医療・介護を通して、誰かの人生を変えています。|NPO法人Life is Beautiful<前編>

少しでも「変わった」と思える人生を。Life is Beautifulが大切にしていること

 

(写真提供:Life is Beautiful)

 
ーーLife is Beautifulを立ち上げて、最初はどういった活動をしましたか?
 
山下:まずは団体の基本理念を決めました。
 

Life is Beautifulの基本理念

 
Lifeが「幸せ・豊か」になること
 
Lifeは、命、人生、生活です。
これは、「生活者」の視点であり、疾患や障害にとらわれることなく
よりよく「生きる・居きる・活きる・逝ききる」を考えます。
 
そのために、人とのつながり、そして、キュア・ケアを紡ぐ人とみんなで一緒に考え行動していきます。
関わった人すべて、その先の人の「人生が変わった」と言えるようにします。

 
山下:こちらがLife is Beautifulの基本理念です。一語一句、メンバーと相談しながら決めました。その中でも注目していただきたいのが「逝ききる」という文言でしょうか。
 
ーー「逝ききる」とはどういう意味でしょうか?
 
小林:末期症状の患者に対して、もはや医療や介護は無力なんですよね。その無力さを医療者と患者の双方が良い意味で受け入れなければ緩和医療も成立しないと思っています。だからこそ共に最期までやりきって欲しいので、「逝ききる」という文言を付け加えました。
 
ーー残り少ない人生の中でも精一杯やりきるからこそ、「逝ききる」なのですね。続けて「人生が変わった」とありますが、人生が変わるとはどういうことでしょうか?
 
山下:その人が「良かった」と思うことですね。本当に些細なことで良いんです。例えば「先生と関われて良かった」とか、最近であれば「この前ワクチンのことを教えてもらって参考になった」とか……それも人生の変化ですよね。
 
経営学者のピーター・ドラッカーによると、NPO法人は誰かの人生を変えることが目的なんだそうです。「人生が変わる」って、大ごとのように聞こえますが、誰かと関わっただけでも人生はちゃんと変わるんですよね。もしかすると、僕と関わって悪い方向に変わってしまった人もいるかもしれませんが(笑)。
 
小林:「その先の人の人生が変わった」という一文は理事長のアイデアですね。僕は正直なところ、誰かの人生を変えるなんて、そんな大それたことを……と思っています。
 
ーーどちらもおっしゃる通りですね。誰かと少しでも関わることで人生は確かに変化すると言えますし、小林さんのおっしゃる、「大それた」という気持ちもわかります。
 
山下:この言葉の裏には「健康」という目標があるんです。病気はもう治らないと分かっている中で、いかに健康的な人生に持っていくのか、「死」という未来が変わらないと分かっていても、ちょっとでも良い方向に(=健康な状態に)変えたいという思いを込めています。
 
ーーもう治らないと分っていても、良くなるように努力する。それはすごく大切なことだと思います。苦悩の現実を受け入れるといいますか。ですが、どんどん老いる中で何を希望とするのかという問題は難しいですよね。
 
山下:そうですね。医療が進歩して、これまで助からなかった人が助かるようにはなりました。でも同時に、後遺症に苦しむ方がいるのも事実なんです。そんな状態の患者さんに「死んだほうが良かった」とか「なんで私を助けたの?」って何回も聞かれて、悩みましたね。
 
ーー確かに「なんでこうまでして生きないといけないのか」という問いは本当に難しいですよね。山下さんは、そんな質問に対してどのように答えられたのですか?
 
山下:僕は何も言えず、ただその場にいるのが精一杯です。仮に何か声をかけるにしても「僕はあなたが側に居てほしいと思う」、としか言えないですよね。あくまでも「僕は」という主語でしか話せないです。
 
ーー確かに、「僕はあなたが亡くなると思うと悲しい」という主観でしか言えないですよね。
 
小林:その通りで、客観的になんて言えないですよ。そもそも我々が他人に干渉できるのはせいぜい医療行為までで、「生きる」について意見するのは難しいと思っています。
 
でも、そんな中であっても、その人に何かを施すことで、少しでも生活が「変わったな」って思ってもらえるのなら、それは価値があることではないかと思います。
 

NPO法人Life is Beautiful。前編では、立ち上げのきっかけや、理念について教えていただきました。後編では、Life is Beautifulで行われている活動について、お伺いします。
 
<インタビューの続きを読む>
ゴールは「必要とされなくなること」?|NPO法人Life is Beautiful<後編>

 

   

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掲載日: 2021.11.16

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