住職はチェロの演奏家|秋津智承さんインタビュー<前編>

 
――ボストンへの留学を決められたのはなぜですか?
 
秋津:大学2年生のとき、より腕を磨きたいと思うようになったんです。ただ、自分の演奏を高いレベルにしていけばいくほど、いわゆるスランプ状態になりまして、チェロで何を表現したいのか、またそこに自分の音楽がないことに気が付きました。
ちょうどその頃、後に師になるレッサー先生がボストンから来られて、演奏と指導をしてくださったんです。そのとき私のチェロの演奏を聴かれた先生が、「僕で良かったら教えてあげるから、ボストンに来ませんか?」と言ってくださいました。
 
留学先では、僕の演奏を聴いていた仲間が、「彼はあんなに上手いのに弾き終わったあと何故浮かない表情なのか?」と不思議がっていたことがありました。反対に、仲間の演奏は技術面は拙くても、自分の音楽を精一杯表現している姿に心を打たれました。そして、2年かかってようやく、「これが僕の音楽です!」と胸を張って言える演奏ができるようになりました。
 

留学先での恩師(写真右)と秋津さん(写真左)(写真提供:秋津さん)

 
――秋津さんが納得される音楽が奏でられたのですね。そこからはどのようなご活動をされたのでしょうか?
 
秋津:実はボストンから日本に帰国する前に「第7回チャイコフスキー国際コンクール」を受けたんです。しかし1次予選は通過したものの2次予選で失敗があり、その先に進むことができませんでした。自身の音楽が見つかったということもあり、一旦ボストンでの武者修行を終え日本に戻って改めて自身の音楽を追求することにしました。
その後私が28歳のとき、第8回チャイコフスキー国際コンクールが開催されることとなりました。このコンクールは4年に一度の開催で、また年齢制限の都合で30歳を超えると受けにくくなってくるので、私にとって最後のコンクールになると覚悟しました。猛練習して、コンサートなどで場数を踏みながらコンクールに向けてかなり綿密に準備をしましたね。その甲斐あってか1次2次予選を順調に突破し、本選の演奏も我ながら上出来だと思ったのですが、結果は7位入賞。しかし私としては満足でした。
そこから先も定期的にリサイタルを開き、オーケストラの首席奏者にも身を置きながら、チェロの演奏を続けています。
 
 

   

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掲載日: 2022.04.12

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