「大丈夫だよ」と言える他人を目指して。|八幡真衣さんインタビュー<後編>
八幡真衣さんへのインタビュー。前編では、テンプル食堂の設立経緯を中心にお伺いしました。
後編となる今回は、近年取り組まれているご活動の様子をお伺いしたほか、地域子ども食堂の活動を行う意義についてもお話しいただきました。
シングルマザーの悩みから生まれた地域の子ども食堂|八幡真衣さんインタビュー<前編>
テンプル食堂は京都へ、熊本へ、そして沖縄へ。
テンプル食堂沖縄の様子(画像提供:八幡さん)
――最近のご活動の様子を教えて下さい。
八幡真衣さん(以下:八幡):2022年7月に一般社団法人「えんまん」を設立しました。食堂を続けているとだんだん講演の依頼が増え、地域の団体や教育委員会でお話する機会をいただきました。その中で、私の理念に賛同してくださる人も増えたんですよね。その後、テンプル食堂は京都、熊本、金沢、そして沖縄でも開かれるようになりました。現在は全国5か所で開かれています。
北陸地域でもテンプル食堂のほか、体操教室や親子料理教室、常設型の子ども食堂と活動が多岐にわたり、だんだん任意団体では限界が出てきたことや、より社会や利用者さんから信頼していただけると思い、法人を設立しました。現在は一般社団法人としての「テンプル食堂」があり、その中でさまざまな活動を展開しています。
――常設型の子ども食堂もされているのですね。
八幡:はい。やっぱり、イベントのような形では支援にも限界があると感じたんですよね。
というのも、悩み事ってなかなか初見の人に打ち明けられませんよね。
例えば、深刻な家庭の事情など、継続的に支援を続け、信頼関係が構築されて初めて分かることもあると思います。また、子どもたちにとっても月に1回だけの開催だと、その日の都合が悪かったら参加できませんよね。「いつでもきていいよ」と窓口を開けているからこそ、子どもたちも安心して参加できるのかもしれません。そうした理由から、継続的な支援が必要だと思い、常設型の子ども食堂を始めました。
――それはお寺でされているのでしょうか?
八幡:いえ、吉崎別院の近くにある空き家を無償でお借りしながら実施しています。
ちなみに、お借りした空き家は雨漏りがひどく、漏電も疑われるぐらいボロボロでした。家主さんにお許しをいただき、総額900万円かけてリフォームを行い、2022年3月にオープンしました。
リフォーム中の様子(画像提供:八幡さん)
リフォーム後の様子(画像提供:八幡さん)
――総額900万円!かなり大掛かりなリフォームですね。
八幡:そうですね。もう本当にボロボロで、外壁はもちろん、柱や基礎も取り替える必要がありました。高額でしたが、多くの支援があって実施できたリフォームなんです。例えば、外壁塗装は友人の会社の方に原価で行っていただき、ガス工事は普段からテンプル食堂に寄付してくださっているガス会社さんに無償でやっていただきました。
その他、クラウドファンディングで集まった約450万円もの支援金や、月額で寄付をしてくださった方からの資金もリフォームに充当させていただきました。
ちなみに、椅子やテーブルといった家具から、暖房器具や調理器具も、ほぼすべて寄贈していただきました。リフォームから家財に至るまで、ほとんどが寄付によって賄われています。
――すごいですね。そんなに沢山の家財道具をどうやって集めたんですか?
八幡:大手通信販売サイトのAmazonに「欲しい物リスト」という機能があって、そこに必要な商品、欲しい商品を登録しておくと有志の方が代わりに購入してくださり、商品が我々のところに届く仕組みがあり、それを活用しています。
――お布施の本来の姿に近いかもしれませんね。
八幡:そうですね。まとまった金額の支援は無理でも、洗剤や日用品といった小さいものなら支援できる方も多くいらっしゃることに気づきました。