葬儀の現場で。「知らない人」が損しないために|せいざん株式会社インタビュー①
確かなことなどない世の中で、「いつか死ぬ」ということは変わることのない確かな事実だ。一方、葬儀をとりまく状況は変わり続けている。変化のなかで立ちすくんでしまう人もいる。
急に訪れた大切な人の死に、押し寄せる雑事と数多くの選択肢。
葬儀がひと段落した後に、
「これで良かったのだろうか」
「もっとちゃんと送ってあげられたらよかったのに」
そんな後味の悪さを誰にも抱えてほしくない、
情報が少ないばかりに損をする人がいてはいけない、
死へ向かう人に安心して日々を過ごしてほしい。
そう願う人々が立ち上げた会社・せいざん株式会社。
今回は、事務所を東京都内の寺院内に構える「明るくあたたかな納骨堂 納骨堂青山霊廟」の方々にお話を伺う。

・葬儀の現場で。「知らない人」が損しないために|せいざん株式会社インタビュー①
・葬儀に関する相談で多いものは、〇〇です|せいざん株式会社インタビュー②
・ひとりで老病死を抱える人に、どう寄り添うのか|せいざん株式会社インタビュー③
・宗教者だからできること、宗教者じゃないからできること|せいざん株式会社インタビュー④
・僧侶に求めるものとは?|せいざん株式会社インタビュー⑤(最終)
せいざん株式会社のはじまり。
知らない人が損をする葬儀業界
ーーお2人の事業は、いつからどんな風に始まったんですか?
池邊さん(以下、池邊):もともとは2003年に当社の母体であるアクトインディ株式会社という会社の創立から始まりました。そして、2011年よりせいざん株式会社設立をしています。
代表の下元敬道は当時まだ26歳でしたが、「世に生を得るは事を成すにあり」というのがモットーで、生まれたからには「次世代にとって価値のあることをしたい」と考えているような青年でした。
彼はインターネットで集客する、今ではインターネットマーケティングと言われるような分野に長けておりまして、その能力を生かして「知らないことで損をしている人に、情報を伝達することで、人生がより良い方向へいくよう手助けしたい」と思うようになったそうです。
いろんな業界をみていくなかで、一番腹が立ったというか、変えなければいけないと思ったのが葬儀業界だったそうです。
ーーそれはなぜだったんでしょう?
池邊:まずひとつは、葬儀社さんのなかには悪意をもって、不必要に高単価な葬儀を成立させている会社があったことです。ご家族への説明責任を果たさずに。
当時の葬儀代金の内訳ってほとんどわからないじゃないですか。たとえば請求書が200万円だとして、それが高いのか安いのかもわからない、という状況なわけです。言い方は悪いですけど、葬儀社さんの言いなりですよね。
ご家族を亡くされて、悲しいであるとか混乱しているとか、平常心ではないときに「どうしますか」「こうしますか」っていう話をして、気がついたらウン百万っていうのは、本当に相手の心に寄り添っているのかなって。
ーーそこで下元さんはどうされたんですか?
池邊:葬儀を依頼する側の方々に、例えば火葬費がいくらで、花や祭壇がいくらで、っていう感覚があるとずいぶん違うのではないかってことで、まずはインターネットで葬儀費用の内訳などを情報開示するようにしました。
ーーご自分たちで調べて、ということですよね?
池邊:もちろんです。当時下元はお金もなかったですから、バイク1台で東京都内中の葬儀社さんをご紹介していただいたりとか、周ったりとかして信用できる葬儀社さんを選んでいきました。葬儀の現場にも行って、きちんと確認もしました。
葬儀社を選ぶ条件① 「自分の母親の葬儀を任せてもいい」と思えるか
池邊:下元は、葬儀社を周るなかで自分なりにたくさんのチェック項目を作っていました。そのなかでも大切にしていた軸は、「自分の母親の葬儀を任せてもいい」と思えるかどうかということでした。
ーーご自身のお母さんの葬儀を任せても良いと思えるような葬儀社を。
池邊:はい。あくまで「喪主だったらここに依頼したいかどうか」が基準です。
葬儀社を選ぶ条件② 高いか安いかではなく、思いに寄り添う設計になっているかどうか
ーー不本意に高単価な葬儀になってしまうことへの疑問をさきほど話していただきましたが、値段についてはどういう基準を持っていらっしゃるのでしょう?
池邊:料金の内訳は明確に出していただいて、わかりにくいところはむしろこちらから「こういう風に書いていただけるとご家族もわかりやすいと思いますよ」というお話もします。例えば車両費という項目のお金は、お迎えの車代なのか、出棺のときの車代なのか、とか。
ーーしっかりと価格内訳なんかを明示する意思のある会社なのかどうか、ということですか?
池邊:そうですね。私たちは葬儀社さんを選ぶとき、単に高いか安いかで決めることはないんです。高いところだと、なぜ高いのかを伺うと、「ドライアイスに布を一枚一枚巻いているんです」と。
だから通常よりも高いけど、お身体を痛めないように必ず毎回布を巻くという理由があるんです。
そこまで確認させていただけたら、私たちの方でもきちんと説明できますから。こういった配慮のある葬儀社さんを希望されるご家族ももちろんいらっしゃいますし。できるだけ上質なものを、って。
なので、高いか安いかではなく、きちんとご家族のことを考えた設計になっているかどうか、という点を見ています。
良い葬儀社に共通すること
池邊:結果的にですが、契約を結ばせていただくことになった葬儀社さんは、大手葬儀社さんで経験を積まれてご自分で独立されたところや、昔から自分の家が葬儀社であったというところが多かったです。
大手を経て独立された方はやっぱり経験値が高いですし、独立するほどの思いがあるっていうことですよね。お家が葬儀社だったていう方も、両親の代から地域で愛されてきたからか、人に寄り添う気持ちをお持ちの方が多かったですよね。
ーーなるほど。人の思いに寄り添えているか、ということがそのあたりにも出てくるんでしょうね。
池邊:はい。やっぱりうちと相性が良いのはそういう会社さんでしたね。
利用者と葬儀社のマッチングサービス
池邊:葬儀の立会いなども経て、ここなら任せられると思った葬儀社さんと契約をかわしまして、利用者さんからはインターネットで相談を受けて、その方に合った葬儀社さんを紹介するという、いわば仲人業のような感じでスタートしました。
ーーインターネットやお電話などで問い合わせがあって、ご相談にのるということですね?
池邊:はい。お電話を受けて、いろんなご事情とか背景とか希望をお伺いするなかで「〇〇さんのおっしゃるご要望でしたら、△△葬儀社さんが一番良いと思いますよ」と。
ーーヒアリングはどういった内容なんですか? たとえば「お父さんが亡くなって、お父さんはこんな人あんな人、自分の経済力がこのくらいで、こんなことをしてあげたい」といったようなことをお聞きするということですか?
池邊:そうですね。そのときにうちのユニークなところは、葬儀社さんだけではなく担当者さんまでご紹介するところでしょうか。
「ヤマダ葬儀社のヤマダタロウさんっていう担当者がいます」と。それでその人のお人柄まで共有するんです。「ヤマダタロウさんはすごく丁寧な方です。丁寧だけど少し融通がきかないところがあるんですけど、そこはもう何かあったらご本人に言っていただいても大丈夫な方ですから」と。
ーーそこまでお伝えするんですね!
池邊:そこまで言います。そうすると「おっしゃっていた通り、すごく丁寧で良い人だったけど、すごく確認も多かったですわ」とかね。
そのあたりも、良い風に捉えてくださるかどうかっていうのはね、本当に人によりますから、そこも様子をみながらご紹介をしています。
葬儀において担当者との相性がなぜ大切か
ーー葬儀社というのは担当者さんによって、雰囲気や内容が変わってくるものなんですか?
池邊:そうですね。私も実際に葬儀現場の立会いや、相談員をやっていたんですけど、すごく思ったのは、冠婚葬祭とはいうけれど結婚式と葬儀の圧倒的な違いって、事前にどれだけ段取りを組めるかどうかってことなんですよ。
結婚式だったら6月のいついつに、どの式場で、何人集まって、って全部段取り組めるじゃないですか。
ーーそうですね。
池邊:でも葬儀はどんなに事前にいろんなことを決めておいても、亡くなる日時というのは選べないわけですから、そのときの火葬場や式場の状況ってコントロールできないんですよ。
ーーある程度の想定はできても、やはり葬儀によって状況や事情は違うから、完全にマニュアル化ができないですよね。
池邊:そのときに葬儀社さんや担当者さんがどれだけご家族のことを考えて、精一杯やってくださるかっていうのでかなり変わってきてしまうんです。
たとえば火葬場が取れない、式場が確保できない、ってなったときにどうするかというのはご家族にご相談するしかないですよね。そのときに、きちんとご家族の思いをくんであげられる人か、ご家族も言いたいことが言える関係性かどうか、ってことがすごく大事なんです。
なので、契約済みの葬儀社さんでも、新しい担当の方が入ったら、その方の担当する葬儀をまずは見にいって、確認させていただいてからご紹介するかどうかを決めます。
ーーそれはすごく丁寧ですね。ご家族も喜ばれるのではないでしょうか?
池邊:喜んでくださいますね。私にも経験がありますけど、わざわざ北海道のおじいさんがお手紙をくださって「池邊さんに相談して本当によかった」って言ってくださいました。
その方は生活保護を受けておられる方で、どこに電話しても断れ続けるなかで私たちのところにご連絡をくださいまして。いろんな制度とかをご紹介しながら、一緒に段取りして、葬儀をあげることができたんです。
他には、まだ若い喪主さんで、右も左もわからないのにお母さまが急に孤独死をされて、「どうしよう」というお電話もありました。急なことで、混乱されていますから、状況をひとつひとつ整理させていただいて、対応していきました。
また、入院されていて長く患っておられて、あまり長くない……といった事前に覚悟ができるような場合であっても、ヒアリングを重ねます。ご提案もいくつかさせていただいて、ご希望に合う葬儀社さんを選んでいただいています。
時間があれば担当者さんと面談していただいて、私たちも同席したりします。
ーーそれだけ親身になって紹介してもらえると、安心ですよね。連絡は基本的にインターネットで見た、という経緯ですか?
池邊:そうですね。圧倒的にインターネットです。
ーーということは、SEO対策(検索したときに、検索結果の上位に自分のページがくるように工夫をして、多くの人の目に触れてもらうこと)もされていたんですよね。あの時代だとまだ走りですよね。
池邊:そうです。下元が長けていたからできたことですね。
ーーめずらしい業態だったでしょうね。
池邊:そうですね。当時は非常に珍しかったので、日経スペシャル ガイアの夜明け(テレビ東京系)とかにも取り上げていただきました。
こういった質の高さにこだわっていると、オペレーションセンターを委託するということもできなくて、相談はすべて正社員とか直雇用の人間で対応させていただきました。途中で、関西ではやってないのかというお問い合わせが増えてきたこともあって2005年に大阪支社を立ち上げました。
ーー
葬儀の契約で悔しい思い、理不尽な思いをする人がいないように、という思いから始まった事業は、一人ひとりの気持ちに寄り添うことで成長してきました。インターネットを架け橋にしたことで、より多くの人の助けとなることができたのではないでしょうか。
次回は、現在どういった葬儀が求められているのか、お伺いします。
「葬儀に関する相談で多いものは、〇〇です|せいざん株式会社インタビュー②」
・葬儀の現場で。「知らない人」が損しないために|せいざん株式会社インタビュー①
・葬儀に関する相談で多いものは、〇〇です|せいざん株式会社インタビュー②
・ひとりで老病死を抱える人に、どう寄り添うのか|せいざん株式会社インタビュー③
・宗教者だからできること、宗教者じゃないからできること|せいざん株式会社インタビュー④
・僧侶に求めるものとは?|せいざん株式会社インタビュー⑤(最終)

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