当たり前を疑うために英語を学ぶ|大來尚順さんインタビュー<後編>
写真提供:大來さん
――確かに、仏教用語に限らずですが、私たちが普段生活をする中で、言葉の由来や歴史を考えることは少ないですよね。当たり前を疑うことで、言葉を丁寧に、より正確に使えるようになるのかもしれません。
大來:使い慣れた日本語とは別の言語を通して言葉の背景を理解すると、仏教用語も自分の言葉で説明しやすくなりますね。当たり前を疑うことで、言葉への理解がますます深まっていく。そうした多言語、また多文化を通じて自分を見直すことにつながったように思います。
門信徒の方を大切に出来る寺院を目指して
――今後のご活動におけるご展望はありますか?
大來:一番したいことは地域貢献です。これまでは、山口のお寺で話す機会がなかなか持てなかったので、これからお寺でしっかりと活動したいと思っていて。今もお寺でイベントを開催しています。今は感染症対策で人数制限していますが、需要はあります。そういった場で、アメリカや各地で学んだことを還元していきたいですね。
――前編では、さまざまな人が相談に来られるというお話もうかがいましたが、門信徒の方が気兼ねなく立ち寄れるお寺なんですね。大來さんの中で、お寺で活動する際のテーマはあるのでしょうか?
大來:一つはこれまで支えてくださった門信徒の方を大事にすること。これは葬儀や法事を丁寧に、大切にしていくことと同じです。もう一つは新しいご縁をいただく方も気に掛けること。新たにお寺に興味を持ってくださった方が自由に来られるような、そんなお寺の空間の使い方もしたいと思っています。
――これから行われるイベントにも注目ですね。大來さん、ありがとうございました。
写真提供:大來さん
さいごに
「使い慣れた日本語とは別の言語を通して言葉の背景を理解すると、仏教用語も自分の言葉で説明しやすくなる」
言葉の学びを続けられた大來さんですが、その姿からは、「伝える」ことに対するエネルギーをひしひしと感じました。
言葉を学ぶこと、伝えることの難しさに挑み続ける姿勢、伝わってほしいという願い……これらは僧侶の生き方のひとつとして非常に重要だと教えてくださったように思います。
大來さん、ありがとうございました。
プロフィール
浄土真宗本願寺派 大見山 超勝寺 住職
著述家 翻訳家
1982年、山口市生まれ。龍谷大学卒業後に単身渡米。カリフォルニア州バークレーのGraduate Theological Union/米国仏教大学院に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。僧侶として以外にも通訳や仏教関係の書物の翻訳なども手掛け、執筆・講演などの活動の場を幅広く持つ。2019年龍谷大学奨励賞を受賞。
著書に『超カンタン英語で仏教がよくわかる』(扶桑社)、『カンタン英語で浄土真宗入門』(法蔵館)、『訳せない日本語 日本人の言葉と心』(アルファポリス)、『楽に生きる』(アルファポリス)、『端楽』(アルファポリス)、『つながる仏教』(ポプラ社)など多数。