宗教者だからできること、宗教者じゃないからできること|せいざん株式会社インタビュー④
明確な役割とゆるい関係性
ーーネットやリアルな場でそういった架け橋のような役割を、ずっと果たしてこられたんですね。
池邊:そうですね。ご家族から、「こんなことをご住職に聞いて良いのかわからなくて」と相談されることもあります。
岩田:そうですね、聞きづらいことはまずうちに尋ねてこられるというのはよくあります。その後、ご住職を交えて3人で相談してみましょうという流れに繋げるようにはしていますが。
ーー契約関係にあることで、相談する人と受ける人という役割が明確であることや、相談を重ねて信頼関係が築けているところにも、気軽に尋ねてもらえる要因がありそうですね。それでも、寺院に繋げてくださるのは、ありがたいことだなと思います。
岩田:私たちは宗教者ではないので、大事な部分に関してはやはり私たちが言うよりもご住職に出てきてもらって、「大丈夫ですよ」と言ってもらう方が断然良いです。受け取り方も全然違います。
ーー僧侶のまとう衣の力とか、寺院という空間の力かもしれませんね。
池邊:それもあるかもしれません。死をきっかけに人生を振り返るなかで、みなさんいろんなことを打ち明けてくださいます。それはこの場所だからってこともあるかもしれないですね。
ご本人が理解して落とし込むまではもちろん時間がかかります。でも、やらされた感が残るよりは、きちんと時間をかけて、ご本人の気持ちを優先していかないと、供養も続いていかないですよ。それっきりになってしまいます。長い目で見るのが大切です。
岩田:法要のご連絡もうちからするようにしているんです。そのときも、法要をするかどうかは施主さんの判断なので、というかたちでお伝えしています。
「申し訳ないけど、三回忌はなしにしたいんです」という連絡をいただいたりすると「ご法要はできなくても、故人さまを思い出して、できればお参りだけでもいらしてくださいね」とお伝えすると、「そうですよね、じゃあ七回忌はやりたいです」と言われたりします。
ーーお寺相手だと、一回断ってしまうと、次にお願いしづらいけれど、池邊さんや岩田さんたちになら断りやすいし、また次も頼みやすいという面はあるのかもしれませんね。
池邊:基本、自己選択を促していますので、どちらでもオッケーという関係性は作れていると思います。
編集後記
宗教者だからできること、宗教者じゃないからできること、それぞれを深く考えさせられるインタビューでした。様々な色合い、トーンの関係性を、丁寧に繋ぐことができたら、この世の中で生きる孤独も、少しは和らぐのかもしれません。
次回最終回は、「絶対にしないと決めていること」や、僧侶が果たしてほしい役割について伺いました。
現代の僧侶に求めるものとは|せいざん株式会社インタビュー⑤