釈徹宗さんに聞く、日本仏教のこれから|釈徹宗さんインタビュー<後編>
写真提供:釈さん
「個」の時代で浄土真宗を伝えるには
――宗教が情報化、個人化する現代において、浄土真宗はどんなとらえられ方をされているのでしょうか?
釈:浄土真宗は今、一番ウケないタイプの宗教かもしれません。
昨今は、幸せや問題解決のためのメソッドやスキルを持っていたり、身体性が全面に出ていたりするものがウケますが、浄土真宗はそうではないんですよね。先ほども言いましたが、ポッキリ折られて初めてわかる世界です。
しかし、そんな本当にどこにも救いがないような人、あるいは別の道筋からでも浄土真宗を求める人はいつの世にも必ずいます。ウケが悪いからといってやめたり、方向を変えたりするわけにはいきません。時代のニーズに合わせるべきものがある一方で、ニーズがあろうがなかろうが語るべき部分が浄土真宗にはあります。その見極めみたいなものは必要だと思います。
――釈さんが仏教を伝えるときに、大切にしていることはありますか?
釈:仏教や浄土真宗の教えを損なわないように気をつけています。
どうしても「わかりやすく」を求められるんですが、わかりやすくしようとするあまり、仏教が本来説いていることとは違う方向に行ってしまわないように意識していますね。
一方で決められた枠の中でしか語れないのは宗教として成長していかないと思うので、自分自身で真剣に考えたうえで、思い切って仏教や浄土真宗の枠から外れてでも発言するようにしています。そうでないと、生き生きとしたものとして伝わらないのではないかと思います。
――釈さんはテレビなど、マスメディアを通して仏教を伝えられることもありますが、そのときに難しいと思うところはなんでしょうか?
釈:少なくとも不特定多数に発言するときは、さまざまな信仰の人が聞いているかもしれないという意識は持つようにしています。また、宗教に関心がない人にも聞いてもらえる話をするよう心がけていますね。
でもこれは非常に難しいです。うまくいくことはたまにしかありません。だからこそ嬉しい反応があったりすると、頑張って発言してよかったなと思いますよ。
また、社会問題を発言するのも難しいです。感染症や原発、ジェンダーについての発言など、専門ではない領域でもちょっと頑張って僧侶として何かを語ろうと思うんですが、とても難しいです。
それでも頑張って発信を続けていけば、仏教ではどう考えるのか?と聞きに来る人が現れるのではないかと思います。傷つく覚悟を持って、積極的に発言するようにしています。