バンドマン人生を「完成」させた僧侶のおはなし|百濟高昌さんインタビュー<前編>

百濟高昌さん(写真提供:百濟さん)

 
ギターを握り夕陽を見つめるこの方。
今は山口県下関市豊北町の善照寺で住職をされていますが、かつてロックバンドでギターボーカルをされていたそうです。
 
今回インタビューさせていただいたのは、百濟高昌(くだら・こうしょう)さん。前編では、百濟さんが僧侶になるまでいったいどんな人生を歩まれたのか、バンドマン時代を振り返っていただきました。
 
 

恩師から受け取ったミックステープ・ラジオから流れた音楽に救われ音楽活動に苦しんだ

 
――まずは簡単な自己紹介からお願いします。
 
百濟高昌さん(以下 百濟):善照寺の住職をしています。先代の父は龍谷大学で教員をしており、単身赴任で家を空けがちでした。
幼少期は母と姉、そして祖父母と生活してきたようなものですね。朝夕本堂にお参りをしなければ、ご飯を食べさせてもらえないという家庭でしたが、長男ながら、やりたいことは自由にさせてもらえたように思います。
お寺のある山口県下関市の豊北町は、本州の中でほぼ一番西にある町で、いわゆる超のつく田舎ですが、浄土真宗のご法義が根付いた地域です。
 
――百濟さんの人生を詳しく聞かせてください。
 
百濟:中学生の頃から音楽や放送関係に興味がありました。
というのも、ほとんど娯楽がない地元では、ラジオで音楽を聞くことが唯一の楽しみだったんです。よく聞いていたアーティストは、Green DayやThe Offspring、RANCID、NOFX……いわゆるパンクロックリバイバルが全盛の時期だったんです。中学校のときの美術の先生が元バンドマンで、音楽好きな生徒にミックステープを作ってくれていて、その中にそういったアーティストの曲が入っていたんですよ。
僕たちの世代にはよくあった事だと思いますが、Green Dayの「Basket Case」という曲を聴いたときから音楽に目覚めましたね。音楽に救われて、同時にのめりこんでいったというか。
 
だんだんと聴くだけでは満足できなくなり、同じように音楽への熱を発散しきれないような友人たちとロックバンドを組みました。地元の公民館でバンド練習をしてオリジナル曲を作り、地元から2時間くらいかけて、下関市内や福岡県などにライブ活動をしに行くこともよくありましたね。
 
そして進路を考えたとき、「音楽で誰かを勇気づけたい、自分と同じように音楽に救われる人を増やしたい」と思ったんです。ずっとラジオを聞いていたこともあって、ラジオパーソナリティーなどの放送業界に進んでみたいと思い、大阪芸術大学の放送学科に行くことにしました。大阪での生活は刺激的でした。大学で新たに始めたバンド活動のほうも忙しくなりましたね。
 
――僧侶になられたのはいつ頃のことでしょうか。
 
百濟:20歳のときですね。父から在学中に得度だけはしておくようにと言われていたんです。僕が23歳のときに父が亡くなり、それからお寺は母と法務員さんが代務をしていました。母は「私が10年は頑張るから社会を経験しなさい」と言ってくれて、その言葉に甘えました。
 
――その10年間は主に何をされていたのでしょうか?
 
百濟:大学では放送を学ぶと同時に音響の技術を習得して、在学中から舞台やさまざまな現場の「音響の仕事」、いわゆるPA(*1)のエンジニアをしていました。卒業後はしばらくPAの会社に勤めながらバンド活動をしていましたが、25歳のときからは株式会社TKPという会社で働き始めました。その会社は貸し会議室などを運営していたんですが、会議室を貸すとなれば音響が必要不可欠になってきます。
そこで、「僕、音響関係の技術があります」と自分を売り込んでいったんです。それが功を奏して、音響の技術を活かした仕事ができました。もちろん就職した後もバンド活動を続けていたんですが、ライブやツアーがあるときは休むことを許してくれるような、今考えればとてもありがたい仕事環境でしたね。
今でも繋がりのある仕事仲間もできましたし、妻(今の坊守)にも出あえました。
 

サラリーマン時代の百濟さん(写真提供:百濟さん)

 

(*1)PA:音楽の音質および音量を調節し、スピーカーから聴衆に向けて伝達する役割。
(参考:ヤマハ

 
百濟:ですが、それでも一番優先していたのはお寺の法座でした。
母から、特に大切な法座のときだけは頼むから帰って来てくれと言われていまして。また、それが10年間自由に生活する条件のようなものだったんです。
 
 

バンド活動を続けていくか、お寺に戻るか

   

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掲載日: 2022.03.17