日本の伝統文化が海外へ!ポートランドで祇園祭が行われた背景とは?
前回に引き続き、COS KYOTO株式会社代表取締役/文化ビジネスコーディネーター 北林功さんにお話を伺っております。
文化という視点で、お寺の役割の可能性を伺った前回の記事はこちらをご覧ください。
インタビュー記事
第1回の記事はこちら
第2回の記事はこちら
――北林さんが最近サポートされた活動を具体的に教えていただけますか?
北林功さん(以下、北林):最近やった一番大きいことといえば、「ポートランド日本庭園」での京都文化の紹介企画ですね。
アメリカのオレゴン州ポートランドに大きい日本庭園があるんですけど、文化交流の一環としてそこで祇園祭の紹介イベントを開催したのです。
具体的には、「綾傘鉾(あやがさほこ)」の展示、「長刀鉾(なぎなたほこ)」の関係者によるお囃子の披露を実施してもらいました。口で言うのは簡単ですが、 国外で、祇園祭で使われる鉾が国外に出たことは、歴史上初めてでした。
↓ 綾傘鉾展示のようす
綾傘鉾の詳しい説明はこちら
↓ 長刀鉾関係者によるお囃子のようす
長刀鉾の詳しい説明はこちら
――どういった目的で企画されたのでしょうか?
北林:太平洋戦争中、ポートランドに日系人の収容所があったんですよ。戦後、日本とアメリカがもう一度仲良くなろうとした象徴として、その日系人の収容所だったところに公園が作られ、その公園の中に日本庭園が整備されたんですね。
――「ポートランド日本庭園」での企画を進めるにあたって大変だったことはありますか?
北林:いろんなハードルやしがらみがありました。「誰もやったことがないから、そんなことはできるわけがない」という否定の声もやはりありました。もちろんいろんなリスクを懸念して、あらゆる準備はしていました。それでも「何かあったらどうするんですか」と言われ続けて。「じゃあ『何か』って何!?」となって(笑)。
――堂々巡りだったんですね。最終的にはどうされたんですか?
北林:無視しました。
――え!?(笑)
北林:文化財として指定されている部分は既存のレプリカを用いました。また、その他発生しそうな事象について損害保険はかけていましたし、保存会の皆さまにも承認を得て、皆さま前向きに準備をすすめてくださっていました。仮に問題が起きたら僕とポートランド側が責任を取るつもりだったので。つまりそういった反論や否定意見を言ってこられたところには責任はなかったのです。何が言いたいかというと、初めてやることには必ず論理的じゃない反論や否定意見がつきもので、それを越えていかないと何もできないということです。「前例がない」なら前例をつくらないと何も進みません。
さらに、これはある意味、京都生まれ・育ちでもなく、当事者ではない外部からサポートしている立場の弊社だからこそできたことだと思っています。
――どのような環境でもある話ですね。実際ポートランドで祇園祭の紹介等をされた反響はどのようなものでしたか?
北林:非常に反響がありました。こういった展示をポートランドという西海岸の一都市でやったことが現地の人たちにとってものすごい誇りになったみたいで。あと「ポートランド日本庭園」自体が地元住民や企業等の寄付金で運営されており、本当に日本文化が大好きなんですよ。自分たちの誇りを保つために、寄付につなげる文化っていうのはすごいと思います。そういうことをしてきたので、日本文化の象徴とも言えるような「京都」の祇園祭が歴史上初めて自分たちの街に来た!という感動があったのではないでしょうか。
↓ 綾傘鉾展示のようす
――そういったアメリカと日本の友好関係のシンボリックな場所だからこそ、日本文化の象徴的な神事で使う鉾を展示することになったということでしょうか?
北林:その通りです。最初はポートランド日本庭園の代表がそのアイデアを言い出したとき、僕自身やれるかどうか半信半疑だったんですけど、結果的にできちゃいました(笑)。 運がよかったんですよ。この企画よりも数年前に地元地域の神社の神事で知り合った方の中に「綾傘鉾」の関係者がおられ、この企画に携わる人との信頼関係がすぐできたことなど。普段から地元地域の活性化のために仕事以外でも幅広くやっていたことが、こんなことに結びついて役立つとは思っていませんでした。
――つながりが功を奏したんですね。この「ポートランド日本庭園」での企画を成功させ、感じたことはありますか?
北林:この企画だけに限らず、僕の仕事全体に言えることですが、できる範囲でできることをするのではなく、成し遂げるために多種多様な皆さんを共通の目的の実現のために説得することが大事だと思いました。粘り強く各所にお願いしに行った甲斐がありました。また普段から、損得勘定なしに本当に大切なことや地域の未来のために少しずつでも活動していると、そういったところから信頼関係が生まれ、何かに結実していくんだなと。まさに神様の思し召しだと思いました。ご協力してくださった皆さまには感謝しかありません。
――「ポートランド日本庭園」での企画を通して、文化が国同士の交流の要となること、成し遂げるためのポイントなどを伺いました。
さて、次回は最終回。会社と会社、人と人がつながり新しいものが生まれるイベント「DESIGN WEEK KYOTO」のお話、今後お寺と文化がどうかかわっていけるかなどを伺います。
<インタビューのつづきはこちら>
第4回(最終回)「文化の力で楽しい社会に!発信するDESIGN WEEK KYOTO」
文化という視点で、お寺の役割の可能性を伺った前回の記事はこちらをご覧ください。
インタビュー記事
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――北林さんが最近サポートされた活動を具体的に教えていただけますか?
北林功さん(以下、北林):最近やった一番大きいことといえば、「ポートランド日本庭園」での京都文化の紹介企画ですね。
アメリカのオレゴン州ポートランドに大きい日本庭園があるんですけど、文化交流の一環としてそこで祇園祭の紹介イベントを開催したのです。
具体的には、「綾傘鉾(あやがさほこ)」の展示、「長刀鉾(なぎなたほこ)」の関係者によるお囃子の披露を実施してもらいました。口で言うのは簡単ですが、 国外で、祇園祭で使われる鉾が国外に出たことは、歴史上初めてでした。
↓ 綾傘鉾展示のようす
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↓ 長刀鉾関係者によるお囃子のようす
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――どういった目的で企画されたのでしょうか?
北林:太平洋戦争中、ポートランドに日系人の収容所があったんですよ。戦後、日本とアメリカがもう一度仲良くなろうとした象徴として、その日系人の収容所だったところに公園が作られ、その公園の中に日本庭園が整備されたんですね。
――「ポートランド日本庭園」での企画を進めるにあたって大変だったことはありますか?
北林:いろんなハードルやしがらみがありました。「誰もやったことがないから、そんなことはできるわけがない」という否定の声もやはりありました。もちろんいろんなリスクを懸念して、あらゆる準備はしていました。それでも「何かあったらどうするんですか」と言われ続けて。「じゃあ『何か』って何!?」となって(笑)。
――堂々巡りだったんですね。最終的にはどうされたんですか?
北林:無視しました。
――え!?(笑)
北林:文化財として指定されている部分は既存のレプリカを用いました。また、その他発生しそうな事象について損害保険はかけていましたし、保存会の皆さまにも承認を得て、皆さま前向きに準備をすすめてくださっていました。仮に問題が起きたら僕とポートランド側が責任を取るつもりだったので。つまりそういった反論や否定意見を言ってこられたところには責任はなかったのです。何が言いたいかというと、初めてやることには必ず論理的じゃない反論や否定意見がつきもので、それを越えていかないと何もできないということです。「前例がない」なら前例をつくらないと何も進みません。
さらに、これはある意味、京都生まれ・育ちでもなく、当事者ではない外部からサポートしている立場の弊社だからこそできたことだと思っています。
――どのような環境でもある話ですね。実際ポートランドで祇園祭の紹介等をされた反響はどのようなものでしたか?
北林:非常に反響がありました。こういった展示をポートランドという西海岸の一都市でやったことが現地の人たちにとってものすごい誇りになったみたいで。あと「ポートランド日本庭園」自体が地元住民や企業等の寄付金で運営されており、本当に日本文化が大好きなんですよ。自分たちの誇りを保つために、寄付につなげる文化っていうのはすごいと思います。そういうことをしてきたので、日本文化の象徴とも言えるような「京都」の祇園祭が歴史上初めて自分たちの街に来た!という感動があったのではないでしょうか。
↓ 綾傘鉾展示のようす
――そういったアメリカと日本の友好関係のシンボリックな場所だからこそ、日本文化の象徴的な神事で使う鉾を展示することになったということでしょうか?
北林:その通りです。最初はポートランド日本庭園の代表がそのアイデアを言い出したとき、僕自身やれるかどうか半信半疑だったんですけど、結果的にできちゃいました(笑)。 運がよかったんですよ。この企画よりも数年前に地元地域の神社の神事で知り合った方の中に「綾傘鉾」の関係者がおられ、この企画に携わる人との信頼関係がすぐできたことなど。普段から地元地域の活性化のために仕事以外でも幅広くやっていたことが、こんなことに結びついて役立つとは思っていませんでした。
――つながりが功を奏したんですね。この「ポートランド日本庭園」での企画を成功させ、感じたことはありますか?
北林:この企画だけに限らず、僕の仕事全体に言えることですが、できる範囲でできることをするのではなく、成し遂げるために多種多様な皆さんを共通の目的の実現のために説得することが大事だと思いました。粘り強く各所にお願いしに行った甲斐がありました。また普段から、損得勘定なしに本当に大切なことや地域の未来のために少しずつでも活動していると、そういったところから信頼関係が生まれ、何かに結実していくんだなと。まさに神様の思し召しだと思いました。ご協力してくださった皆さまには感謝しかありません。
――「ポートランド日本庭園」での企画を通して、文化が国同士の交流の要となること、成し遂げるためのポイントなどを伺いました。
さて、次回は最終回。会社と会社、人と人がつながり新しいものが生まれるイベント「DESIGN WEEK KYOTO」のお話、今後お寺と文化がどうかかわっていけるかなどを伺います。
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第4回(最終回)「文化の力で楽しい社会に!発信するDESIGN WEEK KYOTO」
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他力本願ネット
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掲載日: 2020.09.02