人に向き合うための「トライ&エラー」|雪山俊隆さんインタビュー<後編>

サムネイル写真(写真提供:雪山さん)

 
「ゆくゆくは会う人すべてに心から向き合えるような人間になりたいな、と」
 
浄土真宗本願寺派の儀礼の専門学校、勤式指導所での生活で心に整理をつけ、もういちど「生まれ育ったお寺の住職」という生き方に向き合った雪山俊隆(ゆきやま・としたか)さん。
後半となる本記事では、「当たり前のことをひとつずつ積み上げる」生活の中で出会った多くのご縁や、気付きについてお話を伺いました。
 

 

(写真提供:雪山さん)

 

さまざまなご縁が芽を出し始める

 
――雪山さんは、飛び出したお寺に戻られてから、どのような活動を始められたのでしょうか?
 
雪山俊隆さん(以下 雪山):お寺に戻って、当たり前の事をひとつずつ積み上げるような生活をするようになって、2~3年くらいかな。「お寺で落語会」という催しがいったん終了しまして、自分でもなにかできたら良いな、と自然に思えたんですね。お寺に来てくれる若い世代の人となにかできるかな、と。
 
当事者である彼らと話していたときに、落語が好きな人はあまりいなくて、共通項としては「音楽」がありました。それで2006年から「お寺座LIVE」という音楽イベントを企画したんです。お寺にはお経や声明もあるし、音楽とは相性が良いだろうと思って。手伝ってくれる人も多くて、自分の中ではあまり無理がないイベントだったんです。
 
――なるほど。来てくれる人を中心にした催しだったんですね。
 
雪山:そうですね。あとは「メリシャカ」でしょうか。これはインターネット上の、ブログ活動を中心とした若い僧侶コミュニティなんですが。2006年当時はインターネットで発信している若い僧侶は限られていて、なんだかんだで連絡を取り合っていました。ブログをやっている人も何人かいたので、そうした人たちを集めてなにかやろうと思って出来たのが「メリシャカ」でした。そういったご縁が2005~6年あたりにぽつぽつと、自然に結ばれていきましたね。
 
――2006年というと雪山さんがニフティ(株)の主催する『PODCASTING AWARD 2006』で審査員特別賞を受けられた年ですよね?
 
雪山:それもありましたね。当時はApple社が「PodCast」というネットラジオのアプリを日本に初上陸させた時だったんです。そのときちょうど先代がのこしてくれた法話集朗読の音源があって、それを整理してインターネットに出してみようかな、と考えていた時期だったので。
 
わりと軽いノリでやったんですが、結果的に当時の仏教界では誰よりも早かったんです。手元にあるものの中で、たまたま出来たことなんですよ。本当に、タイミングの話でした。今はもう音声でも、映像でも、デジタルコンテンツがあふれかえっていますから。
 

ルーティンワークを抜け出して

 
――雪山さんは、日々のお寺のお勤めの中では、どんな瞬間がお好きですか?
 
雪山:やっぱり新しい発見が好きなんですよね。ふとしたきっかけで、全く知らないエピソードに出会ったりしますよね。もう20年近くお参りしているお宅でも、そういうことが起きるのが楽しいです。
 
あとは、人との出会いかな。親鸞聖人の七百五十回忌記念事業として本堂の天井の張り替えをしたんですが、これが意図せずネットなどのメディアで広まりまして。観光にいらっしゃる人が現れました。そうした、全くご縁のなかったかたとお話しするのは、やはり新鮮な楽しさがあります。とにかくリアクションが良くて。
 
――リアクションが良いのはやっぱりうれしいですよね。逆に、これは課題だな、と思われるようなことはどんなことでしょう。
 
雪山:善巧寺では月に2回ほど「お講」、つまり門信徒のかたを中心とした集まりがあったんですが、これを「ほっこり法座」としてリニューアルしたんですね。
 
そこであらためて学んだのは、どうしてもお寺には「繰り返し」の行事が多いので、ルーティンワークに偏ってしまう。来てくださった人たちにしっかりと向き合えていないな、ということでした。
 
――どうしても、「日々の法務」に流されてしまって、来てくださる方に向き合えていない、ということでしょうか。
 
雪山:ええ。リニューアルを機に、人に来てもらう工夫や、どう満足してもらうかといったことをあらためて意識するようになったんです。そうした情報をとにかくパソコンに入れてデータ化していきました。でも、実はこれ「お寺座LIVE」の時にはしていたことなんです。これを「ほっこり法座」でも始めるようになってあらためて、どういう人たちがどんな気持ちでお寺に来てくれているのか、を考えるようになりました。
 
――なるほど。「自分のやること」、ではなく「来てくださる人」に注目されるようになったんですね。
 
雪山:来てくれる人に満足してもらうために、試行錯誤を重ねるんですが、これは報恩講などの、年に1回しかしないような行事では難しいんです。ですが、毎月の行事ならば、来てくださる人の状況を把握することも難しくありませんし、なにか失敗をしても半月後には改善が出来ます。意識的にそうしたサイクルを回すことが出来るんですよね。
 
自分の中では、そういった「ルーティンワークだったもの」を、「来てくれた人に向かい合うもの」にしようとしています。そこが、今楽しいです。
 

   

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掲載日: 2022.01.21