「Twitterの非売品僧侶」誕生秘話|僧職図鑑22ー松﨑 智海<後編>

僧職図鑑22、福岡県永明寺 松﨑智海住職へのインタビュー。後編では、Twitterを始めとするSNSのご活用についてお話しいただきました。
いまではTwitterフォロワー約2.5万人を誇る松﨑住職。それだけ多くの人に「永明寺」と「松﨑智海住職」という存在を知ってもらうまでには、どういったきっかけがあり、どういったご苦労が隠されているのでしょうか?
 
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「授業のためにパズドラもやってました」宗教科の先生というお仕事|僧職図鑑22ー松﨑 智海<前編>
 
広告を出したいけど、お金がない。そんな中で見出されたSNS活用。
 

 
ーー松﨑さんと言えばやっぱりSNSですよね。特にTwitterは大人気のようですが、どういうきっかけでSNSを始められたのでしょうか?
 
松﨑 智海さん(以下:松﨑):僕がSNSを始めたきっかけは、お寺の情報発信を考えた時に、やはり広報が非常に大事だと思っていたからです。
なぜかといいますと、僕は学校の教員をやっていた時、学校の営業や広報をする業務も任されていました。私立高校では学校の教員が営業や広報をするんですが、とにかくお金がなかった。なので、自分たちでチラシやパンフレットといった広報活動のツールを作っていました。そこで、広報の経験を積んだんです。
 
その後、学校からお寺に戻って、真っ先に痛感したのがお寺の発信力のなさでした。そもそも、ここにお寺があることを誰も知らない状況ではどうしようもありませんので、まずは広報をしてとにかくお寺の情報発信をしていこうと。
 
ーーそれで、SNSを始められたのですね。しかし、広報の手段であれば、他の手段もあったかとは思いますが、なぜSNSだったのでしょうか?
 
松﨑:確かに、お寺によく参拝をしてくださる高齢者の世代にへ届けるためのツールとしては新聞広告かテレビが一番効果的です。高齢者世代は新聞もテレビも見られますからね。ただ、この2つを活用するにはお金がかかるんです。
例えばニュース番組は、「こういうことがありましたよ」という事後報告は無料でも、「こういうことがありますよ」という事前告知にはお金を出さないといけない仕組みなんです。
広告費も決して安いわけではなく、テレビCMでしたらウン千万はザラです。新聞広告でも10万円は覚悟しなければいけません。
もしお寺に潤沢なお金があって、かつ広告料に対して、周囲の理解があればCMや広告を出していたと思います。しかし、広告の効果は分かりにくいものです。理解していただくのが難しいんですよね。ならば、お金のかからない方法で自ら発信しようと、SNSのアカウントを立ち上げたのがきっかけです。
 
「バズるっておっかないんです」SNS活用の苦労とは
 
Twitterで初めてバズったという「シン・オテラ」。2016年当時大流行した映画「シン・ゴジラ」のパロディ。
 
ーーSNSを始められた時のご苦労はありましたか?
 
松﨑:最初はとにかく怖かったです。Twitterは2016年の3月に始めて、最初の2〜3か月でバズった(瞬間的に話題になった)んですよね。ただ、その時はまだSNSやTwitterの仕組みも知らない頃だったので、ただただおっかないという気持ちでした。何といいますか、自分の知らない人がみんな自分を見てるんじゃないかって。
 
あとはやっぱり、炎上したらどうしようという不安は常にありましたね。アカウントを立ち上げた頃は、いろんな方がフォローをしてくださるんですよ。なので、当然その中に「アンチ」、つまり敵対的な人もいらっしゃるわけです。今でこそ、僕のフォロワーさんは僕に対して好意的な方が多いですが、当初はそうした「アンチ」の方々への対応に苦労といいますか、気を揉みましたね。
 
ーーやっぱり、そういう方はいらっしゃるのですね……。松﨑さんはどういった対応をされたのでしょうか?
 
松﨑:自分の中でルールを作りました。僕の場合、否定的なコメントに対しても、一度は対応すると決めています。
その内容も「不快な思いをさせて申し訳ございません、今後は気をつけます」と、あくまでも不快な思いをさせたことに対して謝罪はしますが、自身の発言に関しては、よっぽどのことがない限りは修正や撤回はしないようにしています。
 
ーーあくまでも、発言内容は変えないことがポイントなのでしょうか。
 
松﨑:そうですね。そうやって続けていくことで、フォロワーさんが選ばれていくんです。僕のことを嫌いな人たちは、たいていフォローした直後に言いたいことだけを言って、去っていきます。そういう人がだんだん去っていって、結果的に僕に対して好意的な人が残ったということです。
ただ、その状態になるまでにある程度時間はかかります。なので、発言内容を見ない、気にしないのも大切ですね。特に、私はヤフーコメントは見ないようにしています(笑)
 
あくまでも私たちの目的は仏法を伝えること。SNSはその手段の一つ。
 

ーーSNSを行う意義はなんだと思いますか?
 
松﨑:SNSは注目を集めるツールだと思っています。これは学校の先生がよく使うテクニックなのですが、学校のチャイムが鳴って、教室に入ってすぐには授業を始めないんですよね。まずは生徒たちの注目を集めて、話を聞く体制にさせてから授業を始めるんです。
例えば、先生が机をポンポンと叩いたり、「おーい」と大声を出したりすることがありますよね。言ってみれば、僕がSNSでちょっと派手な感じで振る舞っているのはそういう行為なんです。
 
ーー確かに、ちょっと踏み込んだ情報発信をするとみんな注目しますよね。ただ、やっぱりその先、つまりは仏教を伝えることが大事だと思うのですが、そこについてはどうお考えでしょうか?
 
松﨑:確かに、仏教を伝えることは大切な目的ですね。ただ、注目してもらった後にずっとお念仏や信心のお話をしていても、みんな飽きちゃうと思うんです。なので、いつもは面白い話や興味を持ってもらえそうな話をしつつ、時々大事な話も混ぜていくのがポイントなんじゃないかと。
だから、僕のツイートを見ていただければ気づくと思うのですが、全体の8割から9割は、言ってしまえばつまらない話、どうでもいい話なんです。家族の話とか、日常の話とか。
その中で、たまに仏典の話や戦争や平和の話を混ぜています。
あくまでも、私たちが伝える内容はお念仏のお話であることに変わりません。ただ、その方法は工夫できるんじゃないかと思っています。
 
ーー最後に、松﨑さんの今後の展望をお願いします。
 
松﨑:SNSの事情も最近はちょっとずつ変化しているのではないかと思っています。宗派を問わず、多くの寺院や僧侶がSNSを活用するようになってきました。
そんな中で、本当に魅力的な寺院や僧侶だと思ってもらえるような情報発信をしていかなければならないと思っています。
特に、今はYouTubeやTiktokといった、動画を活用した情報発信が盛んになってきました。先日はYouTubeで法要の配信を試みました。他にも17(イチナナ)というライブ配信アプリを活用した法話の配信など、たくさんの可能性を感じています。
今後は文字だけで発信することにとどまらず、多様な媒体で発信することが求められてくるかもしれませんね。
 

<編集後記>

 
インタビューの後、改めて松﨑住職のTwitter(@matsuzakichikai)を覗いてみると、ご家族に叱られた話、大人気アニメ「鬼滅の刃」の話など、確かに一見お寺や仏教とは何の関係もない話が広がっていました。
しかしこうした話題も、決して遊びや思いつきだけで発信しているわけではないことがわかりました。インタビュー前編では、「生徒のためにパズドラもやっていました」と話していた松﨑住職。宗教科の教員としての経験、そして私立高校の広報業務担当としての経験が、確かに活かされているのではないでしょうか。
 

松﨑 智海さん:福岡県北九州市 永明寺住職。1975年生まれ。2000年より北海道 札幌龍谷学園高等学校教員、2005年より福岡県 敬愛高等学校教員。2014年より現職。著書『だれでもわかるゆる仏教入門』(ナツメ社)(2021年1月15日発売予定)

 
記事作成:他力本願.net
掲載日: 2020.12.10