住職はチェロの演奏家|秋津智承さんインタビュー<前編>

 
――では、僧侶になられたのはいつ頃ですか?
 
秋津:留学から帰って来て程なくして、僧侶の勉強をするために龍谷大学に通いました。
それまで僧侶としての勉強はしたことがほとんどありませんでしたが、父や祖父もまだ元気で時間もあったので、自分のペースで仏教の勉強ができましたね。そうして僧侶の資格、次いで住職の資格を数年間かけてとらせていただきました。
そんな生活を送りながら、だんだん僧侶とチェリストをどう両立していくのかを真剣に考えるようになりましたね。
 
――両立しようとしたとき、ご苦労はありませんでしたか?
 
秋津:ありました。特に僧侶になりたての頃は、自分は僧侶ではなくチェリストだという感覚のほうが強かったんです。
私はチェリストとしてはそれなりの評価をいただいていましたが、僧侶としては本当に自信がなかったんですよね。
しかしありがたいことに、先輩僧侶に私の音楽活動を評価してくださる方がいたんですよ。弾きに来てほしいとお声がけいただくこともあり、お寺で演奏する機会もありました。それからしばらくすると、チェロを弾くお坊さんがいるという噂がだんだん広まっていきました。
ただ、ご門徒さんにはチェロはあくまでも趣味だと思われていたんです。私としてはチェロは趣味ではなく、一つの生き方だと思っていたんですけどね。だから、ご門徒の皆さんにどうすれば「私にとって音楽は強みなんだ」と認識していただけるのかと悩みました。そして、お寺でコンサートをするようになったんです。
 
――それは素敵ですね。どのようなコンサートでしょうか。
 
秋津:大晦日にお寺で「ゆく年くる年コンサート」というものを始めました。私のチェロの弟子に声をかけたら集まってくれて。チェロが十数本集まると、小さいオーケストラのような雰囲気になりました。チェロという楽器は一つでも演奏できますが、いくつか集まるとこんなに素晴らしいんだ、これは願船坊というお寺でしかできないイベントなんだという気持ちで開催を続けました。そうすることで、ご門徒の方にもだんだんと認知されるようになってきましたね。
 
 

 

   

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掲載日: 2022.04.12

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