法律の専門家が考えるお寺の役割 心の不安を減らす安心の拠り所とは|おおさか法務事務所④

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最終回は、法律の専門家として後見サポートを通して高齢者やそのご家族と関われると機会が多い、おおさか法務事務所の坂西さん、呉さんにお寺や僧侶の役割についてお伺いしました。
 
<司法書士法人おおさか法務事務所インタビュー>
①介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、成年後見について
②亡くなった後のことをどうしていますか?死後事務を考える後見人
③後見人ってこんな仕事!お金のトラブルを回避
④法律の専門家が考えるお寺の役割。心の不安を減らす安心の拠り所とは?(当記事)
 
ーー今回、後見サポートについてお聞きして、実際にお金や相続のことで困っていらっしゃる方がどういう状況なのかが少しみえてきたような気がします。
 
坂西さん(以下、坂西):お金の管理のこともそうですが、元気な方だと延命措置のことまで聞きます。命に関わることですので、非常に悩むことも多かったですね。
それに、成年後見人は、お金の使い方一つをとっても、やはり法律的な知識が必要ですね。
 
ーー延命措置は、確かに命の問題ですね。単純にお金の扱いとは違うお話もされるような気がします。
 
坂西:何かこう⋯⋯感覚なんですが、信仰することの良さって「拠り所」ができるってことなのかなぁって思ってるんですね。
高齢者で、鬱を患う方が増えてきてるのは、やっぱり何かしら拠り所がないからではないかと思っています。
 
認知症って、不安とか孤独によってある程度加速することがあると聞いたことがあります。
会話の数に応じて、認知症になりやすいという研究もあるようですね。
 
 
私たちもお話をしますが、お客様も心が通って契約してくださって、頼りにしてくださいます。それでも、死後事務委任や葬儀のお話を説得力をもってお話できないというジレンマがあります。大切だからと思っているからこそ余計にね⋯⋯。それも個人的な想いなので、押しつけになってもいやですし。
 
僧侶の方がそういったことを話してくださるのと、僕たちが命や死に関わる心の話をするのとはやっぱり違うと思います。
 
ーーそうですね。葬儀社さんや墓石店さんとか、真剣に死について考えておられる業者さんに、よくそれを言われますね。(「現代の僧侶に求めるものとは|せいざん株式会社インタビュー⑤」
 
そこに僧侶側が答えていけたらいいのですが⋯⋯。
 
坂西:僧侶ってどうしても、お金の話とかはしづらいと思うんですよね。そこは、僕たちのような業種が専門なので、そこを話すことはできます。
 
ーーお話の内容によってお互いにバトンを渡し合えたらいいですよね。
 
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坂西:僕はやっぱりモノの本質があって、その次に気持ち、その次に手段だと思っています。もし、成年後見人が、お客様のお話を聞いて合わなかったら進めないですし、「あなたには家族との繋がりがあるんじゃないですか?」という風にお伝えするケースもあります。そこがないと、僕たちはお金をもらって良かったとしても、その方が後悔することもありますからね。
 
ーーなるほど。家族とのつながりですか。本当ですね。大切なことの根っこは手続きじゃないですよね。反対に独居の方はどんなことを思っていらっしゃるのでしょうか?
 
坂西:独居の方で、自分の財産を家族に残したくないという方が多いんですね。面倒を見てもらわず、自分だけで生きてきた分、そのお金だけを親族に残してもなぁ⋯⋯っていう気持ちがあるみたいです。そのお金を社会的に使って欲しいとか。当然信仰心の強い方だと本山に寄付されたりとか、菩提寺の方に寄付をされる遺言書を作られるお客様も多いですね。
 
ーーそうなんですね。お寺に寄付してくださるケースも!
 
坂西:そういうお話は出てきますね。あるいは、その方には縁はなくとも社会的に有名な、「あしなが育英会」とか「赤十字」「ユニセフ」への寄付になってきたりします。
ご縁があれば、お寺さんや神社さんなど関わりのあるところが選択肢になってきたりするんですよね。
 
ーーそういう面ではお寺が選択肢に入るような、関係づくりを日々大切にしないとダメですね。最近では、地域包括ケアシステムというものが広まっていますが、僧侶やお寺がその輪に入れていない現状もあります。
 
社会に求められていることは分かっているとは思うのですが、どうやってそこへ入っていけばいいのかが見えていないかもしれません。
 
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呉さん(以下、「呉」):お元気な間にしか考えたり、話したりと、検討できないので、そういったうちからいろんな話を僧侶がされる月参りとかでしていただけるといいですよね。
 
ーーなるほど。月参りですか。
お話を聞かせていただいていて、法律に関することとか誰にでも相談できるようなことではないと思うので、門徒さんたちに知ってもらうのはいいなぁと思いました。
自分で法務事務所に電話して、実際に行くのは少しハードルが高い気もしていて。
 
呉:お元気な間にご家族が一緒にこられるような場で、僧侶と法律の専門家でそういった講義やセミナーのような形でコラボさせていただくような機会もあればいいですね。
 
葛藤する後見人の姿
 
ーー理想の後見人ってどういうものでしょうか?
 
坂西:事務所としてはそうありたいっていうのは、認知症になって、ご本人が自分のことさえもわからなくなっても、その方の根っこでは、何を考え、どんな希望があるか?を聞き、その思いに近づけられる。そういう後見人がそばにいることでしょうか。
一緒に考える、探すといいますか⋯⋯。
 
こちらの生産性だけ考えれば、一律的な取り扱いが楽なことも正直いうと、あります。スタッフも事務所もそこがジレンマなんですね。
生産性と効率性をどこまで上げていくのかということと、本人との時間をどれだけ共有できるかという、この相反するテーマ。そこを諦めない後見人が一番良い後見人じゃないかと思いますね。
 
そこを追い求めながら、ライフスタイルも考えも、変化することに対して常に柔軟で、その方にあった、生活を支えられるっていうのが一番の後見人のあり方かなぁっていう。
だから、その人との最初の面談の時に、自分の価値観を押し付けないっていう気持ちでのぞんで、その方がどんな人生を歩んでいて、それこそ宗教に対する考えを強くおっしゃる方もいて、それに同意するわけでも反対するわけでもなく、ありのままを聞いて、それに対してお役に立てるかどうかを考えるっていう。
 
その人「ありき」で、関われる後見人が一番いいかなぁと思います。自分たちが正しいと思ってることを押し付けたりしないように、スタッフにはよくそれを言ってますね。
 
ーー葛藤⋯⋯。僧侶も一緒ですね。何かに葛藤しなくなったら終わりでしょうね。
 
:本当に司法書士の中では、いい意味で、坂西さんは変わり者だと思います(笑)!
 
ーー変わり者なんですね(笑)そういうタイミングがあったのですか?それとも昔から?
 
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坂西:最初の家族関係からですね。実は僕、母方の祖父母と養子縁組を組んでいました。なので小さい時は、おじいちゃん子でした。だから、祖父とのつながりは強かったですね。
そういう意味では、小さい時から、社会的に「高齢者」と言われる人に育てられてきたとも言えますね。
 
そして、大学で法律を学んだ時に、これから高齢者が増える中で介護プラスα「何か僕でもできることがあるんじゃないか?」介護以外で出来る社会貢献じゃないですけども、そう思っていました。
 
今は、核家族で、おじいちゃんおばあちゃんと同居していない場合も多いので、認知症の高齢者の方と接するって機会が、あまりない方が増えてきている。そうなると、高齢者とどう話したらいいかわからないという方もいます。僕の同期の司法書士でも、そういう感覚の人間って多いんですよね。若くはないですが⋯⋯。(笑)
 
専門家の中でも、あえて対応が難しい認知症の方に、後見人として関わりたい!って人は少ないです。お金になりにくいっていうイメージもあったりするとは思いますが。
それに、時間も土日関係なく、24時間体制的な感覚ではあるので、そういう仕事の仕方はやっぱりやりたくないっていう方も多いのでしょうね。実際に興味はあっても、行動に移している人は少ないです。
 
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ーー仕事としてだけでなく、生き方も坂西さんにマッチしている感じがします。
 
坂西:感覚としては在宅医みたいな感じと思っています。自宅で医療をされてる、看取りをされている先生とまではいかないですけど、それに近い感覚ですね。
 
ーー疲れたりはしないんですか?
 
坂西:10年前、この事業を始めた時は1人でやっていたので、始めは大変でした。けど、そこは組織化して、想いを共通にするスタッフができたのは大きいですね。おおさか法務事務所自体も僕が入って、後見業務を始めましたが、なかなか全体的な理解はなかったです。けど、今は7名も同じ思いでやってくれるスタッフがいると、悲しいことや辛いことがあっても分散できるので、シェアっていうのは大事だなと思いますね。
 
ーー悲しいことっていうのは?
 
坂西:突然ご自宅で亡くなられてるとか⋯⋯。どれだけヘルパーさんが見守っていても、夜間に倒れられ、そのまま息を引き取られていたとか。
病院とか施設で亡くなっていかれるのは、元気な姿を知ってる分、辛い思いをすることもあります。けど、僕らの役割はその後の死後事務ってところまできっちりとやらないといけない。
プロとしての気構えはありますね。それをスタッフと共有しながらしています。1人ではできません。
 
仕事の中で見出す希望
 
ーーやっててよかったなぁってことはありますか?
 
坂西:すごく口の悪いおじいさんが、「前は言い過ぎたなごめん」と言ってくださる時があります。その言葉は、僕たちが居てくれないと困る存在として認めてくれてるから出たんだと思います。そんなやりとりがあると、スタッフも気分良く事務所に帰ってきますね。
 
あんまり、「ありがとう」と言われる仕事ではないんですよね。認知症になってしまうとお礼を言われない方も多くなります。きっとヘルパーさんも同じ感覚を持っておられると思います。
 
ーー病気が良くならない上に、お礼も言ってもらえない。その中で希望をどこに見出すかですよね⋯⋯。
 
坂西:ちょっとしたことで、「よかったわ~」とか「これで安心やわ」とか言われたり。「前より安心」って言葉が出てくると、モチベーションになりますね。
 
ーー関係性が紡がれていくと、コミュニケーションの取り方も変わりますよね。そういった意味では、1年目の方とかどうされてるのでしょうか?
 
坂西:全く後見の業務をしたことのない人が、どうやって仕事のやりがいを見つけていくか、というのは、タイミングが大事だなぁって思ってますよね。
 
後見サポートでは、40代のスタッフが中心なので、ある程度社会的な経験を積んで、あとは家族関係でも親の介護をしているとか、早くに親を看取ってる者が多いです。一度、人間的に悲しい思いをしている方が向いてるのかなぁと思いますね。
 
ーー悲しい思いをしてきている方ですか⋯⋯。
 
坂西:なかなか僕みたいな考えで仕事してるのもいないでしょうね(笑)
なので、「育成」も僕の課題なんです。
今、契約している方が亡くなられるのが30年後だったりするので、そうなると僕が60代、今のように迅速に駆けつけたりすることができなくなります。この仕事は、体力が必要とされる仕事です。
 
僕はこの仕事を始めてから、携帯電話が枕元から離せなくなりましたね。病院や施設からいつ電話がかかってくるかもわからないので。年に数回ですが、夜中の3時や4時にかかってくることもあります。
かかった時に出て、車で駆けつけることもありますし、葬儀会社に連絡して、ご遺体を引き取りにいく手配を夜中にしたり。意志だけではダメで、こちらも健康でないと、お客様が不安になられます。その意味では、自分自身の健康も大事です。
 
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ーーそういった面でのバックアップ体制はいかがでしょうか?
 
坂西:担当は一応、決まってはいますが、僕以外にも必ずその方とスタッフとの面通しのようなことをしています。一人だけの担当じゃないようにしています。けど、メインの担当が決まっていないと、利用してくださる方も不安になりますので、そこは両方を担保できるように、メインの担当は決めていますね。
 
ーー訪問介護をされてる方もおっしゃってますね。スタッフの入れ替わりについて⋯⋯。
 
坂西:そうなんですよね。スタッフを入れ替わり立ち替わりしてもいいんですけど、高齢者の方から、「人が変わるから覚えられへん」とか「30分とかで帰るから話もできん!」ってよく言われますね。
 
後見人は話を聞くプロでもある。
 
ーーでも時間は決まってますもんね⋯⋯。そういう時どうされてますか?たくさん話されるときとか?
 
坂西:そうですね。1つ言えることは、長い時間、話を聞いたからといって、良いというわけではないと思います。細かいコミュニケーションの積み重ねなのかぁって思います。
 
1回の時間の長さよりも、細かくても大事な話を1時間ぐらい濃密にやることの方が、本人さんの安定には繋がるかなぁとちょっとずつ見えてきています。決まった頻度でお会いするとか、電話するのはそれが本人にとっては安心につながるのかなぁと。
 
脳科学的にも、時間の長さよりも、どれだけの頻度で顔を合わせてるかのほうが重要だといわれているようです。
 
ーー後見人は話を聞くプロでもありそうですね。
 
坂西:テクニック的なところもありますね。声をかけるときは必ず、視界に入ってからお名前を呼ぶとか。姿も見えないのに、いきなり声をかけられるとびっくりされるんですよ。
 
必ず目線は同じところに、相手がベッドにいたら膝をついて喋るとか話すスピードもゆっくり、低い声の方がお年寄りは聞こえやすいので、なるべく低い声を出すようにしたりとか。そういった面では、介護の方達からコミュニケーションのレクチャーをしてほしいみたいなことも増えてきましたね。
 
安心、信頼を得るにはそういうところがありますね。ちょっとしたことですけど。
 
ーー認知症に関わる介護士さんも同じようなことを以前、言われていました。聞いてしまえば、なるほど!と思うのですが、教えてもらうまでわからないことですね。コミュニケーションって。「【イベントレポ仏教×認知症】 あなたの可能性を広げる認知症の捉え方を。(前半)」
 
坂西さん、呉さん、ありがとうございました。
成年後見制度の成り立ちや詳しい業務内容、最後にはコミュ二ケーションのあり方、仏教界へのエールもいただきました。
 
司法書士法人おおさか法務事務所「後見サポート」についてはこちら、https://olao.jp/support/
 
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<インタビューを終えて>
おおさか法務事務所の坂西さん、呉さんのインタビューを通して、僧侶として「いのち」について共に考え、門徒さんや関わる方と一緒に話をして、コミュニケーションを密にとっていく必要性を感じました。
また、坂西さんも言われていたように、僧侶がお金の話をするのは避けられることもありますが、そういったことを専門家の方と一緒に協働しながら、これからの寺院のあり方をさらに模索していければと思いました。
 
今回のように法律に関する専門的なことが必要なケースも、超高齢化といわれる日本社会では増えてくるでしょう。そんな時、僧侶だけで動くのではなく、専門家とタッグを組んでいけるよう、それぞれの僧侶・寺院がアンテナを張り続けていくことが必要かもしれません。
 
超高齢社会と言われる中で、「死」に関する様々な企業が近年増えてきているように思います。その中で、本当に「死」を見つめ、大事なところを置き去りにしていない企業・人・団体はどれくらいあるのでしょうか?
坂西さんが、一人ひとりの豊かさを追求する後見人として、また利益も確保しなければならない組織人として「葛藤」を持ち続けられている姿が心に残りました。
資本主義という、お金中心の社会の中で、僧侶が伝えていかねばならないこと、またそれをどう伝えていくのかを考えさせられるインタビューとなりました。
 
司法書士法人おおさか法務事務所さんの全インタビュー記事はこちら!
<司法書士法人おおさか法務事務所インタビュー>
①介護・医療現場で起こる悩みにこたえていく、成年後見について
②亡くなった後のことをどうしていますか?死後事務を考える後見人
③後見人ってこんな仕事!お金のトラブルを回避
④法律の専門家が考えるお寺の役割。心の不安を減らす安心の拠り所とは?(当記事)
 
掲載日: 2020.03.23