朗読劇を通して仏教の心を伝える。|「チームいちばん星」久保田 夕子さんインタビュー
映像や照明、そして音響を駆使しながら、丁寧な語り口でストーリーを披露する、朗読劇。
そんな朗読劇を通して、仏教を伝える活動をされている方がいらっしゃるのをご存知ですか?
このたび、朗読劇「チームいちばん星」代表、北海道真光寺の久保田夕子(くぼた・ゆうこ)さんにインタビューしました。朗読劇とは?「チームいちばん星」とは?その活動内容は?
朗読劇に関するあれこれをお尋ねします。
朗読劇「チームいちばん星」とは?
久保田 夕子さん(画像提供:久保田さん)
――今日はよろしくお願いします。はじめに、自己紹介をお願いします
久保田 夕子さん(以下:久保田):久保田夕子と申します。北海道むかわ町にある、真光寺(しんこうじ)の坊守を務めており、私自身も僧籍を持っております。小樽の出身で、かつてはラジオパーソナリティやディナーショーの司会を務めていました。ご縁があり、1999年に結婚し、入寺しました。現在は、朗読劇「チームいちばん星」の代表としても活動しています。
(画像提供:久保田さん)
――「チームいちばん星」とはどういったご活動でしょうか?
久保田:「チームいちばん星」とは、主に北海道内の僧侶や坊守で結成された、朗読パフォーマンスチームです。2022年現在、12人のメンバーが在籍しています。朗読に照明と映像と歌を織り交ぜ、「いのち」をテーマにした作品を作り続けてきました。2005年より北海道内の寺院や中学校を始め、全国各地で上演をさせていただいております。
――どういったきっかけで、ご活動を始められたのでしょうか?
久保田:本堂の空間が醸し出す魅力に気づいたのが最初のきっかけです。今でこそ、お寺の空間を活用したライブやイベントは盛んに行われていますが、当時は、本堂を活用したライブ活動はあまりなかったと思います。
せっかく素晴らしい空間があるのに、活用しないのはもったいないなと。また、仏教の教えを頭で分かっていただくことは大切ですが、それと同じくらい心で味わっていただく重要性もあると思っていました。
私が以前仕事で携わっていたディナーショーは、音響と照明が絶妙に組み合わさっていて、心が動かされやすい空間が仕上がっていたんです。
実際、観客の表情がショーの前と終わった後ではまるで違いました。そうした様子を目の当たりにして、空間や演出が持つ力に気づいたんです。
――入寺される前のご経験がヒントになったということですね。
久保田:これかもと思いましたね。音と照明を使って、みんなが「良かった」となるようなもの、歌い手と客席とが一体となれるようなものって無いかなと探し始めたんです。
――朗読劇の題材はどういった物語を選ばれたのでしょうか?
久保田:最初は、「佐賀のがばいばあちゃん」でした。島田洋七さんによる小説で、困窮を極めながらも、明るく逞しく暮らす佐賀のおばあちゃんと、島田さんが共に過ごした8年間を描いたストーリーですね。何か良い題材はないかと探していたところ、たまたま友人に面白い本を紹介してもらいました。その本こそ、「佐賀のがばいばあちゃん」だったんです。このお話であれば、仏教要素はありますし、笑いも涙もあります。まさに朗読劇にぴったりではないかと思い、制作に取り掛かりました。
――「佐賀のがばいばあちゃん」以外にもお話はあるのでしょうか?
久保田:そうですね。現在は、10歳で脳腫瘍が発生し、学校にも車いすで通った少女が綴った、命の詩と絵の記録を通して、生きる希望を与えてくれる絵本「いのちのいろえんぴつ」を代表作としています。
他にも、北海道新聞の生活面や、本願寺新報のコラムに掲載されたお話を参考に制作した「くらしの詩(うた)をつづって」など、全8作品を用意しています。
――ご活動を通して、どういったことを伝えておられますか?
久保田:上演ごとに「幸せはここにある」、「豊かに生きる」といったテーマを設定するようにしています。他にも、戦争や震災をテーマにしたお話もありますね。
いずれの上演でも、実話をベースにしたストーリーを通して、仏教にご縁がない方でも「生きる意味」や「生きる力」といった仏教的な要素を伝えられるよう、心がけております。