絵本で広がる正信偈の世界│浅野執持さんインタビュー<後編>

 

絵が物語る正信偈

 

画像提供:浅野さん

 
――浅野さんは『絵ものがたり正信偈』を執筆されましたが、絵本を通して仏教を伝えようと思われたきっかけは何ですか?
 
浅野:美術館で学芸員をしていた時代から、絵には言葉では伝わらないものを伝える力があると感じていたことが理由の一つです。
 
絵に惹きつけられる人って多いんですよね。絵画には興味のない方も、実は漫画や絵本、雑誌の中の挿絵などで身近に親しんでいることは多いです。そういった絵の力を頼って、み教えを伝えていく方法があるんじゃないかなという風に思ったのがきっかけです。
 
――たしかに絵には、言語化できない感覚に意識を触れさせていくような力がありますよね。
 
浅野:仏さまのはたらきを絵にするとイメージを固定化してしまう恐れもあるからか、実は浄土真宗のみ教えそのものを絵で表現したものは少ないように思います。見る人によって教えの解釈が変わらないために文章として残っているとすれば、文章と絵は、理屈と感覚のように相反するものかもしれませんね。ですが、これが合わさることが、伝道の推進力になると思ったんです。
 
――抽象的になりすぎず、でも断定しすぎず……となると、絵本は一つの新しい可能性なのかもしれませんね。
『絵ものがたり正信偈』では、文章は浅野さんがご執筆されているとのことですが、イラスト担当の方には、文章に合わせたイメージを指示されていたのでしょうか?

 
浅野:先に出した『絵ものがたり正信偈―ひかりになった、王子さま』では、ウェブデザイナーの方にイラストをご担当いただきました。
 
▼詳しくはこちら
『絵ものがたり正信偈―ひかりになった、王子さま』
 
当時、インターネット寺院「彼岸寺」のサイトデザインとイラストをご担当されていた市角壮玄(いちずみ・しょうげん)さんという方です。私がラフも描きながら世界観を伝えて依頼したんですが、ああでもない、こうでもないと、正信偈の中の法蔵菩薩の物語を崩すことがないように市角さんとふたりで決めていったんです。市角さんの絵は、光の表現など見事、こちらのお伝えしたイメージを具現化してくれました。
 
ですが、その続きにあたる『絵ものがたり 正信偈』は、お釈迦さまから続く七人の高僧の功績をたたえる教義的な部分で、前半の法蔵菩薩の物語よりも理論的・説明的になります。そこで絵を描かれる僧侶にお願いして、ある程度表現をおまかせしようと考えました。言葉の表現よりも、絵としての表現を大切にしよう、と。できあがってきたイラストは、こちらの想像を超える表現をしてくださいましたね。
 
―― 一冊の本にする上で工夫されたことはありますか?
 
浅野:絵を見てから文章の表現を変えたりもしました。原文があるので大きくは変えられないですが、それでもニュアンスを変えたところは何か所かあります。また、絵の配置の関係上、文章を入れられる場所は限られますので、思い切って文章の位置を移動させるような調整もしました。
 

画像提供:浅野さん

 
この絵を描かれたのは藤井智子(ふじい・さとこ)さんという方です。
これは正信偈の中の「憶念弥陀仏本願 自然即時入必定」というところをあらわすシーンなんですが、最初は「仏さまのねがいを受け入れることができたなら」という文章を作っていたんです。でも、できあがってきたこの絵からは、光が満ち満ちていくような印象を受けたんですね。そのため、私が受け取るというよりは、ねがいのほうが私に満ち満ちる、といった、阿弥陀さまのはたらきを中心としたほうがよりふさわしいかと考え、最終的には「仏さまのねがいがあなたの心に満ち満ちる、そのとき」という表現となりました。
 
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『絵ものがたり 正信偈』
 
 

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掲載日: 2022.03.08

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