お寺生まれの音楽少年が、浄土真宗の僧侶になる旅路|五藤広海さんインタビュー<前編>
愛犬との別離と、中央仏教学院での生活
――五藤さんはなにをきっかけに僧侶を志されたのでしょうか。
五藤:あまり決定的なものはありませんでしたね。ただ、お寺に戻る直前の冬あたりにペロという名前の愛犬を亡くしたんですよ。父がお経をあげてくれたんですが、そこで急にそのお経になにが説かれているのかが気になって、父に尋ねたんですね。「ペロは、お浄土にいけるって説かれてるの?」って。父は言いよどんで、だいぶ考えたあとに「動物がお浄土に行けるかどうかは、よく分からない」と答えたんですよ。
僕はその疑問を抱えたまま、浄土真宗本願寺派の僧侶を育成する専門学校、中央仏教学院の門を叩きました。仏教の勉強をして、そこで僕の飼っていた犬のペロが「救われていない」とか「救いようがないものだ」と説かれていたなら、僧侶になるのはやめようとまで思っていました。
――中央仏教学院ではその答えに出会えたのでしょうか。
五藤:中央仏教学院の寮に入ってすぐに、仏教の話をする実習の当番にあたったんですが、そこで「ペロがお浄土に行っていないなら、僕は僧侶になるのをやめます」って寮監相手にスゴんでしまいまして。そんな僕相手に、寮監は「五藤君をここに連れてきてくださったその犬は仏さまだったのかもしれんな」といってくれたんです。
その答え自体に関して、僕は全く納得がいかなかったんですけれど、でも同時にこの人はちゃんと向き合って受け止めてくれたんだな、ということは分かったんですよ。この体験があったから、僕は中央仏教学院にちゃんと通えたんだと思います。
岐阜県可児市 光蓮寺(画像提供:五藤さん)
――中央仏教学院での生活はいかがでしたか。
五藤:はじめてちゃんと「友だち」と言える関係の人ができて、楽しかったですね。みんなで「わからない」や「理解できない」といった感情を共有できたからなのかも知れません。ただ、そうした友だちの「信仰の姿」にであって、とても大きな影響を受けました。