釈徹宗さんに聞く、日本仏教のこれから|釈徹宗さんインタビュー<後編>

仏教はこれからどうなるのか?

 

写真提供:釈さん

 
――新型コロナウイルス感染症の拡大は、宗教にどのように影響すると思われますか?
 
:僧侶の超宗派化が進むだろうなとは思います。これは実際新型感染症が拡大する前から始まっていた動きですが、昨今加速してきたという見方もできます。葬儀の変化や法事の簡略化も一気に加速しましたよね。そのぶん宗派間の差みたいなものは小さくなるんじゃないかなと思います。
加えて、今多くのお寺がオンラインでの法事の配信などさまざまな工夫をされています。そこで、なし崩し的に形が崩れていくお寺と、自ら変革していくお寺の差が新型コロナウイルス感染症終息後に顕著に表れてくるかもしれない、と感じています。
同時にこれからは、本当にお寺をやりたいと思う人がやっていくようになるんじゃないかと思います。これまではお寺の子どもは仕方なく継ぐ、みたいな意識もあったかもしれませんが、これからはそういう意識がどんどんなくなっていくのではないでしょうか。やる気がある人がやっている限り、悪い方向には行かないはずです。必ず良くなると思います。日本仏教の底力を見たい。ここで湧き上がってくるものに興味を抱いています。
 
――日本仏教の底力。それを見せるためにまず今、お寺ができることは何でしょうか?
 
:今までのお寺は基本的にメンバーシップ制度でした。法要などは、ご門徒というメンバーだけで行う活動が中心だったんです。
しかしこれからは、外にもオープンに発信していく作業が必要になるでしょう。僕自身、オープンな場をお寺とは別に作ろうと考えて「練心庵」(外部サイトへ移動)を作りました。
 
そこでは地域の若者に手伝ってもらいながら、宗教学講座をやったりしています。発達障がい者や精神障がい者の居場所づくりもやっていますよ。
街にそういう場があると豊かになります。いろんなコミュニティがその場を起点として立ち上がってくると、そこで暮らしていこうという気になるんじゃないかと思います。
昔の地域コミュニティは地縁・血縁のみだったため排他的な面があります。新しくできる中間共同体は、フェアアンドシェアのような場所づくりで、これは中間共同体がすごく枯れた社会において、すごく有効なのではないかと思います。
 
――今後、葬儀はどう変わっていくと思われますか?
 
:もはや葬式仏教ですら死にかけている、そういう事態になってきています。
僧侶を呼ばずに火葬のみという、いわゆる「直葬」のケースは増えていくのではないかと思います。葬儀のお布施も金額が下がっていくのではないでしょうか。葬儀の費用自体が下がってきているので、お布施だけが今まで通り維持されるとは考えにくいですよね。
 
でも、それはそれでいいと思うんですよ。そうすることによってお金の負担が少し軽くなり、僧侶に来てもらいやすい環境となるかもしれないので。また、葬儀はしたとしても時間は短縮傾向にもなっていくと思います。「一日葬」が増えていくのではないでしょうか。
一方で、死者儀礼は人間にとってすごく重要なことですから、真剣に考えたいですよね。なんとなく習慣に頼ってきた面がありますから、我々にとっての死者儀礼の重要性を改めてきちんと考えていかないといけない時期に来ています。加えて、普段から地域の方としっかりとお付き合いをして、葬儀のときにはお寺に相談しよう、一緒に考え悩むならこの人だと、そう思っていただける関係性が我々僧侶には求められていると思いますね。
 
――釈さん、ありがとうございました。
 
 

(釈徹宗さんが理事長を務められるグループホーム)
 
 

<編集後記>

 
「宗教的原風景」や「宗教の道具化」など、釈さんならではの言葉が要所に見られた今回のインタビュー。「浄土真宗は今、一番ウケないタイプの宗教かもしれません」というような厳しい意見もありながら、「日本仏教の底力を見たい」という活力漲るコメントもいただきました。
誰しも時代の変化とともに生きづらさを抱える現代。
僧侶ができることは何か。今一度考えてみるときなのかもしれません。
 
 
 

プロフィール

 

 

釈徹宗(しゃく・てっしゅう)さん
浄土真宗如来寺住職・宗教学者・相愛大学教授
 
1961年、大阪生まれ、龍谷大学大学院博士課程、大阪府立大学大学院博士課程修了。学術博士。浄土真宗本願寺派 如来寺第19世住職、相愛大学人文学部教授。NPO法人リライフ代表として、認知症高齢者のためのグループホーム『むつみ庵』、ケアプランセンターも運営する。落語が大好きで、お寺で寄席を開くことも。『いきなりはじめる仏教生活(バジリコ)』『仏教ではこう考える(学研新書)』『いきなりはじめる浄土真宗–インターネット持仏堂1』『はじめたばかりの浄土真宗–インターネット持仏堂2』(内田樹氏との共著、本願寺出版社)など、著書多数。(虚空山彼岸寺「仏教人」HPより)
   

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掲載日: 2021.12.10

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