介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、成年後見について|おおさか法務事務所①

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父親が亡くなり、残された母親は認知症で判断能力が低下している。
そんな時、残された人たちはお金や財産の管理など、どうしていけばいいのでしょうか?
 
また、残された人たちは、介護への不安もありますが、お金のことで揉めたくはない、どこかそんな気持ちもあるのではないでしょうか?
 
今回は、身元引受人の不在や、認知症の方の財産管理など、介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、「後見サポート」という事業を展開されている、司法書士法人おおさか法務事務所の坂西涼さんにお話を伺いました。
 
 
おおさか法務事務所は、昭和58年に創設され、現在は、個人から企業、NPO法人まで様々な、依頼を受け、遺言書/遺産相続等の手続きや企業法務の事業、成年後見制度を活用した「後見サポート」という事業をされています。
 
成年後見制度とは、「認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分ではない方を保護するための制度」として、2000年より始まりました。
そこで、「成年後見人」と呼ばれる方が、判断能力が十分でない方のサポートとして、その方の代わりに手続きを行います。
 
なんとなく、名称は聞いたことあるけれど、いまいちどんなものかわからない。そんな方も多いのではないでしょうか?
全4回の1回目は、成年後見制度が成立した社会の様子を伺いながら、日本の福祉や家族のあり方についてお話を聞いてみましょう。
 
※(参考)裁判所ウェブサイトより、http://www.courts.go.jp/saiban/qa_kazi/qa_kazi53/index.html
 
 
成年後見制度とは。「お金は一体誰のもの?」


 
 
ーー法務事務所さんということで、企業法務や遺産などお金に関することをお仕事とされているかと思うのですが、「後見サポート」ではどんなことをされているのですか?
 
坂西さん(以下、「坂西」):後見サポートは、簡単にいいますと、介護や医療の現場で出てくるお悩みを専門家と話しながら、主に「成年後見人」を使って対応していくような仕事です。
成年後見人は適正な財産管理をご本人のかわりにきっちりと行います。
 
 
ーー2000年からということですが、比較的新しい制度なのですね。成年後見制度について詳しく教えてください。
 
坂西:私たちは、介護・医療の現場の方にセミナーなども実施しているのですが、その時にこんなクイズを出します。
「子どもであれば両親のお金を、当人がいなくても銀行から引き出せると思いますか?」
どうでしょうか?
 
 
ーー印鑑とか、証明とかあればご本人がいなくても引き出せる⋯⋯?
 
坂西:実はそれは違います。結構な割合で、「引き出せる」と思っておられる方がいらっしゃいます。勿論、暗証番号や通帳があれば別ですが。
 
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子どもや妻/夫であれば親または夫婦のお金を、本人がいなくても、なんとか引き出してもらえるんじゃないかっていう感覚が多くの方にあるんですね。
 
例えば、本人が脳梗塞で倒れ、銀行に行くことができず、字も書けない場合。本人の妻である証明として、戸籍謄本や、家族全員が了承している、合意書みたいなものを作り、銀行に持って行く。家族であれば銀行もなんとか対応してくるだろうと多くの方が思われていますが、実はそうじゃなくなってきています。
 
本人確認と意思確認が、外部的な要因から求められるようになってきています。その事実をセミナーの最初にお伝えすると、驚かれる方も多くいらっしゃいます。
 
 
成年後見制度は、介護保険と同時に2000年の4月から始まりましたが、お金に関することや施設への入居等の契約について、一人ひとりが「契約」の当事者になるんだってことを認識してもらって、制度が始まっていきます。
 
 
ーーお金のことだけじゃなくて、施設への入居にも成年後見制度は関わってくるのですか?
 
坂西:介護保険制度が整う2000年以前は、社会福祉に関する制度や個人のお金の取り扱いなども今ほどきちんと決められておらず、また厳しくもなかったので、施設側が通帳やお金を預かっていたこともあったようです。
 
預かっていると、家族の方から、「家の修繕が必要なんで100万円ちょっと出しくれないかな?」とか「経済的に困ってるから、お金払ってくれないかな?」といった相談が施設に来ちゃうんですよね。
預金には何百万、何千万円と貯まっていたりもするので、本人が「うん」と言ってくれる方であれば、了承していたんです。でも、認知症になるとその判断能力・理解することができなくなってきて、施設側が悩むような事例も増えていました。
 
 
ーー認知能力が低下してること自体を、判断するのも難しいですよね。
 
坂西:特別養護老人ホームなどへ入居される方は、日常の簡単な会話はできても、お金についての判断は難しい状況です。なので、施設が家庭内のお金の問題に巻き込まれることもありました。
 
今まで、通帳を預かる施設は沢山あったと思いますが、やはり2000年が1つの分岐点でしたね。
しっかりと法的に権限のある者がお金の管理をして、施設は介護のサービスを提供するという棲み分けをする。本来の形にしていかないとダメだという介護業界の認識が、介護保険制度が始まった2000年から出始めました。
 
 
ーー2000年が分岐点ですか⋯⋯。
 
 
「措置から契約へ」


 
坂西:介護保険制度が始まった時に、「措置から契約へ」という標語がありました。
介護保険制度が整う2000年以前は、「措置」として、行政が身寄りのない方や一人暮らしで認知症で困ってらっしゃる方に積極的に関わって、施設に入所してもらっていました。
行政が、地域に困っている方がいらっしゃることを把握して、その方の行末を行政で、ある程度の道筋を立てて、この方にはこういう生活をしてもらいましょう、というような感じです。
 
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ーー行政の方はそういう人をどうやって見つけられていたのですか?
 
坂西:民生委員さんや、地域の方、警察の情報提供ですかね。
今でこそ「認知症」と言われ、世間的に一つの症状として捉えられるようになりましたが、当時は「ボケ」といった言葉でくくられていました。他にも「徘徊」と言われることや、「ゴミ屋敷」と呼ばれることもありました。
 
そういう情報が行政に入ると、行政の方がご本人のところに行かれてお話を聞いていました。そして、お話を聞いてご本人が自宅では生活できない、と判断されれば、「措置」として施設に入所してもらっていました。半強制的に入ってもらうケースもあったみたいですね。
 
ただ、全て行政的な対応をすると、マンパワーの限界を迎えてしまうということで、2000年の介護保険を皮切りに、「措置」ではなく「契約」として、ご本人が介護の契約を全て自分でしてもらうことになりました。
自分の必要なものを自分で判断する。こんな介護を自宅で受けたいとか、どの施設に入りたいかを判断してもらい、そこに適正な対価を払ってもらう。
 
 
そこから、ご自身で介護サービスを契約していくんですが、認知症になってしまった方は契約ができないじゃないかっていう考えになるんですね。
そこを補完したり、社会保障の給付のあり方が大きく転換した中で、成年後見制度ができてきました。
 
 
ーー施設に入る時に、認知能力が落ちた人は、基本的には後見人をつけてくれ、という話なんですね。
 
坂西:施設の入所に関してはまだまだそこまで厳密ではないです。
 
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ただお金、特に金融機関に関しては、かなりシビアになってきています。認知症になると、金融機関や不動産では、本当にその方が、認知症なのか、みきわめを求められるケースが増えてきていますね。
 
 
ーー施設に入る際は「後見人をつけてください」とそこまで強く求められたりはしないということでしょうか?
 
坂西:そうですね。もしその方にご家族がいれば、本人が認知症であっても「後見人をつけてください」ということまではあまり言われないです。
 
ただ、子どものいない方や兄弟はいるけど疎遠で、ご本人に認知症が出ているのであれば、成年後見人がいないと施設では受け入れられないといったこともあり⋯⋯。本当にいろんなケースがあります。
 
成年後見人の仕事を始めて気がついたこと。子どもがいない人たちが抱える不安。


 
坂西:おおさか法務事務所の成年後見に関する仕事は、最初は介護業界が中心でした。
高齢になると認知症の方は多くなります。そういう方と接点を多く持っておられるのは介護の方達、ケアマネージャーと言われる方です。その方たちは、高齢者のお金のトラブルをいち早くキャッチされます。
 
 
ケアマネージャーはその方の介護(被介護者)のケアプランを作る中で、ヘルパーさんから細かな情報が来るんですね。「督促状がよく届くんです」、「いかがわしい人が来て、私たちはあんまり口出しできないけど、変な契約書にサインをしてるんです」、「お金の管理がギリギリ出来ているかどうかの段階です」とか。
 
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いろんな困りごとが見えてくる中で、僕らに相談が来てお金の管理等のお手伝いをさせていただきます。あとは、本人に必要な、様々な契約を代わりに締結していきます。
 
そういった方達と関わるなかで、気がついたのですが、大正・昭和の一桁台のお生まれの方でも、子どもさんがいない方が多いんですね。
昭和30年代、40年代のお生まれの方は、子どもさんがいない方も多いという認識はあったんですけど。
 
お子さんがいない方たちが80歳、90歳になったり、認知症になった時に、困られていることが沢山あります。これだけ親子関係が希薄になったと言われている中でも、やっぱり子どもさんが親御さんのセーフティーネットになっている事例は、まだまだたくさんあります。
 
10年以上、僕らはそういった介護の業界からくるニーズを受け止めて活動をしてきたということで、今150人くらいの認知症の方の支援をさせていただいています。そのうちの、7割くらいは子どもさんがいない方ですね。
 
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その方々が高齢になり、認知症になったり、介護が必要になったりして、だんだんと自分のお金を管理ができず、支払いが滞るとか、行政の手続きが自分で申請できないとか、そうしたことで、子どものいない方を中心に高齢者の方の中に不安が広がっているようです。
 
成年後見制度の成り立ちや背景について、教えていただきました。高齢者、特にお子さんがいない方を中心に不安が広がっている現状があるようです。
お金のことに関しては、誰にでも相談できる内容ではないかと思います。そんな時、近くにしっかりと説明してくださる方がいれば、事前にお金や施設への入居に関して、トラブルなくスムーズに手続きをしていけるように思いました。
 
 
次回は、成年後見人の役割や死後事務委任と呼ばれる、死後の事務について詳しくお話をうかがいます!「亡くなった後のことをどうしていますか?死後事務委任を考える|おおさか法務事務所②」
 
 
司法書士法人おおさか法務事務所「後見サポート」についてはこちら、https://olao.jp/support/
 
 

<司法書士法人おおさか法務事務所インタビュー>

①介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、成年後見について
②亡くなった後のことをどうしていますか?死後事務を考える後見人
③後見人ってこんな仕事!お金のトラブルを回避
④法律の専門家が考えるお寺の役割。心の不安を減らす安心の拠り所とは?

掲載日: 2020.03.12