摂食障がい、自律神経失調症を経て、栄養の大切さを伝える僧侶|原田慈縁さんインタビュー<前編>
摂食障がい、自律神経失調症を経て、栄養の大切さを伝える僧侶|原田慈縁さんインタビュー<前編>
(写真提供:原田さん)
私たちはいのちを食さなければ、生きていけません。
いただくいのちに感謝を込めて、私たちは「いただきます」「ごちそうさま」と言いますよね。
そんな私たちがいただくいのちには、さまざまな栄養が含まれています。
今回のインタビューは、浄土真宗本願寺派の僧侶であり、管理栄養士、また一般社団法人日本スポーツ栄養コンディショニング協会代表理事もつとめられる原田 慈縁(はらだ・じえん)さん。前編では、原田さんのこれまでの人生、また僧侶としての原田さんにスポットを当ててお話をうかがいます。
(写真提供:原田さん)
人を治療するものは医療だけじゃない
――原田さん、本日はよろしくお願いします。
まず、簡単に自己紹介をお願いします。
原田慈縁さん(以下:原田):私は神奈川県川崎市の浄土真宗本願寺派のお寺にうまれ、現在は鹿児島県にある父方の叔父のお寺に所属しています。
実は私、小学校のとき摂食障がいになり、学校にはほとんど行かなかったんです。
「こうじゃなきゃいけない」という自分へのプレッシャーが原因だったと思います。同時に「私はなんのために生きているんだろう」と悩みました。いまもこの悩みとは向き合っています。
このような状況だったこともあり、中学受験で第一志望の学校に落ちてしまいました。いま思い返してみると、その頃の私は学校にも行かないで家でゴロゴロしているだけだったので、周りからは病気を疑われるような中学生だったでしょうね。案の定、病院に行ったら自律神経失調症などいろんな病名をつけられ、薬もたくさん処方されました。
――プレッシャーに押しつぶされながらも頑張ってこられたのですね。病院に行ったことで、病状は回復されたのでしょうか?
原田:いえ、病院に行き始めて2年ほど経った頃でしょうか、身体が動かなくなっちゃったんです。医療を信じて通院し、薬も飲み続けてきたのに、自分の体調は逆に悪くなっていた。近代西洋医学でも治せない病気があると身をもって感じ、同時にそうした問題に興味を持ったんです。
その後、なんとか中学校を卒業し、通う病院も変えたことで体調は少しずつ良くなったのですが、結局高校に通うほどの体力には戻りませんでした。ただ勉強自体はもう少し続けてみたかったので、大学入学資格検定を受け、18歳の時に身体や食、栄養などについて通信制で学べる日本女子大学家政学部通信教育に入学しました。卒業後、管理栄養士(*1)を志し、女子栄養大学短期大学部キャリアコースに入学しました。
―― 一般的な医療では治せない苦しみを持つ方もいる。その思いが原田さんの学びのモチベーションに繋がったのですね。現在体調は回復されたのでしょうか?
原田:はい。いま思えば、心身がボロボロになった経験があるからこそ、話せることがあると思っています。体調が崩れるときはあっという間で、立て直すには崩れるときの倍以上の時間や力が必要になることを知っているので、講演などで栄養学のお話をさせていただくときには、そのことを強く伝えるようにしています。また「食べたもので身体はできている」という話と、「食はいのちと深くつながっている」ということをお話しするようにしています。