「おじいちゃんはヤモリに生まれ変わった」タイの人びとが持つ死生観とは|古山裕基さんインタビュー<後編>
「おじいちゃんはヤモリに生まれ変わった」タイ人の持つ死生観
(写真提供:古山さん)
――タイの方の死生観とは、どんなものなのでしょうか?
古山:これも看護実習で看取りを経験したときの話です。あるおじいちゃんが亡くなった時に、ちょうど部屋の外からヤモリの「トッケー、トッケー、トッケー」っていう鳴き声が聞こえてきたんです。それを聞いた遺族の方が突然、「おじいちゃんはヤモリに生まれ変わったんだ!」と話されたんですね。
当時は仏教のことを知りませんでしたし、生まれ変わりなんて何かの冗談かと思って、最初は気に留めませんでしたが、いろんな看取りの現場を見ていると、みんなそういう風に言われるんですね。タイの方は生まれ変わりがあると本気で信じているんです。
僕の妻はタイ人で、義母が亡くなった時もそうでした。亡くなった義母の足の裏に青いマジックで印を付けていたんです。妻曰く、もし自分たち親族の中で生まれた赤ちゃんの足の裏に青アザがあれば、義母の生まれ変わりなんだそうです。
妻は合理的な考えの持ち主にも関わらず、ある種、非合理とも取れる生まれ変わりを信じていて、疑問に思うと共に興味が湧きました。
タイの方々は生まれ変わりを理屈で信じているわけではないんです。ただただそうであると信じていると言うか、受け入れていると言うか。一方で、僕は生まれ変わることに対してずっと理屈を求めていました。なので、なかなかピンとこなかったのですが、数年前に実母を亡くし、メコン川に散骨した時に気付きました。
お骨と花びらを川に流した時、お骨は川底へと沈み、花びらは流れていきました。ふと、あの花びらもいつか日本に届くのかなと思った時、亡き母と自身の繋がりを感じました。なんとなくですが、「生まれ変わり」の感覚が分かったんです。母が生まれ変わるとともに、自分自身も生まれ変わったのかもしれません。