだけではないとお伝えしたいです。
ペットショップで犬や猫を迎える事が絶対ダメだとは言いません。ただ、買う前に、その子犬や子猫たちがどんな環境で生産されやってきたのかをまず知ってください。そして行き場を失い、新しい家族を必要とする保護動物は、全国にたくさんいます。その子達を迎えることで、殺処分される不幸な命も減らせます。どんな子でも、飼うと決めたら、最期まで責任を持っていっしょに過ごしてほしいです。
 

 

<編集後記>

 
平成30年度における犬と猫の殺処分数は、犬が7,687頭、猫が30,757頭でした。(環境省webサイト「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」より)
今日もまた、かけがえのない いのち が失われています。残酷な現実を知るだけでなく、具体的にどんな行動が出来るのかを、改めて考えなければならないように感じます。
 
最後に「保護動物の譲渡会は、今は一念寺さんだけで行っていますが、将来は数か所でさせていただいて、どこかが活動が出来なくなっても他の場所で継続できるようにしたいと思っています」と今後の展望を語る大西さん。行き場を失う犬や猫の数がゼロになる日まで、そしてすべての人がいのちを大切に出来る日が来るまで、その挑戦は終わりません。
 
もし、お寺でペットの譲渡会を始めようとお考えの方は、こちらの記事も併せてご覧ください。
 

減らせ殺処分 お寺でペット譲渡会の取り組み |一念寺(京都市)②(お寺でできる100のこと)

掲載日: 2020.11.24